2009年01月07日


パンダ(動物)

 パンダという動物を知らない人はよもやいないだろうと思う。中国では大熊猫、日本ではジャイアントパンダと称されるが人によってはグレーターパンダと呼ぶ人もいるとかいないとか。

 もとはパンダといえばレッサーパンダのことを指していたのだが、日本ではジャイアントパンダが有名になった折りにこちらがパンダということになっている。とはいえそのレッサーパンダに近い生き物として扱われていたジャイアントパンダだが、近年ではよりクマに近い生き物だとされているようだ。
 このパンダ、中国なりチベットなりの山の中で呑気にササばかり食べている姿が思い浮かぶし、実際かなりそれに近い生活をしているのだが、動物学者にとって実に興味深い二つの特徴を持っているのだ。進化論にもつながるこの特徴、いずれもパンダがもくもくと食べているササの葉にその因を発している。

 パンダには六本の指がある、といえば奇態に感じるだろうし気味悪く思う人がいるかもしれない。もちろんパンダの指は五本しかないのだが、ここでクマの近縁であるというパンダの手を思い浮かべてみて欲しい。横に並んだあの指で、さて彼らはどうやってササを掴んでいるのだろうか。
 実はパンダの腕には、手首のあたりに骨が変形してぴょこんと突き出た突起がある。ちょうど親指のような形をしたこれにササをひっかけて、手のひらとの間にはさんで掴むのだ。これこそパンダの六本目の指の正体なのだが、こんな指があってもササくらいしか掴むことができないのがいかにも健気でパンダらしい。とはいえ苦労してササを掴むための指を手に入れた我らがパンダだが、もう一つ重要な問題があるのだ。

 かつてヨーロッパ人が中国の奥地でパンダを見つけたとき、現地の人は誰もこの生き物が山中で何を食べてどんな暮らしをしているのかを知らなかった。当時の中国ではパンダの毛皮を敷くと幸福になれるという伝説もあって誰も絨毯にしか見ていなかったという事情もあるが、いずれにせよ動物園にこれを連れ帰った研究者、一見してクマに見えるこの生き物に何を与えても何も食べずにどうしても死んでしまったという。内臓のつくりを見ても肉食にしか見えないパンダだが、何かの折りに果物を食べた様子を見てはじめて彼らが雑食性であること、にも関わらず果物程度しか食べないことを発見したということだ。
 たいていの草食動物はいくつもの胃袋や長い腸を持っていて、これでゆっくりと消化するのだが残念なことにパンダの内臓はササを食べるには適していない。ほとんど消化もされずわずかなエネルギーが摂れればいいほうだ。パンダだって本当ならササばかり食べていたくはなかったのだが、何の因果かあたり一面竹林しかない山の中で生きることになったときに仕方がなくササの葉をひたすら多量に食べ続けて、ついにはササを食べるために進化した身体を手に入れることになったのだ。

 そう考えれば呑気さの裏に隠されているパンダの健気さは賞賛に値する。だがWWFが彼らの健気さに敬意を表して、グレーター・パンダの姿をそのロゴに採用したという事実はない。
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