NEW YORK PHILHARMONIC & OTHERS

Sweeney Todd 〜 LIVE in CONCERT


今回紹介するアルバムは、2000年の5月4日〜6日にかけて、 ニューヨークはリンカーンセンターのエヴリィー・フィッシャー・ ホールで行われた、コンサート形式のミュージカルを収録した、 <スウィーニー・トッド>です。コンサート形式というと、 ほとんどの方が、オペラを思い浮かべる事でしょう。 この作品は、作者、ステファン・ソンドハイム(スティーヴン・ ソンダイム)の中でも一番オペラに近い作品と言っても 過言ではありません。まして、今回は、アンドリュー・ リットンを指揮に迎えて、ニューヨーク・フィルハーモニックの 演奏で贈る訳ですから、オペラファン、クラシックファンの方にも 満足のいくアルバムだと思います。
ミュージカルファンの方には、その豪華な出演者から このアルバムを買わずにはいられなくなる事でしょう。

さて、出演者の紹介は後ほどするとして、ミュージカル <スウィーニー・トッド>について少し説明しておきましょう。
このミュージカルは、ヒュー・ウィラーの小説を基に書かれた クリストファー・ボンドの芝居、<理髪師スウィニー・トッド> を下敷きにして、ソンドハイムの作詞・作曲で1979年に ブロードウェイのユリス劇場で初演されたものなのです。 当時の主演には、トッドにレン・カリュー、パイ屋の女主人ラヴェットに、 TV<ジェシカおばさんの事件簿>でお馴染みのアンジェラ・ランズベリーが あたっていました。彼女はこの役で4度目のトニー賞を 勝ち取っています。そして、558回の上演を記録しています。 この<スウィーニー・トッド>と言う題名には、副題がついていて、 正式には、<スウィーニー・トッド 〜フリート街の奇妙な床屋> と言います。ここで、あっと気が付いた方もいらっしゃると 思いますが、数年前には演劇版が映画化されました。 物語りは、無実の罪を、時の権力者に着せられて流刑にされた 床屋のトッドが、15年振りに戻ってきたロンドンで、 自分をおとしめた権力者に復讐するといったスリラーなのです。 日本でも、1981年の7月8月の2か月間、鈴木忠志演出、 市川染五郎(現在の幸四郎)、鳳蘭、市原悦子、火野正平、 山谷初男、沢田亜矢子、中丸忠雄と言った豪華キャストで 上演されて話題になりました。
さて、今回の出演者ですが、床屋のトッドには、この役を アメリカのツアーで演じ、そのTV放送で、エミー賞を獲得した ジョージ・ハーン。彼はトニー賞を2度獲得していますが、 <ラ・カージュ・オ・フォール>のザザ、<サンセット大通り>の マックスと、その演技の幅は、とてつもなく広いのです。 そして、パイ屋の女主人ヴァレットには、パティー・ルポン。彼女は<エヴィータ>のタイトルロール、 <エニシング・ゴーズ>のレノ、<サンセット大通り>では世界初演のノーマを、 そして、<マスター・クラス>では、マリア・カラス役をと、 彼女も幅広い役をこなす女優として有名です。ドッドの娘 ジョアンナには世界各地のオペラハウスで活躍中の ハイデイ・グラント・マーフィー。 その恋人アンソニーには、ブロードウェイで<オペラ座の怪人>を 2千回以上も演じているデイヴィス・ゲインズ。トッドの 宿敵、ターピン判事には、1967年のデビューから 千回を超えるオペラに出演してきたメトロポリタン歌劇場所属の ポウル・プリシュカ。女乞食に、トニー賞3回受賞の オードラ・マクドナルド。まさに超超豪華なキャストです。

ここで、演奏会形式の舞台はどうなっているのかを紹介しますと、 普通は、オケが舞台後ろにいて、出演者が前に座っているのですが、 最近は、演技もするようになったらしく、この時の舞台は、写真によると、 オケの後ろに設けられて、役者はそこか、時には前に出て来て 演じた様です。それでは紹介していきましょう。

重苦しいオルガンの響きに続くけたたましい工場ノのサイレン。 それとともにトッドが登場する#1。最初からオペラチックです。 ソンドハイム特有のメロディーがやはり魅力の#4。 ジョアンナの可憐さが良く表現されている#8。このミュージカルでの ハイライト曲のひとつ#10。このミュージカル最大のヒット曲になった 22。1幕のラスト・ソング#24。観客の興奮度が 伝わってきますね。ディスク2の方にいきましょう。 パイ屋の活気が伝わってくる#1。登場人物それぞれの ジョアンナに対する気持ちが良く表れている#2。不気味な終焉を予感させる#4。とても美しい#6。 いよいよ大詰めだと分かる#10。トッドと判事の対決の緊張感が たまらない#11。最愛の妻を間違って殺してしまった悲しみが 伝わる#12。そしてこのミュージカルのテーマソング とでもいうべき#13。盛り上がって盛り上がって、幕は降ろされます。

如何でしたか?会場の盛り上がり方もすごかったですね。 生を観たかったと思うのは、決して私だけではないでしょう。 アルバムの番号は、NYP2001/2002です。(輸入盤) ミュージカルのコーナーに行ってみて下さい。