JANE DUBOC

Sweet Lady Jane


 今年の東京の冬はとても寒くて、久しぶりに本当の冬を感じていますが、 そんな外の寒さで冷えきってしまった身体を暖めてくれるアルバムが、 今回紹介するジェーン・ドゥボックの最新作、<スウィート・レイディー・ジェーン>です。

 ジェーン・ドゥボックを知らないあなたに、少し彼女を紹介しておくと、 と言いたいのですが、実は私もあまり知らないのです。彼女、日本でまだアルバムが出ていないのですが、 たった一枚、ジャズのアルバムとして出された、サックス奏者、ジェリー・マリガン名義の<Paraiso 〜パライソ>というアルバムの中で数曲歌っている ので、若干の人には知られている存在です。 そこで、資料をいろいろ探して、見つけるには見つけたのですが、残念な事にポルトガル語だった為、 私には全く分からず仕舞でした。詳しい事が分からなくて申し訳ないのですが、 私に分かるだけの事を説明しておきましょう。
 ジャケットからも分かる様に、年の頃は、30代後半〜40代後半だと思われます。 そして、相当チヤーミングで、美人。そんな彼女、少女時代にはヴァレーボールをやっていて、 そこそこの成績を上げていたスポーツウーマンだったらしいのです。そして、1970年ころから歌い出して、 80年代には、MPBフェスティヴァルや、ジャズフェスティヴァルに数多く出場し、 1992年、<Brasiliano>というアルバムでデビュー、先ほど触れた、 ジェリー・マリガンとの共演作を含めて、今までに10枚のアルバムを発表、昨年暮れに、 今回紹介するアルバムを発表したというわけです。ポルトガル語の分かる方は、 彼女のホームページがありますので、そちらの方で、もっと詳しく見て下さいね。 それでは紹介していきましょう。

 Penguinのこのコーナーではお馴染のローザ・パッソスの#1。 いきなり大人の雰囲気でたまりません。途中で入る、ルー・ソロフのトランぺットがいいですね。 夕暮れを感じる#2。時がゆったり流れて行く様です。物寂しげなサンバの#3。ブラジルの国民的歌手で、 十年ほど前に亡くなった、エリゼッチ・カルドーゾを彷彿させる、堂々たる唄いっぷりですね。 スティーヴィー・ワンダーの作品で、何時、誰が歌っているのを聴いても素敵な#4。勿論、 ジェーンは素敵です。このアルバムのプロデュースをした、イヴァン・リンス。彼の作品#5では、 ヤマハのシンセサイザーが効果的です。ラウンジで好きな誰かと飲んでいる時に、こんな曲が流れていたら、 きっと、その相手は落ちちゃうだろうな、と云う雰囲気のある#6。ちょっとブルージーに唄ってます。 ロジャースとハマーステインの代表曲#7は、軽いボサノヴァ調で。このアルバムの目玉とでも言うべき#8。 この春来日する、ロックバンド、ローリングストーンズのナンバーから、ミック・ジャガー と キース・リチャーズの美しい感性をさらに美しく表現しています。このアルバムのタイトルは、おそらく、 彼女の名前と、この曲のタイトルから考えられたのでしょう。イヴァン・リンスと共に、 今のブラジル音楽を代表するエドゥー・ロボ。彼の作品#9は、 かつてサラ・ヴォーンも取り上げた事もある曲ですが、サラの絶望的な暗さより、少し軽く唄って、 救いを感じさせます。イヴァン・リンスとのデュエット#10。ちょっと頼りないイヴァン・リンスの声が、 逆に彼女を引き立てる結果になって、とてもほのぼのとします。 トム・ジョビンの#11はとてもロマンティック。ドーリー・カイミイの同名異曲と比べてみるのも面白いですよ。 #2の英語ヴァージョン、#12。このアルバムの最後を飾ります。 ランディー・ブレッカーのフリューゲルホーンが切ないですね。#2のポルトガル語と比べてみて、 あなたは、どちらがお好みでしょうか?

 如何でした?大人の雰囲気が感じられて、聴き終わったら、 何か暖かくなっていませんか?ふ〜っと息をはいて、コーヒーや紅茶を飲んでいる時にも、 ブランディーの薫りを楽しんでいる時にもピッタリです。とても素敵なアルバムで、 日本発売の予定がないのが本当に残念でなりません。アルバムの番号は、0605818ー2で、 JAM MUSIC から出ています。ワールド・ミュージックのブラジルのコーナーに行ってみて下さい。