RENEE FLEMING & BRYN TERFEL

Under The Stars


 皆さんがこの記事をご覧になる頃には2003年のトニー賞が発表になっていると思いますが、そんな時、 タイミング良く素敵なアルバムが届きました。クラシック界の美男美女、ルネ・フレミングと ブリン・ターフェルの二人がポール・ジェミニャーニ指揮、ウェールズ・ナショナル・オペラ交響楽団をバックに贈る <アンダー・ザ・スターズ>がそのアルバムです。
 二人を知らない人の為に、少しここで紹介しておきましょう。ソプラノのルネ・フレミングは1959年アメリカの生まれ。 メトロポリタン歌劇場の看板歌手で、リヒャルト・ストラウスの<ばらの騎士>の元帥夫人や<アラベラ>の タイトル・ロールを得意にしています。一方のブリン・ターフェルですが、1965年、イギリスはウェールズの出身。 ジャケットからも判るように、優しい熊さん系。190cmを越す巨漢から発せられるバリトンの声は、 今、彼以外には考えられないと言われているヴェルディの<ファルスタッフ>のタイトル・ロールで世界中を魅了しています。 この二人が織りなす夢の世界をそれでは紹介していきましょう。

 70歳を過ぎてもまだまだ活躍しているスティーブン・ソンドハイム。彼が1979年に放った大ヒット、 <スウィーニー・トッド>からの#1。この作品、人肉をパイにしちゃうという大変恐ろしい話なんですが、 信じられないくらい美しいメロディーに包まれています。最近ではアメリカの歌劇場のレパートリーにもなっているこの作品に、 実は昨年、ターフェルがタイトル・ロールで出演しているのです。それだけあって、ここでのターフェルの解釈は見事ですね。 ミステリアスな#2は、かつてポップス界で<Him>などのヒット曲を出したルパート・ホルムズが音楽を担当した、 <エドウィン・ドゥルードの謎>という作品からの曲。フレミングの独唱は硬いですが、ミステリアスな雰囲気が出ています。 このミュージカル、ディケンズの未完成作品を逆手にとって、犯人を観客に選んでもらうという方法が大当たりして、 トニー賞でも5部門を獲得しています。<キャバレイ>でお馴染のジョン・カンダーとフレッド・ウェッブのコンビ。 彼らが作った二つの作品、<ハッピー・タイム>と<ミズ〜ウーマン・オブ・ジ・イヤー>からの曲をまるで一つの曲の様に歌う#3。 ターフェルのソロです。アレンジがいいですね。最近大ヒットに恵まれないアンドリュー・ロイド・ウェバー。 そんな彼の<ビューティフル・ゲーム>からの#4。ターフェルとフレミングの掛け合いは、 まるで目の前で舞台を観ていると言う錯覚をしてしまいそうです。始まった途端に妙な気を起こさないで下さい。 本当に暗かった作品、<パッション>からのメドレー#5。 ここでのフレミングは前半と後半の曲を一つにしながらもその違いをちゃんと表現していますね。 とうとうブロードウェイでは5月18日で閉幕してしまった<レ・ミゼラブル>。その中からジャヴェールの歌うとても美しい曲#6。 勿論、ターフェルの独唱ですが、思わずスタンディング・オベイションしてしまいたくなる様な熱唱です。 前出のロイド・ウェッバーが<キャツ>に続いて放った大ヒット作品、<オペラ座の怪人>。 怪人とクリスティーヌの美しいデュオ#7。ちょっとここでは二人とも張り切り過ぎって感じです。 50年以上経っても色褪せない名曲#8。フレミングは、もう少し主人公のアンナにならないとこの曲がもったいないな、 と感じてしまいます。再び<スウィニー・トッド>からの#9。こちらのターフェルはご立派です。シーンが思い浮びますね。 #10はおそらくフランスで作られた作品なんでしょう。<ロメオとジュリエット>からの曲ですが、 スケールが大きいですね。いったいどんな場面なんでしょうか。興味津津です。人種差別からの冤罪を扱った問題作<パレイド>。 #11はその中でも特にメッセージが伝わる一曲です。フレミングはここでは見事な歌唱で訴えます。 フレミングの汚名挽回って所ですね。<ウエストサイド物語り>を抑えて1958年のトニー賞に輝いた<ザ・ミュージック・マン>。 ロバート・プレストン演じたインチキ楽器商が、町の人々と交流していくうちに本物の楽団を作るという話だったのですが、 その最後に歌われるのがこの#12なんです。こんな元気いっぱいのターフェルも素敵ですね。小公女で有名な作家、 フランシス・ホジソン・バーネットの小説をミュージカル化した<シークレット・ガーデン>。 #13は再び二人の掛け合いが素晴らしいトラックになっています。コール・ポーターの#14も、 実はミュージカル<キス・ミー・ケイト>のナンバーだったんです。ちょっとフレミングが気負いすぎてますが、 やはり名曲ですね。そして、このアルバム最後の#15は、先ごろロンドンでも開幕した<ラグタイム>から。 ブロードウェイでは、もう随分前に閉幕していますが、大変素晴らしい作品だった事を今でも鮮明に覚えています。 そして、この曲を聴く度に涙が溢れてくるのです。それだけ印象深く、素晴らしい作品でした。このアルバムの最後に正に相応しく、 二人も作品に負けないくらいに歌ってくれています。

 如何でしたか?最近のクラシック歌手はポピュラーもこなせるようになったので、 今までのようなクラシック独特のアクも少なくなって聴き易くなったと思いませんか? 劇場で観ている様な気分にさせてくれたんではないかな、と思います。アルバムの番号は、 473 250-2(輸入盤)、 UCCD-1074(国内盤)です。どちらもユニヴァーサル・ミュージックより出ています。クラシックの声楽のコーナーか、 ミュージカルのオムニバスのコーナーに行ってみて下さい。
 余談ですが、現地時間6月8日に行われるトニー賞は、日本では6月15日(日)にNHK BS2 で放送される予定です。 素敵な音楽に会えるかもしらませんよ。