Claire Martin

TOO DARN HOT!


 イギリスの女性ジャズ・ヴォーカル界と言えば、真っ先に思い浮かべるのがクレオ・レインとキャロル・キッドの二人でしょう。 今回紹介するクレア・マーティンは、その二人の後継者とでも言うのでしょうか、卓越した歌唱力で、ただ今、 イギリスのジャズ・ヴォーカル界では大変な人気を博しているのです。

 彼女を少し紹介したいのですが、その資料がなく詳しく紹介出来ないのが残念です。ただ、ジャケットからも分かるように、 相当な美人であり、その歌を聞けば分かる様に知的でセンスが良く、イギリスで大変人気が高いのが分かります。 作・編曲家のリチャード・ロドニー・ベネットは、彼女のデビュー前にたまたま彼女のミニ・コンサートに接する機会に恵まれて、 「ステージ・マナーに感心するだけではなく、そのジャズのセンスに驚いた」と感想を述べている通り、自然に歌いながら、 その存在感は並々ならぬ物があるのです。レパートリーも相当広く、これからが益々楽しみです。デビューは1991年、 イギリスのリン・レーベルから出した<The Waiting Game>で、日本では3年ほど前にその後のアルバムがCDで発売になり、 少し話題に上ったのですが、その後尻つぼみになってしまっていました。先にも言った様に、これだけの逸材をこのままにしておくのは、 真にもったいない事なので、今回紹介する事にしたわけです。
 今回のアルバム、<TOO DARN HOT!>は、梅雨の走りの様な最近の天気を、一気に払拭してくれるに違いありません。 それでは紹介していきましょう。

 怪しげなアルトサックスの音に続いてドラムとベース、ピアノが続き、そして出てきたのは、何と、 今年もミラノスカラ座ヴァージョンが来日する<ウエスト・サイド・ストーリー>からの#1。このスウィング感、 ドライヴ感、この一曲でもう彼女の世界にはまりそうですね。ラテンタッチの#2。 インストゥるメンタルで聴いてもきっと素晴らしい曲ではないでしょうか。クラブでも流行りそうな予感がします。 ロジャース&ハマーステインのスタンダード#3。イアン・ショーとの掛け合いのスキャットがとてもいいです。 ムード派が歌う事の多い#4。ここでの彼女のアプローチは、ズバリ、ジャズ!です。 タペストリー・ストリング・カルテットの優雅な演奏とともに贈る#5。小さなライヴハウスで聴いていたら、 きっとあなたも涙を流してしまうんでしょうね。そんなシットリ感のあるアレンジがとても素敵です。 タイトル曲にもなっている#6。今ブロードウェイでリバイバルヒット中のミュージカル、 <キス・ミー・ケイト>の第2幕冒頭のショーストッパー・ナンバーですが、ここでも彼女はジャズってます。 アレンジが光りますね。昨年亡くなったペギー・リーの十八番でもあった#7。 コーヒーの苦味を恋に例えたこの名曲をブルージーに歌いあげています。スピード感溢れる#8。 カーチェイスの映画を見ている気分にさせてくれますね。そして最後のアレンジに注目ですよ。 ラテンタッチで歌われる事の多い#9は、真正面からジャズとして唄われます。 #4にも登場のタペストリー・ストリング・カルテットが再び登場してヴァースから唄う#10は、 感情をたっぷり込めてムーディーに夜のイメージです。マイケル・マクドナルドの作った#11は逆に朝のイメージ。 映像に例えるなら、紗のかかった光溢れる森の中、とでもいいましょうか。皆さんも頭の中にきっと映像が浮かぶはずです。 タンタンとした中に愛のメッセージを送っている#12。アルバムのラスト#13は、ジョニ・ミッチェルの曲ですが、 これをイアン・ショーとのアカペラ多重録音でお贈りします。ちょっとゴスペル調ですね。

 如何でしたか?とってもストレートなジャズを感じて頂けましたでしょうか。とてもお洒落で、 小さなクラブで耳を傾けてみたいな、っと思って頂けたら最高なんですが。アルバムの番号は、AKD198(輸入盤)で、 LINNレコードから出ています。ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。