PATTI AUSTIN

for Ella


パティ・オースティンといって知らない人はもういない位有名になって しまいましたが、彼女がとても素晴らしいアルバムを発表してくれたので 、今回紹介したいと思います。

彼女の事を知らない人の為に、少し彼女を紹介してみましょう。 1950年(一説では1948年)生まれの彼女は、父親の縁で歌手の ダイナ・ワシントンと幼い頃に知り合います。その後、TVやミュー ジカルに出演し、10代の時にはシングルを数枚リリースしていますが、 長い下積み生活が続きます。そして、1976年、CTIレーベルよ り《エンド・オブ・レインボー》でデビューしてからは、その類希なる才 能が開花、フュージョン・ヴォーカル界の女王として、現在にいたってい ます。
その彼女が、なんと、今年7回忌を迎えるジャズ・ヴォーカル界のファ ースト・レディ、エラ・フィッツジェラルドへの追悼アルバムを発表した のです。これがあまりにも素晴らしいので、紹介せずにはいられませんで した。それではみなさんと一緒に聴いていきましょう。

ドイツの名門オーケストラ、WDRビッグ・バンドの豪華な演奏で幕 を開ける#1はエラがカウント・ベイシー楽団と何度か録音しているエラ の十八番。パティもエラに負けじ劣らずの歌唱を披露しています。ウッド ベースと伴に唄い出す#2。彼女が完璧なジャズヴォーカルになっている のを、もうお気付きですね。《ミスター・パガニーニ》という別題でも有 名な#3。ここではエラがすぐそこにいるかの如く、彼女の唱い方を再現 しています。ガーシュイン兄弟の作品#4。思い切りテンポを落して彼女 自身の表現方法で唄うパティ。高級クラブでブランデーでも飲みたくなり ますね。エラ自身の作詞で彼女の最初の大ヒット曲#5。ピアノの伴奏の みで唄い始める#6。スピリチュアルを聴いているかの様です。彼女の実 力をイヤという程感じます。
エラが、先日亡くなったペギー・リーと共に出演していた、映画《皆殺 しのトランペット》の中で唄った#7。WDRストリング・アンサン ブルをバックにゆったりと唄う#8。エラが最も得意としていた#9。パ ティは優しく唄います。ピアノとのデュオ#10。彼女はテンポを大分落 して、ヴァースから噛みしめる様に唄います。トランペットが印象的な# 11は、エラへの追悼の為に書かれた新作。エラへの讃歌です。輸入盤で は最後の曲になる#12。もうお判りだと思いますが、《エラ・イン・ベ ルリン》というアルバムの中でのハイライトでした。後半部分は、そのラ イブの再現とも言うべき演奏と歌唱が繰り広げられます。こういうトラッ クを聴いていると、本当に、うまい!と唸りたくなりますね。さて、日本 盤のみのボーナス・トラック#13。最近ではミュージカル畑でも活躍し ているヴァネッサ・ウィリアムスが、《Sweetest Day》と言うアル バムの中で唄っていた、エラ・フィツジェラルドへの讃歌です。ジャズの 編曲にすると、恰好良くなりますね。オリジナル・アルバムに入れてもお かしくないトラックです。

如何でしたか?大変素晴らしかったでしょ。今までフュージョンの世界 でばかり見ていた彼女が、ジャズ・シーンに本格的に進出してきても、何 の不思議もない位にジャズしてましたね。改めて、彼女の実力を認識して しまいました。
アルバム番号は VICJ 60890 。PLAYBOY JAZZ レーベルで、ビクターから発売されています。ジャズ、フュージョンのヴ ォーカル・コーナー、または、ソウル、R&Bのコーナーに行ってみ て下さい。