吹浦・西浜から撮影
鳥海山を水源として多くの川が流れ出ている。その中の月光川(がっこうがわ)は多くの支流を集め、遊佐町の平野部を |
仕事の関係で遊佐町へ行くことになった。
町の特徴をインターネットで調べたら、”水の郷百選”に選ばれていることがわかった。
天の真名井のある淀江町もそうであったので、名水大全などを参考に、いくつかの鳥海山の伏流水が湧出する場所、
それも、深山幽谷ではなく里の暮らしの中ー生活の場で利用されている処を、時間があったら訪ねてみようと思い立った。
今回、遊佐町の遊佐、吹浦、女鹿 の3地域を訪れた。
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遊佐(ゆざ)
遊佐町の中心部を流れる小さな八ツ面川は遊歩道もあり、よく整備されています。 この小川は、周辺からの湧水流入により市街地では珍しいイバラトミヨなどの 希少種が生息しているそうです。 遊歩道のマンホールは 鳥海山と、町の花である鳥海山のみに生育する |
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JR遊佐駅から町中を歩く | ||
遊佐から見る鳥海山はツイン・ピークです。 | 街中を流れる | 街外れ。 田んぼが見える。 |
吹浦(ふくら)
遊佐の北、月光川の河口に臨む港町です。
”奥の細道”を旅した松尾芭蕉一行がここに泊まっています。
芭蕉は元禄2年6月15日(1689年7月31日)、酒田から象潟に向かったものの、途中雨が激しくなったので吹浦に一泊しました。
吹浦駅の駅前広場と家々。鳥海山は雲に隠れている。 | メイン通り (正面の鳥居は鳥海山大物忌神社・吹浦口ノ宮) |
吹浦の家並みの外れに 大清水(おおすず)という湧水があります。
水が汲みやすいように整備されており、柄杓の他に、ホウキ、タワシなどの清掃用具がおかれていました。
湧水の場所は清掃が行き届いていた。
訪ねたときには、地元の人が大ぶりの
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湧水は透明なため、空の水槽に見える。 右上の写真をクリックで拡大し水の存在を確認してください。 |
女鹿(めが)
海岸ギリギリに沿って走る国道7号に平行して、女鹿の集落があります。集落の中央に旧道が通っています。
この女鹿という地名は、秋田の男鹿と対になる名称のため、とても印象に残ります。
奥の細道の曾良の随行日記によると、
「十六日 吹浦を立つ。番所を過ぎると雨降り出す。 一里で女鹿に着く。 是から先は馬も通れないほどの難所。」
と書いてあります。
ここにはアマハゲという奇習が伝わってます。これも男鹿のナマハゲに似た名称・内容です。
集落の中心に、「神泉(かみこ)の水」という、湧水を引いてきた共同の洗い場があります。
女鹿の集落の全景@ ー 象潟方面をー | 女鹿の全景Aー吹浦方面ー 右手は海方向→ | 家と家の間の狭い小道の先は海 ↓ |
山方向に神泉の水(正面の塀の道が旧道) | 水槽の先頭に掲げてあった案内板 | 集落の外れは直ぐに海が迫っている。 |
神泉の水の洗い場は、6つの水槽に仕切られています。
各水槽は、飲料用、すいかなどの冷やし場、野菜や海草洗いの水槽、洗濯用、農機具用、おむつ洗い用、と定められているそうです。
こうして相互の水の汚れを防ぎ、代々大切に使ってきたそうです。
滝の浦
吹浦から行くと女鹿の手前に滝の浦という小さな集落があります。
海岸沿いの狭い帯のような地域に民家が並んでます。
ここにも、湧水を集めた共同の水槽があります。
吹浦からこのあたりにかけては、鳥海山の山麓がまだ続いて 海の中に入り込んでいるのかもしれません。 海中からも湧水が湧き出ている海岸線です。
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名水大全の安形氏の調査によると、 水槽を流れる水量は膨大であった。
水量の豊富さには圧倒された。 ↓ |
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集められた湧水は道下の水路で集落外れの水槽へ ↓ | |
水槽から流れ落ちた水流は道路下から海へ流れ出る。 |
吹浦の砂丘
吹浦の海岸は、月光川(吹浦川)の河口を境に、砂浜が岩礁の浜に変わります。
酒田から吹浦までは庄内砂丘と呼ばれる砂浜が延々と続きます。
そこでは、大海原から砂浜に変わり、砂浜から黒松の防風林に変わり、黒松の防風林を越えると延々と水田が広がり、その末に鳥海山が位置しています。
吹浦から先にかけては、磯浜に変わり、鳥海山麓が海に接近した様子で道路は海の際に沿っています。
今回、宿泊は砂丘の端の西浜という場所で、松の防風林を切り開いた所に建てられた複合施設でした。
翌日は台風一過の快晴でした。
早朝に浜に出て、防波堤を散歩してきました。
防波堤の先から鳥海山を望む |
吹浦港の先には鳥海山が。 砂丘のかなたには、遠く月山の美しい姿が望めました。
台風一過の早朝で、釣果など望めそうもないのに、釣り人が数人いました。
一羽のカモメが背後で見守っています。
帰りには、その釣り人は釣場所を移動していましたが、そのカモメもまた移動して後ろで待機していました。
カモメと釣り人の関係がちょっと気になりました。 (餌付けされているのかな?)
ホテルの窓から浜を望む | 延々と続く砂浜と防風林(青松白砂) | 釣り人の釣果を見守るカモメ君 |
吹浦の牛渡川
月光川が遊佐を経由して吹浦湾に流れます。その間に多くの支流・清流が月光川に合流します。
その合流する支流のまた支流に牛渡川という全長約3キロの小さな川があります。
この川の特徴は、流水のほとんどが湧水であることです。
川の途中で湧水が湧き出ています。そのため、透明度が高く、水温がほぼ一定。
清流で生育するバイカモの群落やカジカ、イバラトミヨなどが生育しているそうです。
これは山奥ではなく人里でのことです。
合流地点から600メートルほど上流に鮭の採卵場があります。
秋になると鮭が大挙遡上してくるそうです。
ここまで吹浦の駅前から歩いても1.5キロほどです。 約20分ほどで採卵場に着いてしまう距離です。
東京へ帰る前にちょっと立ち寄ってみました。
下流の月光川支流への合流地点近く |
田んぼの中を流れる | 鮭の採卵場 |
秋になると、この狭い川幅いっぱいに、鮭の群れが押し寄せてくるそうです。
是非、見てみたい。と思いました。
鮭漁業生産組合の建物 | 捕獲した鮭を入れておく水槽? 奥は孵化場 | 孵化場 |
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田んぼの中を流れていた牛渡川は、鮭の採取場から上流は森の中を流れています。
川底の砂はきれいで水は澄み切っています。 岸辺の低い崖下からは湧水が流れ出ているようです。
孵化場の建物の裏手の山には、丸池様とよばれる湧水で出来た神秘的な池があります。
コバルトブルーの幻想的な池でした。
孵化場の施設のすぐ上流。川幅は狭い。 | 丸池様 |
牛渡川のシンボルのようになっている水草ーバイカモの大群落を期待していましたが、もう少し上流まで
行かないとだめなようで、少々あてが外れてしまいました。
さて、今回の遊佐町行きで一番期待していたのは、吹浦沿岸で取れる岩牡蠣を食べることでした(笑)
鳥海山の伏流水が海底から湧出し、その環境で育った大ぶりの岩牡蠣があり、素潜りで採ったそれは
とてもとても
美味しい、ということは前から知っておりました。 吹浦から象潟にかけて採れる岩牡蠣です。
岩ガキは夏場が旬で、冬場が旬の真ガキとは違う種類です。
今回、遊佐町ということで、岩ガキ、岩ガキと期待してました。
が、残念なことに、岩ガキ漁は8月の半ばで終わっており、食べることは出来ませんでした。 ガッカリ。
鮭の遡上の姿もまだ先のことです。
食の面で山形らしかったのは、芋煮鍋でした。
野外で食べる芋煮はとても美味しかったのですが、芋煮専用の大きな鍋には驚きました。
女性の手でフタの開閉が出来るように工夫されていました。 イベント用に県内で流通しているのでしょうか?
手前のハンドルが気にかかります。 | ナベとフタは分かち難く、セットになっています。 |
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ところで、我が家では、遊佐産のお米をもう20年近く食べていたのでした。
山形産とは聞いていましたが遊佐産とは不覚にも知りませんでした。 JA庄内みどりの遊佐米で、今は”はえぬき”です。
鳥海山の清流の恵みで育った美味しいお米です。
2005年 9月15日 宇田川 東 |
リンク | 遊佐在住の方です。”全然自然”のページで鳥海山の自然を紹介してます。 | ||
酒田在住の方です。牛渡川の鮭の遡上や鮭の孵化、アマハゲなどの写真が紹介されてます。 | |||
名水大全: 国内の「名水」に関するポータルサイト | |||