Various Artistes

Woman


最近、みなさんもご存じの通り、女性のアーチストを集めて編集したア ルバム、「Woman」シリーズが好評の様で、予想していた通りジャ ズ・ヴォーカルでも登場しました。今回紹介する2枚組アルバム《Woman ~ The Best Jazz Vocals》は内容の濃い、とてもお買い得のアルバムです 。それでは早速紹介していきましょう。

まずDISC1から。その冒頭を飾るのは、今や大スターの貫禄さえ 見せるダイアナ・クラールの#1。コール・ポーターのスタンダードを軽 いボサノヴァタッチでストリングスを絡めて聴かせてくれます。とっても 気持の良いスタートですね。#2はパット・メセニーの後押しでデビュー を飾ったノルウェイの歌手、セリアが昨年だしたアルバムから。少しコケ ティッシュな声が特徴です。#3はスウェーデンの代表的なモニカ・ゼタ ールンドが母国語で唄った、アルバムとしても大変有名なビル・エヴァン スとの共演盤から。少し重い雰囲気で始まる#4は、そのステージングの 楽しさでも群を抜くディー・ディー・ブリッジウォーターの説得力溢れる マット・デニス作の代表曲です。一度聴いたら忘れられない声を持つアビ ー・リンカーンの#5は、どこかビリー・ホリデイを想い浮かべさせます ね。スタン・ゲッツのサックスもとても素敵です。ジャズのスタンダード は結構ブロードウェイ・ミュージカルの中で唄われた物が多いのですが、 #6も《マイ・フェア・レディー》の中の曲。現在最高のジャズ歌手と言 われている中の一人、カザンドレ・ウィルソンのアプローチが見事です。 #7はC.イーストウッド監督の映画、《トゥルー・クライム》の主 題歌。再びダイアナ・クラールが唄います。大器晩成とはこの人の為にあ るような言葉だな、と思わせたシャーリー・ホーン。彼女の唄う#8はそ の語り口に惚れてしまいそうです。が、くれぐれも彼女の写真は見ないよ うに。(失礼しました。)さて、グラスを傾けてお酒でも飲みたくなるよ うな雰囲気の#9は、2000年にデビューしたルース・キャメロンのア ルバムから。あんまり上手ではありませんが、一語一語をはっきりと発音 する姿勢に好感が持てますね。再びセリアの登場です。彼女の唄う#10 はロジャース&ハートのミュージカル《パール・ジョイ》からのナンバー ですが、恋に悩んでいるお方には頷く箇所が沢山ありそうですね。ローラ ・フィジーの唄う#11はアラン&マリリンのバーグマン夫妻による大変 美しい詞にミシェル・ルグランがこれまた大変に美しい曲を付けた彼の代 表作です。ダイアン・シューアが唄う#12はジョージとアイラのガーシ ュイン兄弟の作った有名曲。そして、DISC1の最後、#13はデビ ュー・アルバムが素晴らしすぎた為にその後傑作の生まれないヘレン・メ リル。彼女がスタン・ゲッツと共演したアルバムからの曲です。あのハス キーな歌声は魅力があるんですけどね。

それではDISC2の紹介にいきましょう。#1は、昨年メジャー・ レーベル「Verve」よりデビューして話題になった日本人歌手、akiko が唄うメル・トーメの作品。ブルーな雰囲気が良いですね。イントロ当て クイズに出たら一番に押せる自身があるほど聴きまくったサラ・ヴォーン の#2は、誰もが知っているスタンダード。何時聴いても素晴らしいの一 語です。これもすぐ押せるエラ・フィッツジェラルドの#3。ガーシュイ ンの書いた不滅の名曲です。ブルースの女王といわれたダイナ・ワシント ンが唄う#4。歌声が強烈ですね。映画にもなった大歌手、ビリー・ホリ デイの#5は、リナ・ホーンの代名詞とでもいう有名曲ですが、元はとい えば、バンド・リダーのキャブ・キャロウェイの為に書かれた曲なんです 。彼女独特の芸術を確立したニーナ・シモン。彼女の唄う#6にもその個 性は溢れんばかりに感じとれます。なんて、説得力のある歌声なんでしょ うか。こんな歌手が酒場で唄っていたらどんどんお酒が進んでしまうだろ な、と思わせるカーメン・マックレイの#7。この曲、ビリー・ホリデイ も唄っているのですが、実は10代のカーメンがルーサー・ヘンダーソン ・ジュニアと共作した物なんです。流石、ピアニスト出身だけの事はあり ますね。#8は素晴らしいカムバック作を残してその2年後にガンの為に 亡くなってしまったテリ・ソーントンの、そのカムバックしたアルンバム からの曲。本当に惜しい人を亡くしたなと今でも思います。四十も半ばを 過ぎた私には思うところ多い内容の詞を唄うエラの#9は哀愁漂う素晴ら しい歌唱です。カウント・ベイシー楽団の演奏にのせてサラが唄う#10 はお洒落な詞の内容で聴かせます。何年か前にヴァネッサ・ウィリアムス でリヴァイバルされたミュージカル《セントルイス・ウーマン》の中で唄 われた#11。ここではビリー・ホリデイが感情込めて聴かせます。ジュ リー・ロンドンの大ヒット曲を彼女とはまるっきり違った表現で迫るダイ ナ・ワシントンの#12。#13と言ったらすぐにペギー・リーの名前が 出て来るでしょう。それほどジャケットのデザインと共に忘れられない彼 女の唄は素敵です。#14もすぐヘレン・メリルが出てきます。本当に素 晴らしいデビュー・アルバムでした。ステージの上で平気で酒を飲むアニ タ・オデイ。でもその歌唱は素晴らしくこの#15でも独特の節回しで感 動を与えてくれます。今週末のニュー・ヨークの話題を独り占めしている のが#16を唄うブロッサム・ディアリー。何でもラウンジで行なってい るショーが評判に評判を呼んで入れない状態だとか。しかし、この人幾つ になったんでしょうか。相変わらずコケティッシュな声のようですよ。実 際に聴きに行きたい気持です。そして、この2枚組のCDも最後の# 17になりました。最後を飾るのはデューク・エリントンのナンバーを唄 うパティ・ペイジです。テネシー・ワルツで有名な彼女ですが、ジャズ・ ヴォーカルもなかなかです。とても哀愁を帯びた詞の内容ですが、それも その筈、この曲が最初に作られた時のタイトルは《センティメンタル・レ イディ》だったんです。

如何でしたか?とてもお得なアルバムでしょ。是非一家に一枚、いや、ひ と組あっても良いのではないかと思います。CDの番号は、 UCCU-1006/7 で、ユニヴァーサル・ミュージックから発売されています。 ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。