YO-YO MA

obrigado BRAZIL


 肌寒い8月が終わって、逆に真夏の様な暑さが続いた9月の前半。しかし、季節は移り変わって行くものです。 カラっとした空気を感じるこの季節にぴったりなアルバムを紹介しましょう。それが世界的なチェリストであるヨーヨ・マの <オブリガード・ブラジル>です。

 今更紹介するまでもないでしょうが、知らない方の為に、ヨーヨー・マをここで少し紹介しておきましょう。
 パリで生まれた彼は4歳から父親の元でチェロを学び、しばらくして家族で移り住んだニューヨークでは、 かのジュリアード音楽院でレナード・ローズらに師事、その後、名門ハーヴァード大学を卒業し、 ソニー・クラシカルとの独占契約を結んでからは、今までに50枚を超えるアルバムを発表しています。またその内容は、 今回紹介するアルバムでも分かるように、非常に多岐に渡っています。バッハからピアソラまでといった具合です。 それでは紹介していきましょう。

 洗練された、という言い方が良く似合う#1。作曲者のピアニスト、セーザル・カマルゴ・マリアーノとのデュオです。 このコーナーでも随分前に紹介した事のあるホーザ・パッソスをヴォーカルに迎えた#2。 ボサノヴァはこの曲から始まったと言われています。#3はアサド兄弟とのコラボレーションです。 何か<秋>を感じさせるアレンジですが、ヴィラ=ロボスの代表作品です。チェロ、クラリネット、 そしてギターの共演が心を和ます#4。ヨーヨー・マと言えば、ピアノは彼女ですね。キャサリン・ストットとのデュオ#5と#7。 やっぱり息もピッタリです。数年前に惜しくも亡くなった偉大な作曲家であり、ギタリストのバーデン・パウエル。 彼の代表作でもあり、ブラジルの国民的歌手、エリゼッチ・カルドーゾ1966年の大ヒット曲#6。 ヨーヨー・マの哀愁溢れるチェロが本当に素敵です。以前紹介した事のあるショーロ。その代表曲#8。 とても軽快で、体が軽くなった様ですね。前出のアサド兄弟の兄の作品#9。もちろん兄弟との共演です。 数年前のスペイン映画、<蝶の舌>に出てきた少年の純粋さを感じます。朝靄が段々はれて、 光が差し込んできたホテルのテラスで朝食を摂っているイメージの#10。あなたは、洋食?和食? それともバイキングでしょうか?ブラジルでは誰もが知っているいるショーロの代表曲#11。昼下がりに、 あくびでもしてほっと一息てな感じですね。私だったらタイトルを<ブラジルの苦悩>にしたでしょうけど。 そんな民族意識を強く感じる#12。さて、再びホーザ・パッソスをヴォーカルに迎えた#13。 彼女が静かに祈りを込めて唄っています。作曲者ジスモンチとのデュオで贈る2つの曲のメドレー#14。 後の曲には元々詩が付けられていますが、ここで歌は唄われません。でも、一つの曲に聞こえませんか?素晴らしいアレンジですね。 小さな子供達が走り回る光景が浮かぶ#15。ボーナストラックとして入っている#16。 ちょっと現代音楽にも通じる所がありますが、哀愁を感じるフレーズもあってなかなか素敵です。

 如何でしたか?気持ちの良い秋の昼下がりに紅茶かコーヒーでも飲みながらボ〜っとして聴いてみてもいいですね。 ところで、オブリガードはポルトガル語でありがとうの意味ですが、何かこのアルバムを聴いていると、 ヨーヨー・マがブラジル(人や文化を含めて)に対して<オブリガード!>と言っている様な気がしてきました。 アルバムの番号ですが、SICC 115 (国内盤)でソニーから出ています。クラシックのコーナーに行ってみて下さい。 なお、ヨーヨー・マはこのアルバムのコンセプトで11月に来日公演を行う予定です。こちらも楽しみですね。 東京公演は11月3日、赤坂のサントリーホールです。どうぞ、足をお運び下さい。