Maria Muldaur

A Woman Alone with the Blues


 この8月に、ブルー・ノート東京を始めとして、全国でライヴを行うマリア・マルダー。 彼女が昨年他界したジャズ歌手で女優のペギー・リーを偲んで大変素晴らしいアルバムを届けてくれました。 それが、今回紹介する<ア・ウーマン・アローン・ウィズ・ザ・ブルース>です。

 このアルバムは、<ペギー・リーに捧ぐ>という副題が付いていますが、 ジャズ歌手で女優のペギー・リーを偲んだ内容になっています。そこで、彼女を紹介する前に、 ペギー・リーに付いて少し紹介しておきましょう。
 1920年にアメリカはノース・ダコタで生まれた彼女は、1940年代にクラリネット奏者で バンドマスターのベニー・グッドマンに見出されて、バンド・シンガーとしてスタート。 ソロになってから53年に出したアルバム<Black Coffee>が大ヒットし、69年にはグラミー賞を獲得、 また、アカデミー賞の助演女優候補にもなり、アルバムも数多く発表、作詞、作曲も多く順風満帆に見えたものの、 83年にブロードウェイで開幕したショー、<ぺグ>が僅か1日で閉幕に追い込まれるなど、屈辱も味わっています。 そして、2002年1月21日、心臓発作の為、ロス・アンジェルスの自宅で死亡。81歳でした。
 さて、このアルバムの主役、マリア・マルダーに付いて紹介しましょう。1943年9月12日ニューヨークに生まれた彼女は、 中学生の頃からバンド活動を始め、高校生の時にはセミプロとしてニューヨークのクラブで活動を開始、 1964年には初めてのアルバムをリリース(共同名義)します。その後、ジェフ・マルダーと知り合い結婚。 二人の名義でアルバムを2枚だしますが、その後離婚してしまいます。しかし、離婚後、単独で出したアルバム <Old Time Lady>の中に入っていた<Midnight at the Oasis〜真夜中のオアシス>が全米6位になる大ヒット。 日本でも相当話題となりました。現在40代以上の人には、あの頃、相当ショックを受けた方も多いのではないでしょうか。 その後は、ブルース、ゴスペル、ジャズ等との接点を広げ今に至っています。今年6月23日には、 ニューヨークにあるカーネギー・ホールで、このアルバムを中心にしたコンサート、<ペギー・リーに捧ぐ> を開いて好評を得ています。それでは紹介していきましょう。

 彼女がグリニッチ・ヴィレッジのバーに置いてあるジュークボックスでかけまくっていたという#1。 ペギー・リーとは違ったセクシーさがありますね。ペギー・リー作詞の#2。ちょっと気だるくて、 いい雰囲気です。ダニー・カロンのギターにしびれる#3。ダン・ヒックスをゲストに迎えてとても楽しい#4。 思わずニヤっとしてしまうくらい、バンドとのバランスが良い#5。もう彼女の世界にどっぷりはまって来ていますね。 手拍子が知らぬ間に出てきそうな#6。ブギ・ウギのリズムがいいですね。列車が来る前に寝てしまいそうな#7。 たまにはのんびり列車の旅をしてみたくなります。打って変わって同じ列車でもアーヴィング・バーリン作の#8は希望が見えます。 ペギー・リーと言えばこれ、という位有名な#9。コーヒーの苦味と失恋の痛手を絡ませた何とも言えない曲だな、 と何時も思うのは私だけではないでしょうね。タイトルにもなっている#10。ジャズクラヴで聴いてみたくなりますね。 単純な詞の内容だけどグッとくる#11。そして、アルバム最後の#12は、デューク・エリントンの曲にペギー・リーが詞を付けたもの。 最後に相応しく、グイグイ行ってスパッと終わる。ラストが格好いいです。

 如何でしたか。真夜中のオアシスでファンになったあなたも、違った彼女の世界に引き込まれた事だと思います。 アルバムの番号ですが、UCCT-1069(国内盤)がユニヴァーサルから、、輸入盤は CD83568 でテラークから出ています。 ポップ・ロックか、ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。なお、彼女の来日公演は、ブルーノート東京で8月2日、 3日に、そのほか、横浜赤レンガ街にあるモーション・ブルー横浜でも開催されます。是非足をお運び下さいね。