パソコンを使った音楽教育について

<著書(編書)紹介>

■『コンピュータ音楽授業実践事例集〜音の出る楽譜でこんなことができた〜1993年(本体2,330円)

小・中学校の音楽の授業で多くの成果をあげている音楽ソフト”Music Pro”の具体的な活用事例。小学校2校、中学校4校の実践が紹介され、初めてパソコンを授業に取り入れた先生に著者がインタビューし、導入のきっかけや苦労話なども披露。指導案、手作り教材、生徒作品なども紹介されていて授業の感触を伝える。

■『パソコン・ミュージックと創作指導〜学校用「ハローミュージック」による実践事例〜1996年(本体2,000円)

パソコンを使った音楽授業の「創作指導」に焦点をしぼり、創作のプロセスにしたがって全国の事例を紹介。小・中・高等学校での活用方法に触れ、その利点と留意点や可能性を探る。上掲書の中学での編曲事例の展開も紹介されている。ハローミュージックの音色、リズムパターン一覧表が付録にある。

いずれも、東亜音楽社発行、音楽之友社発売 小林田鶴子(編・著)

<「総合的な学習の時間」にむけて>

ここでは1999年に「教育音楽小学版」に掲載された文章原稿をもとにパソコンを使った「総合的な学習」へのアプローチについて紹介します。

■パソコンは「総合的」な道具

小中学校へのパソコン設置が増えるにつれ年々その活用は盛んになり、ソフトの方も学校で使いやすいものが多く出ています。特に音楽科では創作分野での活用が盛んで「音の出る五線紙」といった感覚での使い方はかなりオーソドックスになり、様々な実践事例も紹介されています。しかし、もともとパソコンは「マルチメディア」という言葉で表されるように様々なデータ(文字・画像・映像・音)をいっしょに扱うことができ、しかもそれを加工できる環境をもっていますので、パソコン自体が「総合的」な道具だといえるのです。

■ハードの向上により「音」を扱う可能性が広がる

 それと同時に近年ハードの処理能力の向上により、音を扱う環境についても色々な可能性が広がってきたことも「総合的な学習」に使いやすくなってきた一因といえます。たとえば2〜3年前までは良い音で演奏させようと思えば電子楽器など、パソコンとは別の機器を接続して使わなければなりませんでしたが、今ではパソコン本体だけでほぼ電子楽器に近い音が出せるようになりました。また、音楽専用のデータ(MIDI)だけでなくデータ量が大きいサウンドデータも扱いやすくなってきましたので、いわばパソコン一台で電子楽器の役目とテープレコーダの役目ができるという感じになりました。ですから、音の素材を楽音だけでなく環境音に求めることも簡単になったわけです。

■色々な情報を自分なりにまとめる

 文字・画像や音を扱えるという利点を活かして、たとえば、「音の環境マップ」を作ってみることができます。左図は北海道江差町の環境マップですが、町の地図にボタンを付けて(プレゼンテーション用のソフトを使用)絵のボタンを押せば自分で描いた絵が画面に出てきたり、音のボタンを押せばそこで録音した音が聞こえるように作ることができます。地図を使うことで、より場所のイメージがわかりやすくなります。もちろん文章による江差追分等の説明も書くことができます。

■体験をふまえた「表現」のツールとして

 しかし、音楽科のように子どもの感性を育むことが重視されている教科では、単に環境音や伝統音楽の紹介だけに留まったのでは「表現」的な学習としては不十分です。子どもたちが自分自身で聞いたり感じたり体験したことをどう表現するか、そうした自分自身へのフィードバックや表現への創意工夫ができるような使い方をすることが重要なのです。

 左図は海の岩場の音のイメージを絵で表したものですが、ここでは音を視覚的に表現するという創意工夫がみられます。

■教師の得意分野からのアプローチで

 パソコンを使えば様々なアプローチができますが、反面あれもこれもに終わってしまう可能性も否めません。ですから初めて使う場合は教師自身の得意分野から始めるのがいいでしょう。譜面を使ったソフトで町のイメージソングを作ってそれに環境音を加えるというのでも構いません。パソコンを使えば後から他の要素との関連がつけやすくなるので自分の興味あることから取りかかれるのです。子どもたちの個性と同時に先生の個性も表現できる、こうした使い方をしてこそ総合的な学習へのアプローチとなるのです。


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