ENNIO MORRICONE & DULCE MONTES

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 今まで本当に待ちこがれていた人が多かったでしょう。映画音楽の巨匠、 エンリオ・モリコーネがついに今年の6月に来日を果たします。それも、 今回のアルバムを共に作ったポルトガルの新しきファドの女王、 ドゥルス・モンテスを引き連れて。
 今までにもエンリオ・モリコーネの作品は、色々な人によってカバーされてきました。 このページでも紹介したことがあるフランスのミレイユ・マチューやイタリアのミルヴァなど、 それぞれの国を代表する大歌手が彼の曲を集めてひとつのアルバムを作ってきましたが、 今回は、ポルトガルから、今は亡きアマリア・ロドリゲスに変わってファドの女王となっている ドゥルス・モンテスがモリコーネの作品集を作ったのです。それも、全曲、 モリコーネが新しくアレンジし直し、とても素晴らしいアルバムに仕上がっています。
 二人のプロフィールをここで少し紹介しておきましょう。
 エンリオ・モリコーネ。作年、NHKで放送された大河ドラマ<武蔵>の音楽を担当したことで、 今まで彼を知らなかった人達にもその名を知られる様になったモリコーネ。 1928年の11月生まれだといいますから、 今年で76歳になる彼は父親がトランペット奏者だったことから自らもトランペットを勉強し、 それと同時に作曲の勉強にも精進して音楽院を主席で卒業。1961年に映画音楽の世界に進出すると、 64年に出会った映画監督、セルジオ・レオーネとの仕事が次々と大ヒットを飛ばして世界的に有名になります。 その後も。ヴェルトリッチ、デ・シーカ、ポランスキー、デ・パルマ、ゼフィレッリなど、 20世紀を代表する監督の撮った映画に音楽を付けてきたのです。そして、1980年代からは、 室内楽や管弦楽の作曲も行うようになり、その創作意欲は留まる所を知りません。
 一方のドゥルス・モンテスは、1969年の生まれですから、今年で35歳。 音楽院でピアノを専攻していたのですが、ひょんな事から受けたミュージカルのオーディションに合格、 TVや演劇で活躍したのち、91年にヨーロッパで行われてている有名な音楽祭、 ユーロビジョン・コンテストにおいて最優秀歌唱賞を受賞した事から、 彼女の存在は広く知れ渡る事になりました。92年にはデビューアルバム<ルジターナ>を発表、 その後も、ホセ・カレーラスやアンドレア・ボチェッリ、カエターノ・ヴェローゾなどと共演し、 世界にその名を広め続けています。 それでは紹介していきましょう。

 多くの人達に涙を流させた感動の映画<二ュー・シネマ・パラダイス>からの#1。 映画のワンシーンが浮かんできますね。バーブラ・ストレイザンドばりに唄う#2。 映画<ミッション>からですが、あの滝のシーンを思い出す方も多いでしょう。 映像の広がりを音で感じる事ができます。ドゥルスが歌詞を書いた#3。 なかなか素晴らしい歌に仕上がりました。日本未公開の映画<マッダレーナ>のメインテーマ#4。 夫殺しに関するサスペンスらしいのですが、音楽から何となく映画の内容がわかる気がしませんか? セルジオ・レオーネ監督がアメリカで初めてロケをした映画<ウエスタン>の主題歌#5。 前半部分を抑えた分、後半の感動は盛り上がります。このアルバムの為に新たに書かれた新曲#6。 ドゥルスの大先輩、アマリア・ロドリゲスへの賛辞が唄われています。マチューもミルヴァも唄っていた#7。 ここではドゥルスが新たに詩を書いていますが、この詩は、随分前に惜しまれつつ亡くなったブラジルの女性歌手、 エリス・レジーナに捧げています。これもこのアルバムの為の新曲#8。バンドネオンが効果的です。 実在の詩人、フェデリコ・ガルシア・ロルカ。彼にまつわる仮説に基づいた映画の主題歌#9。 何か宗教的な匂いを感じます。人種に対する偏見を思想弾圧を描いた傑作、<死刑台のエレベーター>。 当時、ジョーン・バエズの主題歌が大変な話題になりましたが、今聞いてもその詩は衝撃的です。 ドゥルスも感動的に唄いあげます。心が落ち着く#11。涙が出てきそうな曲ですが、 詩の内容にも涙がこぼれ落ちてしまうでしょう。素晴らしいです。#12もドゥルスが詩を書いていますが、 悲しみをこらえたその詩をちゃんと聞いてください。#13の題名を見て、ハッっとした人は残念でした。 映画<ひまわり>のテーマソングではなく、このアルバムの為に掛かれた新曲です。前を見ていく、 そんな姿勢が感じられる曲ですね。#4と同じく日本未公開映画<マッダレーナ>の中からの曲#14。 何時も思うのですが、殺人とかが絡んだ音楽って、本当に美しいと思いませんか? ボーナストラックとして収められている#15。霧が深く立ち込めている海の向うに何かを何かを見つけた、 そんな感じのする音楽でした。

 如何でしたか?とても素晴らしいアルバムでしたね。マチューやミルヴァだと、気持ちがハイになったのですが、 ドゥルス・モンテスの歌は何故か心が落ち着いてきます。ふ〜〜っとした気持ちになりますね。 アルバムの番号は、UCCS1044 でユニヴァーサル・クラシック&ジャズから出ています。 映画音楽のコンポーザーのコーナーに行ってみて下さい。