Rosemary Clooney

BRAZIL



アメリカの良き時代、それは1950年代。今回紹介するのは、そんな 時代に大活躍した歌手で、今現在も素晴らしいアルバムを発表し続けてい るロージーこと、ローズマリー・クルーニーです。
彼女の事は少し年輩の方だったらもうご存じの事と思います。日本でも 江利チエミが歌って大ヒットした《家においでよ》を歌ったその人なので す。もう少し若いジャズ好きな方なら、ここ何年かのジャズフェスティバ ルで来日しているので、知っている方も多いと思います。
さて、紹介する前に少し彼女の事に触れておきましょう。彼女は192 9年生まれと言いますから、今年で72歳。40年代後半から妹のベティ ーと姉妹デュオで活躍、妹が引退してからはソロとして数々のヒット曲を 出して映画界にも進出しましたが、離婚がきっかけで精神的なストレスに 陥り、それが原因となって68年に一度芸能界から引退します。その後リ ハビリを続けて来た彼女は、親友のビング・クロスビー(ホワイト・クリ スマスという映画で共演し、同名の主題歌をデュエットしています)のシ ョーに誘われてから本格的にカムバック。以降、現在に至るまで、コンコ ード・レーベルに十数枚のアルバムを録音して活躍を続けています。

それでは紹介していきましょう。このアルバムはギタリストで歌手のジ ョン・ピッツァレッリとの共演という形で出されていますが、彼のギター とのデュオで始まる#1。途中から入るホーンのリズムが心地よく耳に響 きます。ボサノヴァの代表曲#2。4本のフルートが奏でるお馴染みのア レンジに心が休まりますね。ロージーの噛みしめるような唄い方や、ジョ ンのギターも最高です。ダイアナ・クラールとのデュエットを披露する# 3。ダイアナのピアノ、オスカー・カストロ・ネイヴィスのギター・ソロ も冴えてます。ジョンがヴォーカルをとる#4。気分はもうブラジルです 。昼下がりのプールサイドでぼけ〜として聴いていたい#5。打って変っ て踊り出しそうな#6。ゲイリー・フォスターのテナー・サックスが良い ですね。アレンジの勝利とは、この曲の事なのでしょうか。コール・ポー ター・ア・ラ・ブラジルの#7。ジョンのギターとロージーのヴォーカル とのデュオ#9。軽いサンバのリズムをジョンと楽しげに繰り広げる#8 、#10。気だるいジョンのヴォーカルが何とも言えない#11。ジョン のギター・ソロが恰好良い#12。本当に瞑想の世界に入ってしまいそう な#13。たまには演奏だけのトラックも良い物ですね。#14はインス トルメンタルで贈られます。ブラジルが誇る国民的歌手で、今は亡きエリ ゼッチ・カルドーゾの名唱が今も頭を離れない、映画《黒いオルフェ》の 挿入歌、《カーニバルの朝》の英語版#15。歌詞を大切に唄っているロ ージーに拍手です。そしてアルバム最後#16は、このアルバム自体が「 夢」だったかの様な錯覚を与える終わり方をする#1の繰り返し。とても 素敵な終わり方です。

如何でしたか?夢の世界を堪能された事と思います。素敵なアルバムで したね。そして、このアルバムをロージーは3人の男性に捧げています。 その3人とは、アントニオ・カルロス・ジョビン、フランク・シナトラ、 そして、ネルソン・リドルです。最後にその事を記して紹介を終わりまし ょう。

なお、CD番号は、CCD-4884-2 でCONCORD JAZZ から 出ています。輸入盤ですが、そのうちに国内盤も発売されると思います。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみてください。