LAURA FYGI

AT RONNIE SCOTT'S


 秋ってちょっと不思議な気分がする季節です。思いっきり活動できるかとおもえば、一方で、 夕方になると憂いを誘う雰囲気が訪れます。そんな時、ちょっと酒場で一杯、っていう気分になる事もしばしばです。 そんなあなたにピッタリのアルバムを紹介しましょう。ちょっとハスキーな声が魅力的な、ローラ・フィジーの <アット・ロニー・スコット・クラブ>です。

 彼女を知らない人の為に、ここで、彼女を少し紹介しておきましょう。
 1957年オランダはアムステルダム生まれの彼女は、オランダ人の父とエジプト人の母を持つせいか、 少しエキゾチックな顔立ちをしています。元々はロック系の歌を歌っていた様ですが、 ジャズの魅力に惹かれてジャズを歌い出しました。そして、91年にはデビューアルバム<Introducing〜瞳のささやき>を発表。 同年、結婚して順調なスタートを切りました。翌年には早くもセカンドアルバムを発表。日本でも大きな話題になり、 90年台後半に来日し、その素敵な歌声を披露してくれました。彼女の歌は、ジャズとは言い難いものの、ジャズの香りがする歌、 とでも言いましょうか、大変心地よく、秋の夜長にはピッタリだと思います。ましてや、今回のアルバムは、 ロンドンの有名なジャズクラブ、ロニー・スコットで録音されたと聞けばなおさらです。ライブアルバムは以前にも発表していますが、 そのアルバムは、52人編成のオーケストラをバックに歌った大掛かりなものでした。しかし、今回のサポート役は6人編成のコンボ。 まるで自分がこのクラブで聴いているかの様です。この所、日本ではご無沙汰だっただけに、 久々の彼女をじっくり聴いて頂きたいと思います。それでは紹介していきましょう。

 司会者に紹介され、拍手に迎えられお届けする#1は、滅多に歌われる事のないヴァースから唄われます。 自分の高鳴る心を爆発させる様に唄っていますね。#2を#1の後に唄われるとその気になってしまいます。 この歌の配列はお見事!お酒が進みそうそうです。ナンシー・ウィルソンの十八番の#3。ナンシーはちょっと怖い感じがしますが、 ローラはやさしく囁く様に迫ります。デビューアルバムに入っていた#4。とってもジャズってます。 ベースの伴奏だけでスタートする#5。だけど、歌詞の内容からすると、ちょっと元気過ぎません? 前回のライヴアルバムにも入っていた#6。「大変美しい曲です。」と言う彼女の説明通り、ロマンチックな夜にはピッタリです。 英語〜ポルトガル語〜英語で唄っています。何時もこの#7を聴く度に、英語の早口が羨ましいと思ってしまいます。 ガンガン飛ばしてますね。打って変わって#8はしっとりと。伴奏陣のサポートも素晴らしいですね。お客様と 「誰が今までで一番セクシーだったと思う?」「マリリン・モンローよ!」「その通り。」といったやり取りで唄い出す#9。 とってもセクシーです。もの凄い愛の唄、#10。アズナヴールの作品をフランス語で唄います。秋にピッタリな#11。 これもフランス語で唄われます。本当にピッタリです。コール・ポーターの代表曲#12。ヴァースから唄って、その後、 スウィングして、この悲しい歌をあっさりした物にしています。#13はホーギー・カーマイケルの代表作。 #12が別れ歌だったのを考えると、まあ、都合の良い女だと疑われても仕方ない気がしますが、これは歌の世界です。 勘違いしない様にして下さい。さて、ライヴも大詰めにきました。最後の#14はアップテンポで華やかに。 何度も紹介されてステージは終わります。

 如何でしたか?まるで自分が観客になった様な気がしましたね。えっ?飲み過ぎた?でも、安心して下さい。 ここはライヴハウスではなくて、ご自分のお部屋です。 CDの番号は、038017ー2(輸入盤)でヴァーヴから出ています。 ジャズヴォーカルのコーナーに行ってみて下さい。