CAROL SLOANE

Whisper Sweet


 昼間の日差しも柔らかくなって、朝晩は少し肌寒くも感じる今日この頃。 そんな深まりつつある秋には申し分のないアルバムが届きました。 それが今回紹介するキャロル・スローンの<ウィスパー・スウィート>です。
 彼女は、以前このコーナーで紹介した事があります。このホームページを始めて丁度一年経つか経たないかの頃、 クリスマス・シーズンにお勧めのアルバムとして紹介したのでした。今回、二回目の登場になったのにはそれなりの訳があります。 それは、あまりにもこの季節に相応しかったからなのです。それだけ素晴らしいアルバムを作ってくれた、と言う訳です。
 彼女を知らない方の為に、少し紹介しましょう。 1937年アメリカはロードアイランド州のプロヴィデンスで生まれた彼女は 1961年にニューポートジャズ祭に出演したのがきっかけでコロンビアレコードと契約し、 ファーストアルバム<アウト・オブ・ザ・ブルー>を世に出します。しかし、この頃、コロンビアレコードでは、 バーブラ・ストライサンドやボブ・ディランを売り出しにいく時で、彼女は不遇の時代を過ごさなければなりませんでした。 70年代に入ると自主制作した<サブウェイ・トークンズ>を発表、ダウンビート誌で評論を書きながら、 ライヴやレコーディングの仕事も徐々にではありますが増えていきました。特に、80年代の日本では、 彼女のリラックスした唄い方が人気を呼んで、数回来日、ロブスター企画というレコード会社で2枚のアルバムを録音しています。 勿論、ライヴハウスにも数多く出演して、あの当時で彼女のファーストアルバムが2万円以上の高値で取引されていたという、 言ってみれば、日本における女性ジャズヴォーカルブームの火付け役だったのかも知れません。その後も質の高いアルバムを発表し、 今回のアルバムへと続くのです。デューク・エリントンを敬愛し、エラ・フィッツジェラルドやカーメン・ マックレイの影響を強く受けていて、アップからスローまで、何でもこなせるオールマイティーの歌手なのです。 それでは紹介していきましょう。

 キャロル・スローンと同じく、バラッドを得意としていたアン・バートン。彼女が得意だった#1。 ミュージカル<フランダースのカーニヴァル>の中で唄われた曲ですが、ひと言ひと言を大切に唄う彼女の姿勢が良く分かります。 ヒューストン・パーソンのテナーサックスが実に効果的な#2。夜の雰囲気で溢れています。 #3は、ポール・ウエストのベースを伴奏にワンコーラスしてからカルテットの伴奏へといく格好良さ。 #4になると、最初のワンコーラスをポール・ボーレンバックのギターだけでしっとりと。間奏のテナーサックスが泣かせます。 途中のフェイクが聴き手を乗せる#5。ミディアムテンポも良いですね。ヴァースから唄う#6。 明かりをもう少し落とした方が良いかも知れませんね。ノーマン・シモンズのピアノも素敵な#7。この曲を聴くと、 映画<トーチソング・トリロジー>の中で使われていたエラの声を想い出します。アカペラで始まる#8。この曲は、 コルトレーンとハートマンでとても有名ですが、女性が唄ってもなかなかですね。タイトル曲#9。リラックスさが伝わってきます。 洒落た曲をいくつも作ったマット・デニス。惜しくも先ごろ亡くなりましたが、#10はかれの代表作です。 珍しくキャロルはヴァースから唄っています。大人の雰囲気ですね。アルバムの最後、#11はミディアムテンポで来ましたね。 まるでライヴの最後みたいです。

 如何でしたか?この季節にうってつけの音楽ですよね。このアルバムの番号は、HCD7113 でハイノートレコーズから出ています。 ジャズ・ヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。なお、以前紹介した彼女のアルバム評は、No.18 を見て下さいね。