エンジン チューン Step 1


 男の子という生き物は不思議なものである。機械イジリが好きでいろんなものを分解したり、組み立てたり。
 車のエンジンはどうだろうか?!動かなくなったらとか、調子が悪くなったら、なんて心配ばかりしていても仕方がない。おかしくなったら元に戻せばいいだけのことさ。
 はじめからハイパワーの車に乗っていると、エンジンをいじってみようなんて思わなかったかもしれない。
 でも、ウチの車はちょいと非力!!(ちょいとどころじゃ無いという声も聞こえてくるが)もう少し元気なエンジンにしてやろうと、ついつい思ってしまうではないか。

*純正排気カムを流用して吸気カムを作る

 私の乗っているロードスターはNA8CのSr.1である。
 ノーマルのバルブタイミングデータはこのようになっている。
IN BTDC 5度
ABDC 48度
EX BBDC 56度
ATDC 14度
 つまり、IN側カムの作用角は 5+180+48=233度
 これに対してEX側カムの作用角は 56+180+14=250度

 自然吸気エンジンはシリンダー内の負圧によって吸気する。ターボのように圧力をかけて放り込むわけではない。ここで、吐き出される排気の負圧を利用して、効率よく吸気をしてやろうというのが、排気バルブが開いているうちに、吸気バルブを開いてやるということ。これがいわゆるオーバーラップである。

 高回転エンジンほど排気から吸気への切り替えが早くなるから、オーバーラップを大きくして効率よい吸気を狙う。その一方で、オーバーラップが大きいにもかかわらず、回転が遅ければ、残った排気が逆に吸気を押し出してしまう方向に作用して、かえって吸気を妨げてしまう。
 したがって、低回転域重視なのか、高回転域重視なのか、ある程度の割り切りが必要になってくる。
とはいっても、250度ぐらいじゃあ、ぜんぜんハイカムとは言えないけどね。レースカーなんて300度も当たり前の世界なんだから。

 ノーマルではオーバーラップは 5+14=19度

 ノーマルEX側カムは作用角が250度あるが、これをIN側に使えないだろうか。
 EX側カムにはカムの位置を検出するためのクランクアングルセンサーを駆動するための溝がついている。その分IN側カムよりも長くなっているのだが、その部分を切り落としてやればIN側に使える。ジャーナル部の径はまったく同じだから、流用も簡単、値段もリーズナブル。

 当時は電動工具はあまり持ってなかったので、カナノコでせっせと切った。さすがにカムシャフトは固い素材で泣きたくなった。カナノコの刃もすぐにダメになった (^^;;
 しかも、本来中空だったカムシャフトは、コストダウンのためか中実になっていた。うへ〜。
 ちなみに少しでも回転時のフリクションが減るように、ひたすら磨いた。カム山表面の黒い皮膜は、もしかすると表面強化の何らかの処理かとも思ったが、触ったらザラッとしていたので、ピカピカになるぐらい磨いてしまった。

 カムのリフトを実測してみる。公称データでは 8.5mm ということになっているが、
 ラッキーなことに? 8.62mm あるではないか。
 リフト量も多い方がいいに決まっている。バルブが大きく突き出すということだから。

 カムにはノックピンがあり、プーリーを介してタイミングベルトによって駆動される。IN側のカムとEX側のカムとではノックピンの位置が異なり、そのまま付けてもうまくはいかないはず。
 まあ、バルブタイミングを中心角(カムがリフターを最大に押し込む位置)で何度に設定するかということにかかってくるのだが。

 カムプーリーはコマ数が46、クランクシャフト2回転でカムシャフトが1回転だから、ひとコマずらすとバルタイが何度ずれるか計算すると 720度/46=15.652度 プーリーに刻まれている、ノックピンのはいるキー溝はIN用とEX用とでは120度ずれているから、コマずらしとキー溝の選択で+−5度の調整もできるはず。

 でもって、適当に調整したら、 IN:105度  EX:110度  という、都合のいい値になってくれた。
(ちゃんとダイヤルゲージで計測した。とっても苦労しながら(笑))

 そうなると、オーバーラップは なんと 35度
 これが吉とでるか凶とでるかは走ってみてからのお楽しみ。

* インプレ

 確かに高回転域での伸びはイイ。その分低回転域でトルクが減ったような気もするが、気になるほどではない。本来ならばシャシダイにかけて数字で比較したいところだが、シャシダイも個体差が大きいので同じ条件じゃあないと意味がないし、それなりに費用もかかるので、今回はパス。

 とりあえず自己満足ってことだけど、結果は Good!!
 Step1としてはまずまず。