渋谷 毅

AFTERNOON


朝晩すっかり秋の気配を感じてきた今日この頃ですが、 そんな時にもって来いのアルバムを紹介しましょう。 リラックスして聴ける、渋谷毅(ピアノ)の<アフターヌーン>です。

ピアニスト渋谷毅。ジャズが好きな方にはお馴染みですが、 知らない方の為に、彼について少しお話しましょう。
1939年生まれの彼は、東京芸術大学作曲科を中退した後、 ジョージ川口のビッグ・フォーを皮切りに沢田駿吾のグループ を経て、1976年に自分のトリオを結成して今に至っています。 作、編曲でも大変注目をされる一方で、酒井俊、亀淵友香、 そして浅川マキの伴奏を務めてきた事でもその実力のほどが うかがえます。最近ではドラムの森山威夫とのデュオアルバム <しーそー>を出して、温かく安らぐ音楽を提供しているのは 皆さんもうご存知の事と思います。それでは紹介していきましょう。

このアルバムのタイトルは<アフターヌーン>ですが、 リラックスしたその演奏から<アフター・アワーズ>を感じてしまう デューク・エリントンの#1。渋谷毅のオリジナル#2。 ブルース調の#2。ピアノ・ラウンジで傾けるグラスが似合う #3。とても有名なバラッドの傑作ですね。もう40年ほど前に 発表されたMJQ〜モダン・ジャズ・カルテットのアルバム <lonely woman>に入っていた#4。MJQのピアニスト、 ジョン・ルイスが作ったこの作品には、渋谷毅の愛情の 様なものを感じとります。ちょっと鼻歌が出てしまいそうな #5。ジャズ評論家として活躍したレナード・フェザーの 作品です。バラッドから変速で展開していく#6。元々 ヴィクター・ヤングのロマンチックなバラッドですが、 ここでは、渋谷毅が本来のジャズ・ピアニストに戻って ジャズってます。ジーン・デ・ポール作曲の#7もやはり バラッドの傑作。地味ながらジャズ畑ではよく採り上げられる 名曲です。ブルースでないにもかかわらず、ブルースの味が するのは決して私だけではないでしょう。ちょっと面白い ネーミングの#8。タリラリラ…、と口ずさんでしまいそうな ブルースですね。鬼才、セロニアス・モンクの#9には 渋谷毅の鬼才を感じます。このアルバム最後を飾るのは 彼のオリジナル#10。詩を朗読しているかの様な彼のピアノ。 <ピアノの詩人>、渋谷毅。そんな風に呼びたくなりますね。

如何でしたか?ふと気が付くと、彼の世界に引き込まれて しまっているあなた自身がそこにいるのではないでしょうか。 何気なくピアノの前に座って、何気なく弾いている、 そんな感じのアルバムでとてもリラックスできます。 アルバムの番号は、TKCB-72356 で徳間ジャパンから出ています。 日本のジャズのコーナーに行ってみて下さい。