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2010年1月 追加:2020年02月



 
 東京の西の杉並・荻窪に住んでいる。
 昔は、東京の郊外で富士山がよく見られた地域だ。 

荻窪時代の朝永振一郎は、私の子供の頃の景色を、次のように書いている。

   「学校の門の近くからは富士山がよく見えた。
 春は近くの畑でヒバリが鳴き、夏は屋敷森でせみ取りができた。
 秋はドングリがいっぱい落ちていたし、冬は台地から下へ降りる坂道で雪滑りができた。
 四季おりおりの野の花で彩られ、田の中にはエビガニやタニシがたくさんいた。
 丘の上からは、田んぼとそこを流れる川、そして夜には満月もくっきりと見えた。 」

彼は西田小学校のそばに住んでいて、私はその家の前を通って学校に通っていた。

 

  昔は、西田小学校の台地の西の斜面は麦畑で、その先に富士山が良く見え、坂道の先が荻窪駅からのバス通りだった。
 今は、冬の晴天の日には、中央線の阿佐ヶ谷、高円寺あたりの高架では、電車の窓から真っ白な富士山が望める。

 高いところからは当然だが、路上から昔のように富士山が見えるところが果たしてあるのだろうか?
 気になった。

 1月の大気の状態がいい今の時期に、探索してみようと思い立った。
 富士の絶景の探索ではなく、富士が路上から見える場所の探索だ。


 

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方法

富士山は、冬の快晴の日に、地平線上の丹沢山地の上に白銀の姿を現わす。
地図と富士山コンパスを使って、障害物のない候補地点をいくつか絞り込んでおき、晴天の日に確認に行けばよい、と思いついた。

富士山コンパスとは、常に富士山の方向を矢印で示すようにセットした、携帯用のGPSのこと。
これを候補地の坂上や高台で使うと、曇っていてもその先に富士山があることが分かるので、見通しを妨げる障害物のチェックが出来る。


徒歩や自転車で探し回れる近場でさっそく実験だ。


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左: コンパス  (ゲージから取り外したダイビング用水中コンパス)

 

右: ポケナビ(古いエンペックスの携帯用GPS)

   富士山が矢印方向の89.3キロ先にあることを指している。

 

 

 

 


 この探索で使ったツールは、この他は、双眼鏡とデジカメ、自転車 で全てだ。 
 せめて ズーム付きの一眼レフのデジカメがあれば最高だったが...

 

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 候補地

探索エリアは、家の付近を流れる善福寺川の流域とし、川沿いの高台などを候補に探した。 
富士山が見えたという確認情報と 見えるだろうという独自探索の二本立てで捜した。



 赤色のタグは、路上から富士山を確認できた場所。

 緑色のタグは、富士山を探したが確認出来なかった場所。


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探索結果 


南荻窪一丁目 (図書館前の通り)  Mapion地図

  家から、直線距離で500m程の近場だ。
  丘とか坂とかのイメージが全くない住宅街のなかの通りで、いつも通っていた道なので、教えられた時は吃驚よりショックを受けた。

  場所は、南荻窪図書館前の通りを環八方向に少し行った地点だ。
  ここを教えてくれた人によると、「昔はもっと良く富士山が見えていたのに、」 と手前左の車のお宅の人が、話されていたそうだ。

 

minamiogi01.jpg (248510 バイト)  通りの右手先が図書館

2010.01.17撮影
   

  

minamiogi02.jpg (257335 バイト)  路上からだと印象が弱いので、
 後ろのアパートの外付け階段から。

 

2010.01.24撮影
  

  

minamiogi03.jpg (232118 バイト)  デジタルズームで物足りない。

2010.01.24撮影


bar_happa.gif (1768 バイト)bar_happa.gif (1768 バイト)

南荻窪一丁目 (図書館通りに平行する道) Mapion地図

   
  与謝野晶子の永住の地(※1)そばの、小泉ふとん店内には「与謝野晶子ゆかりのサロン」がある。
  そこの女性と話していたら、いつも散歩する近所の道から富士山が見える、と、ポイントを教えてもらった。
  晶子作詞の近くの桃二小の校歌も、「高くそびゆる富士の嶺は 桃井第二の校庭へ ..」 と、富士山で始まる。

  ※1: このあと整備され、(2012年に) 与謝野公園となった。

  南荻窪図書館前の通りに平行する、北の方の道路で、環八の山梨中央銀行脇から入る道路であった。
  ここからの富士山は正面にそびえており、道路の長い区間で見ることが出来た。


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2010.02.03撮影

 

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2010.02.07撮影

 

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2010.02.07撮影

 

 


五日市街道・尾崎橋  Mapion地図

 尾崎橋は、善福寺川に架かる橋で、五日市街道が通っている。

 橋の両側は、上流も、下流も、善福寺川に沿って長い緑地公園になっている。
 公園を散歩したり、ジョギングする人々が、この尾崎橋で信号待ちをして、横切って行く。

 そのため、散歩の常連さん達には、ここから富士山が見えることはよく知られているようだ。 
 写真を撮ろうとしていると、通りすがりの人が、今日はちょっと弱いね、とか声をかけられた。


 朝、ボンヤリした富士を眺めていたら、自転車に乗った完全防寒の女性が通りかかり、話しを交わした。
 元旦に、車でこの橋を通過した時、正面に富士山が凄く綺麗に見え、感激した、と話してくれた。
 10何年もこの道を走っていたが、初めての経験だったそうだ。
 お正月は、大気中の塵もなく、ミラクル・ウェザーだったな、と思い返した。

 

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2010.01.17撮影
  

  

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2010.01.17撮影
  

  

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2010.01.17撮影

 

 


大宮夕日が丘広場 (郷土博物館の下流) Mapion地図

大宮八幡の少し下流にある、杉並区立郷土博物館は、旧・嵯峨侯爵邸の跡だ。
侯爵の長女浩は、清朝のラストエンペラーで満州国皇帝となった愛新覚羅溥儀の弟・溥傑と結婚し、流転の王妃といわれた。

この付近は新しく緑地公園化され、大宮夕日が丘広場が出来た。


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2010.01.11撮影
  

  

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2010.01.17撮影
  

  

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2010.01.17撮影


 


小高い丘の公園 (夕日が丘広場の隣) Mapion地図

善福寺川に突き出た小高い丘がある。
公園に整備され、樫や松などの数本の木が周囲から目立つ、とても印象的な丘だ。

ここまで来るときはいつも立寄る。丘の先端にはドングリが一杯落ちている。
松の木の手前からの富士山がいい。



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2010.01.17撮影
  

  

daichi01.JPG (202133 バイト)  松ノ木小学校の脇に富士が見える。

 学校の屋上からはもっと見事だろう。

2010.01.17撮影  

  
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2010.01.17撮影


 


梅里二丁目(五日市街道) Mapion地図

五日市街道の尾崎橋よりずっと中野よりの、梅里二丁目と松ノ木3丁目付近は坂道になっている。

この道路の先に富士山が望めるが、交通量も多く、条件はあまり良くない。
この坂道は長く、曇天時のGPSチェックでは適切な撮影位置がつかめなかった。

 

umesato02.JPG (202959 バイト) 松の木バス停からの撮影。

2010.01.26撮影
  

  

umesato03.JPG (253140 バイト)  

2010.01.26撮影

 

 


善福寺池 南東地域 (善福寺一丁目) Mapion地図

 杉並区内の、坂上から富士山が見える有名なポイントだ。
 この坂道の他に、平行して、バス通りと、もう一箇所の3箇所で富士山を確認できた。

 坂上から正面に綺麗に富士山が見える。
 落着いた住宅地の中の静かな道路である。



zenpukuji01.JPG (196576 バイト) クリアな大気の日には綺麗であろう。

 

2010.01.17撮影
  

  

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2010.01.17撮影
  

 



zenpukuji05.JPG (196576 バイト)
こちらはバス通りの坂。
道路が広く、富士の頂も大きく見える

 

2010.01.24撮影
  

  


   

 
 確認出来なかった場所

 高台の崖の上に位置してる家の庭先からは、富士山が望めると思われる場所がいくつかあった。
 昔は富士山が見える名所だった、近衛文麿の別宅・荻外荘の周辺の高台だ。


 神田川流域では、井の頭線の富士見が丘〜久我山あたりをチェックしたが、路上からは無理のようだ。
 南荻窪の例があるので、道路からのビューポイントもまだあるかもしれない。

 


 
今後

 新しい場所、映りの良い写真への変更など、ぺージも手を加えていく予定だ。
 また、杉並区内の、路上から富士山が見える情報があればご連絡いただきたい。

 

 

 

 追加 (2012年10月24日)

 

ある日 田代博さんという方からメールが来て、『 「富士見」の謎 』  という新書を出すが、
杉並区の路上から見える富士 の部分で、このサイトを紹介・引用します。とのことであった。

その連絡で買ったが、一ヶ所、私の知らなかった京王井の頭線沿線のポイントが紹介されていた。
高井戸東3丁目の常盤ヶ丘幼稚園近くの坂道だった。



高井戸東3丁目

井の頭線沿線は、富士見が丘〜三鷹台 までの 線路沿いの高台を中心に探索したが、
もっと近くの 高井戸〜浜田山間 にあったとは気がつかなかった。


2012年10月24日 朝起きると 抜けるような青空だったので、思い出して探索に出かけた。
場所は、線路際の道に下る坂道で、正面に富士山が綺麗に見えていた。

takaido00_mini.jpg (46177 バイト) 右手はゴルフ練習場
    2012.10.24撮影


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 手前に、通過する電車2両の屋根と 連結部上のパンタグラフが見える   2012.10.24撮影

 

坂道をずっとチェックしたが、運悪いことに、井の頭線の架線橋が 全体像の邪魔をしている。
坂道を下り切った線路際に、2階建てアパートがあり、その外階段を少し上がると、富士山は架線橋から離れた。

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      2012.10.24撮影


ここは坂道の他に、その隣のゴルフ練習場上の道路からも、フェンス越しに(京王線を見下ろすように)富士山が見える。


3年近く前に、初めて路上から見える富士山を探索したときは、スナップ用のバカチョンカメラで撮っていた。
今回は、その後 探鳥用に購入したズーム性能の良いコンパクトデジカメで撮った。
さすがに綺麗に撮れていて、他のポイントの写真が可哀そうにも感じられる。

 



 追加2 (2015年01月03日)


阿佐ヶ谷住宅 の解体・造成工事現場


成田東の善福寺川〜丘上にかけての広いエリアには、旧・阿佐ヶ谷住宅が緑豊かに存在していた。
その解体・造成期間中に、高台エリアの工事現場からは、富士山が綺麗に眺められた。

右端の建物は杉並高校
       2015.01.03撮影

昔は、善福寺川沿いの高台からは、富士山が良く見えたということが分かる。
現在は、プラウドシティ阿佐ヶ谷 という近代的なマンション群が建ち並んでいて、富士山は見えない。




 追加3 (2020年02月01日)


久我山 (人見街道と玉川上水が交差するあたり)


玉川上水の手前で、セブンイレブンがあるところ。 Twitter でフォローしてる @hiranny さんからの情報と写真です。

富士山ポイントの探索は、善福寺川、神田川流域が中心で、その先の玉川上水は範囲外だった。
人見街道も、神田川の手前はチェックしたが、その先にポイントがあったとは驚きだった。

杉並区のはずれで三鷹市との境あたり。
  2020.02.01撮影

@hiranny さんの話では、『肉眼だと写真よりもっと大きく感じた』、とのことだった。
素晴らしいポイントのようで、ぜひ行ってみたい。





 


<後記>

自転車で、富士山コンパスを気にしながら、見えそうな場所を求めて走るのは楽しかった。
土地勘のある住宅地であるが、目的が違うと、昔はここは..、など、地形を考えていろいろ想像してしまう。


正月2日にツイッターで
「正月は大気がとても澄み切っている。日差しも冬とは思えないほど強烈だ。クリアな大気と光で、いつもは現れない色が見えている。
善福寺川に沿って歩いていたら、アメックスの高層建物が、くっきりと、とても間近に建っているように見え、驚いた。
ピントの合うメガネに変えて世の中を見まわした感じだ。」
と、つぶやいた。

路上から富士山を望むための障害は、建ち並んでしまった住宅と、大気の状態だ。 

 


 2010年 1月 20日    宇田川 東(awagadu)

 

 リンク 関東の富士見百景 
関東の富士見百景 (マップ)