Ann'So/Roland Romanelli

ma plus belle hstoire d'amour...barbara


急に寒さが増して、今年の秋は大変短く、そろそろ冬の足音が聞こえてきそうですが、 そんな秋を惜しむかの様に素敵なアルバムが発売されました。それが、ここに紹介する <我が麗しき恋物語り…バルバラ〜ma plus belle histoire d'amour...barbara>です。 数年前に惜しくもこの世を去ったシャンソン歌手、バルバラの代表作をかつての彼女の仕事上でのパートナー、 ロマン・ロマネリが新たに編曲し、ブルガリア交響楽団の演奏と、アン・ゾーのヴォーカルで作り上げた、 この秋最高の作品です。

さて、ここに出てくる、というか、このアルバムの主役Ann'So(アン・ゾー)についてですが、 残念ながら資料が全くない為に紹介する事ができません。実は、このアン・ゾーという名前さえ、 本当の発音がわからないのです。今の時点で分かっている事と言えば、彼女の歌、ロラン・ロマネリのピアノ、 そして、ブルガリア交響楽団の共演で、今年の11月14日にユーロペン劇場で <les plus belles chansons d'amour de Barbara〜バルバラの愛した美しい歌の数々> というコンサートが開かれる事くらいなのです。しかし、 このバルバラとは全く反対のロマンチックな声の持ち主が唄うバルバラの歌は、とても心地よく、 きっと皆さんをも虜にしてしまうでしょう。 それでは紹介していきましょう。

朝もやの中をイメージするストリングスの演奏で唄われる#1は、 まだバルバラが<真夜中の歌手>と言われていた1950年代後半の歌。 1987年にバルバラがシャトレ座で行ったコンサートでは、アンコールが終わっても帰らない観客がこの歌を合唱した、 という話が伝説になっています。1963年の#2。後半でのボサノヴァのリズムが前半の寂しさを引き立てます。 オーケストラとピアノのコントラストが美しい#3。バルバラに負けず、感情が入ってます。絶望を唄う#4。 アップからスローに変わるリズムの変化がその詩の内容を補っています。 あらゆる戦いを否定するこの歌を皆さんもじっくり聴いて下さいね。<孤独のスケッチ>という邦題でも有名な#5。 生きる事に対する励ましが唄われますが、ロマネリのアコーディオンが何と効果的なんでしょう。とても美しい演奏です。 バルバラ初の自作アルバム<BARBARA CHANTE BARBARA>の最後に収められていた#6。ワルツのリズムが気持ち良いのですが、 詩の内容は強い自分自身を表しています。バルバラが甦ったような#7。一曲の中に物語を感じる#8。 <孤独>と言うタイトルをストリングスのアレンジで和らげてくれる#9。 彼女はどんな夢を見ているのだろうかと想像してしまう#10。シャンソンは3分間のドラマと言いますが、 この#11は正にそれです。よく詩を聴いて下さい。感動という言葉は、この詩の為にあるのかも知れません。 雨の降っている日に聴くと、その感動はきっと頂点に達する事でしょう。映画音楽の様な演奏も素敵です。 ユダヤ人のバルバラが幼い頃に過したナチの収容所。その町を訪れた事への後悔。ナチの収容所で亡くなった母への想い。 #12では、哀しい過去が唄われ、そして、この詩の中でその過去を葬ります。なんて、素晴らしい詩なのでしょうか。 そして、このアルバム最後#13は、バルバラ最大のヒット曲<黒い鷲>です。ここでは、 長年バルバラのステージ・パートナーを務め、このアルバムのもう一人の主役、 ロラン・ロマネリのアコルデオンとブルガリア交響楽団との見事なアンサンブルを聴く事が出来ます。 とても素敵なアレンジで、暗くなりかけたリスナーの私たちを救ってくれるかの様ですね。

如何でしたか?アン・ゾーの声、ロマネリのピアノにアコルデオン、そして、ブルガリア交響楽団の演奏。 三者が一つになって、とても素晴らしいアルバムでした。この秋、一人でコーヒーでも飲みながら聴いてみては如何でしょうか。 アルバムの番号は、586 999ー2 で、ユニヴァーサルから出ています。シャンソンのコーナーに行ってみて下さい。 おそらくこれは、アン・ゾーの所ではなく、バルバラの所に置いてあると思います。