NNENNA FREELON

SOULCALL


今回紹介するニーナ・フリーロンは10年ほど前からジャズ・ヴォーカ ル・ファンの間では話題沸騰だったのですが、何故か、今一歩盛り上がら ず現在に至っています。しかし彼女のデビュー・アルバムがいきなりグラ ミー賞にノミネートされた事からも解る様に、その実力は並大抵の物では ありません。ジャズ・ヴォーカル・ファンだけでなく、ソウル・ヴォーカ ル・ファンにも是非聴いて頂きたい作品です。
このアルバムは彼女の両親に捧げられていますが、作詞、作曲に編曲ま でこなす彼女が、今回は特にプロデュースも自らが当っています。それで は紹介していきましょう。

マット・ペンマンのウッド・ベースのイントロから引き込まれてしまう #1。途中のスキャットの部分では《オールマン・リヴァー》の一節を用 いて自由に飛び回っている感じがします。元々はシャンソンで作曲のジル ベール・ベコーが唄っていましたが、後に英語詩が付いて大ヒットした# 2。エヴァリー・ブラザーズでお馴染みのスタンダードです。
あれ?と思われた方、その通りです。テイク6のコーラスと共にアカペ ラで唄われる#3。ご機嫌なナンバーですね。ピアノ伴奏だけで唄うスピ リチュアルの#4。レゲエっぽいリズムに乗った#5はとても古いミュー ジカルから。最後のワンコーラスの部分は彼女の詩が後から付けられまし た。彼女の自作#6では、サウンド・オブ・ブラックネスのコーラスが加 わる事で、ゴスペル・ソングの様な仕上りになりました。彼女の才能を改 めて感じますね。
先日、ディオンヌ・ワーウィックが来日公演をしましたが、彼女の代表 曲でもある#7をこの様に大胆にアレンジ。体が乗ってきます。スティー ヴィー・ワンダーの《キー・オブ・ライフ》に入っていた#8。ジョー・ ベックのギターだけで唄っていますが、とても軽い感じが清涼剤の様で心 地よいですね。#9は再び彼女の作品。タイトルにもなっていますが、ボ サノヴァのリズムが何か不思議な魅力を放っているとは思いませんか?と ても美しい曲です。
ブロード・ウェイで話題になりながらも早くもクローズしてしまった再 演のミュージカル《ベルズ・アー・リン・リン》からの#10はスタンダ ードにもなっている有名曲。面白いアプローチです。ナット・キング・コ ールと言えば出てくるこの#11も大胆なアレンジですが、楽しそうに演 じていますね。ロジャース&ハートの隠れた名曲とトラディショナルをメ ドレーにして1つの曲の様に聴かせる#12。心が落ち着きます。そして 、このアルバム最後の#13は#4と同じ曲ですが、#4がピアノとのデ ュオだったのにたいして、ここではトリオで唄われます。ここで、彼女な りのスピリチュアルを感じるのは、決して私だけではないでしょう。
如何でしたか?暑い日々が続くこの夏には心地よいブリーズとして感じ られた方も多いのではないでしょうか。CD番号は VICJ 60704 (国内盤)でビクターより出ています。輸入盤はコンコード・レーベルよ り出ていますので、ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。 また、機会がありましたら、彼女の他のアルバムも聴いてみて下さいね。