森山 良子

the jazz singer


 今更、と思われるでしょう。でも、今回紹介しようと思ったのは、外でもない、 彼女の初めてのジャズ・アルバムが発売になったからなんです。
 1967年のデビュー以来、常にトップの座にいる彼女が、デビュー36年目にして初めて贈るジャズ・ アルバム<ザ・ジャズ・シンガー>。とても良い出来なのです。折しも、クリスマス・シーズンときているから、 正にこのアルバムはピッタリです。

 それでも彼女をまだ知らないという方の為に、少し彼女を紹介しましょう。
 1948年東京生まれの彼女は、音楽一家の中で育ち、高校時代から音楽活動をスタートさせ、1967年1月20日、 <この広い野原いっぱい>でデビューを果たすやいなや、日本のジョーン・バエズともてはやされます。そして、 69年に発売した<禁じられた恋>がミリオンセラーに達する大ヒットとなり、 カレッジフォークシンガーから大人の歌手へと変身していきます。日生劇場でのリサイタルをはじめ、 日本各地で年間数十回ものコンサートをこなしながら、ミュージカルやストレートプレイの舞台にも意欲的に出演、 東京12チャンネル(現TV東京)の番組、<ミエと良子のおしゃべり泥棒>ではパーソナリティーとしての実力を遺憾無く発揮して、 オールマイティーのところを世間にアピールしていきました。1996年の7月には、 ニュー・ヨークのカーネギー・ホールでミシェル・ルグランと共演のリサイタルを開き、冬季オリンピック長野大会では、 開会式でテーマソングを歌います。そして、2001年には、昔から歌ってきた<さとうきび畑>のシングルCDがカップリングの <涙そうそう>と共にヒット。昨年は35周年のリサイタルを開き、そして今年、念願だったジャズアルバムを発表するに至ったのです。 さらに、暮れの紅白歌合戦には親子で出場と、今また<旬>の歌手と言えるのではないでしょうか。それでは紹介していきましょう。

 いきなり驚いた方もいらっしゃるでしょう。そう#1は森山良子本人の歌ではありません。これは、彼女の父上、 日系2世で、日本のジャズトランぺッターの草分け、森山久の貴重な録音なのです。こんなところからも、 彼女のこのアルバムに対する意気込みが伺えますね。ゆったりとした気分になれる#2。ストリングスがとても心地よいですね。 #3は打って変わって超アップテンポでお届けしています。ゲストでテナーサックス奏者のマイケル・ブレッカーが参加していますが、 とても素晴らしいですね。そしてスローな曲が2曲続きます。#4は切ない乙女心?をうまく表現していますし、 #5は、島健のピアノとのデュオ。しっとり聴かせます。ジャズ畑の人がよく取り上げる#6。 彼女はまた違ったアプローチでこの曲に挑戦しています。ミュージカルとは一味違った曲になりました。マイルス・デイヴィスの難曲#7。 ビッグバンド・ジャズの楽しさが十分に伝わってきますね。#8を聴くトあの映画を想い出す人が多いでしょう。 バックのギターとベースがこの曲の良さを一層引き立ってています。ボサノヴァ調の#9。編曲はアントニオ・カルロス・ジョビンの名曲、 <WAVE>からヒントを得ているかも知れません。気持ち良くなってきました。本人には大ヒット曲が無いのに、 いろいろな歌手に取り上げられる事の多いランディ・ニューマン。彼の作品#10。 とても美しい詩が彼女の歌声によって輝きを増しています。こういう歌が本当に得意ですね。日本語で歌われる#11。 サミー・デイヴィス・ジュニアで大変有名な曲ですが、日本語で歌われると少し戸惑います。 彼女とカーネギー・ホールで共演したフランスの大作曲家、ミシェル・ルグランの名曲#12。 彼の作品集を作ると必ず入る曲ですが、彼の作品の中でもとても難しい曲として知られています。彼女は詩の内容を大切に、 切々と歌っています。なんて美しい詩と曲なんでしょうか。先ごろ<LET IT BE...NAKED>が発売になって再び注目を集めているビートルズ。 レノン=マッカートニーのゴールデンコンビの作品#13でこのアルバムは幕を降ろします。とても優しくて、 どこか余韻の残るアルバムの終わりですね。

 如何でしたか?編曲で所々ジャズの名曲が散りばめられているのに気が付きましたか?とってもお洒落でした。 クリスマスシーズンにピッタリですね。二人でしっとり過ごすにはとてもいいアルバムです。えっ?一人の人はどうするかって? このアルバムの良さをしっかり覚えておいて来年に備えましょう!いや、冗談ですよ。アルバムの番号は、 MUCD1098 でドリーミュージックから出ています。J-POP のコーナーに行ってみて下さい。