「ね・・・ヒツジの絵をかいて」
「きみの国の子どもたちが、いつか旅行するとき、役にたつかもしれないからね。仕事をあとにのばしたからといって、さしつかえないこともあるさ。だけど、バオバブはほうり出しておくと、きっと、とんださいなんになるんだ。ぼくは、なまけものがひとり住んでた星を知っているけどね。その人は、まだ小さいからといって、バオバブの木を3本もほうりっぱなしにしておいたものだから・・・」
「ぼく、いつか、日の入りを四十三度も見たっけ」
「だって・・・かなしいときって、入り日がすきになるものだろ・・・」
「だれかが、なん百万もの星のどれかに咲いている、たった一輪の花がすきだったら、その人は、そのたくさんの星をながめるだけで、しあわせになれるんだ。そして、(ぼくのすきな花が、どこかにある)とおもってるんだ。それで、ヒツジが花をくうのは、その人の星という星が、とつぜん消えてなくなるようなものなんだけど、それもきみは、たいしたことじゃないっていうんだ」
「でも、人に感心されることが、なんで、そうおもしろいの?」
「この男もばかばかしい人なんだろうな。それでも、王さまや、うぬぼれ男や、実業家や呑み助けよりは、ばかばかしくないだろう。ともかく、この男の仕事には、なんか意味がある。街灯に火をつけるのは、星を一つ、よけいにキラキラ指せるようなものだ。でなかったら、花を一つ、ぽっかりと咲かせるようなものだ。点燈夫が街燈を消すと、花もつぼんでしまうし、星も光らなくなる。とてもきれいな仕事だ。きれいだから、ほんとうに役にたつ仕事だ」
「ぼくは、あのひとだけ、友だちにすればよかったなあ。だけど、あのひとの星は、あんまり小さすぎる。ふたり分の場所もない星なんだもの」
「ぼくは、この世に、たった一つという、めずらしい花を持ってるつもりだった。ところが、じつは、あたりまえのバラの花を、一つ持ってるきりだった。あれと、ひざの高さしかない三つの火山 ー火山も一つは、どうかすると、いつまでも火をふかないかもしれないー ぼくはこれじえらい王さまなんかになれないよ・・・」
「そりゃ、きみのせいだよ。ぼくは、きみにちっともわるいことしようとは思わなかった。だけどきみは、ぼくに仲よくしてもらいたがったんだ・・・」
「あんたたち、ぼくのバラの花とは、まるっきりちがうよ。それじゃ、ただ咲いてるだけじゃないか。だあれも、あんたたちと仲よくしなかったし、あんたたちのほうでも、だれとも仲よくしなかったんだからね。ぼくがはじめて出くわした時分のキツネとおんなじさ。あのキツネは、はじめ、十万ものキツネとおんなじだった。だけど、いまじゃ、もう、ぼくの友だちになってるんだから、この世に一ぴきしかいないキツネなんだよ」
「かんじんなことは、目に見えない」
「子どもたちだけが、なにがほしいか、わかってるんだね。きれでできた人形なんかで、ひまつぶしして、その人形を、とてもたいせつにしてるんだ。もし、その人形をとりあげられたら、子どもたちは、泣くんだ・・・」
「死にそうになっても、ひとりでも友だちがいるのは、いいものだよ、ぼくはね、キツネと友だちになれて、ほんとうにうれしいよ・・・」
「みんなは、特急列車に乗りこむけど、いまではもう、なにをさがしてるのか、わからなくなってる。だからみんなは、そわそわしたり、どうどうめぐりなんかしてるんだよ・・・」
「きみの住んでるとこの人たちったら、おなじ一つの庭で、バラの花を五千も作ってるけど、・・・じぶんたちがなにがほしいのか、わからずにいるんだ」
「だけど、目では、なにもみえないよ。心でさがさないとね」
「たいせつなことはね、目に見えないよ・・・」
「花だっておんなじだよ。もし、きみが、どこかの星にある花がすきっだたら、夜、空を見あげるたのしさったらないよ。どの星も、みんな、花でいっぱいだからね」
「水だっておんなじさ。きみがぼくにのませてくれたあの水ったら、車と綱で、組みあげたんで、音楽をきくようだったね・・・。ほら・・・うまい水だったじゃないか」
「夜になったら、星をながめておくれよ。ぼくんちは、とってもちっぽけだから、どこにぼくの星があるのか、きみに見せるわけにはいかないんだ。だけど、そのほうがいいよ。きみは、ぼくの星を、星のうちの、どれか一つだと思ってながめるからね。すると、きみは、どの星も、ながめるのがすきになるよ。星がみんな、きみの友だちになるわけさ。それから、ぼく、きみにおくりものを一つあげる・・・」
「人間はみんな、ちがった目で星を見てるんだ。旅行する人の目から見ると、星は案内者なんだ。ちっぽけな光にくらいにしか思ってない人もいる。学者の人たちのうちには、星をむずかしい問題にしてる人もいる。ぼくのあった実業家なんかは、金貨だと思ってた。だけど、あいての星は、みんな、なんにもいわずだまっている。でも、きみにとっては、星が、ほかの人とはちがったものになるんだ・・・」
「ぼくは、あの星のなかの一つに住むんだ。その一つの星のなかで笑うんだ。だから、きみが夜、空をながめたら、星がみんな笑ってるように見えるだろう。すると、きみだけが、笑い上戸の星を見るわけさ」
「それに、きみは、いまにかなしくなくなったら ーかなしいことなんか、いつまでもつづきゃしないけどねー ぼくと知りあいになってよかったと思うよ。きみは、どんなときにも、ぼくの友だちなんだから、ぼくといっしょになって笑いたくなるよ。そして、たまには、そう、こんなふうに、へやの窓をあけて、ああ、うれしい、と思うこともあるよ・・・。そしたら、きみの友だちたちは、きみが空をみあげながら笑ってるのを見て、びっくりするだろうね。そのときは(そうだよ、ぼくは星を見ると、いつも笑いたくなる)っていうのさ。そしたら、友だちたちは、きみの頭がおかしくなったんじゃないかって思うだろう。するとぼくは、きみにとんだいたずらしたことになるんだね・・・」