長谷川きよし

ACONTECE〜アコンテッシ


本当に上手い!と何時も唸らせてくれる歌い手が何人かいますが、 今回紹介する長谷川きよしも、誰もがそう思う歌い手のひとりではないでしょうか。

長谷川きよし。彼の名前も聞いた事がない若い方々は きっと多いことでしょう。しかし、我々40を超えた世代には とても印象深い歌い手なのです。彼のデビューはもう 30年以上も前。このアルバムにも収録されている<別れのサンバ> という曲ですが、当時、彼は日本のホセ・フェリシアーノと 大いに音楽界を湧かせました。それは、彼とホセに共通していた 盲目のギター弾きからきたのだと思うのですが、確かに 両者ともに、盲目であるにも拘らず、そのギターのテクニック たるや、素晴らしいものがあったのです。長谷川きよしが 登場した頃の日本は、まさに国が大きく動いている時でした。 70年安保、大阪万博、浅間山荘事件を始とする一連の 赤軍派のテロ。そんな混沌とした時代に登場した彼の唄と その声は、私たちに安らぎを与えてくれたのです。そして、 今回紹介するアルバムでも、そのギター・テクニックと 素敵な歌声は30年以上経った今もなお健在なのです。 それでは紹介していきましょう。

朝の静けさの中、霧のかかった森を彷徨っているかの様な イントロに導かれて始まる#1。まるで夢の世界にいるかの様な 錯覚をしてしまいます。前出にある彼のデビュー曲#2は、 1993年のニュー・バージョン。今聴いても全く古くありません。 フランスのルイ・アマードとジルベール・ベコーの強力コンビ の書いた#3。彼のギターも素敵です。メロディオンが 効果的に入る#4。津島玲の詩に不思議な魅力を感じます。 ひとつの物語が詩になっている#5は、吉行和子の語りを 挿入した事で、見事な芝居になりました。素敵です。 マルチェロ・マストロヤンニ主演の映画<エンリコ4世>の為に アストル・ピアソラが作曲した#6。長谷川きよし独自の 歌詞で唄います。ネガという人物を称えた#7。サンバの リズムに飲み込まれそうな曲ですね。長谷川きよしの曲だと すぐに解る#8。早いリズムなのに、何か落ち着くのは 何故なんでしょうか?劇作家で演出家の岩松了が作詩した #9では、再び吉行和子とのコラボレーション。ボサノヴァの 心地よさ、そして、ちょっと苦笑いしてしまう詩の内容。 みなさん、ちゃんと詩を読んで下さいね。再び岩松了作詞の #10。赤木りえのフルートが本当に曲の感じを引立てます。 アレンジの素晴らしさに脱帽です。そして、このアルバムの タイトルにもなっている#11。静寂が再び訪れてきます。 誰の意思にも関係なく、宿命的に物事が進んで行くという 意味の<アコンテッシ>。ゆったりと流れるメロディーに 宿命的な物も一緒に流れて行く感じがします。アルバムの 最後に相応しい、とても素敵な曲ですね。

如何でしたか?フェビアン・レザ・パネのアレンジが とても良かったですね。久し振りに長谷川きよしを聴いた 方は、改めて彼の素晴らしさに感動したのではないでしょうか。 初めて聴く方も同じく感動した事だと思います。今彼は、 ライヴ活動を中心に私たちに素敵な音楽を贈り続けてくれています。 是非、ライヴハウスで本当の彼を聴いて下さい。CD番号は、 PHCL5004で、日本フォノグラムから出ています。 Jーポップか、フォーク・ニューミュージックのコーナーに 行ってみて下さい。