2009年02月17日


ユニコーン(動物)

 日本語では一角獣とも呼ばれている、伝説の生き物ユニコーン。色々なお伽噺に登場したり、スコットランドの紋章にもなったりしているからそれなりに知られている存在だろう。思いつく姿では頭に角が一本はえたウマという感じだが、詳しく調べてみると頭にらせん状の角が一本はえて、ライオンの尾とヤギのあごひげに割れた蹄を持つウマとなっている。一本目立つ角以外にも、ヒゲと尻尾と蹄が馬とは違っているそうだ。
 ところでこのユニコーンの角は毒や病気を治す力があることでも知られている。粉にして飲めば解毒薬になるし、毒の入った食べ物に触れると角の色が変わるそうだ。中世ヨーロッパの教会や貴族は争ってこの角を求めたそうで、商人たちもこの珍品を高値で扱っていたものだ。角が一本、まるまる売られている場合と粉にして売られている場合の二つの例があって、もちろん一本売られるほうが高かった。この手の商売は昔も今も続いていて、現代では痩せ薬という名前をつければ同じ手口が通用する。

 ここから動物の話になるが、二つの方法で売られた角はそれぞれ別の正体を持っていた。一本まるまる売られていた角は有名なイッカククジラの牙。北極圏に暮らしている小型のクジラで、前歯の一本がらせん状に突き出して角のように見えるのだ。ヨーロッパの人はこんな地域に行く船を持っていなかったから、解毒云々は別にしてもたしかに人に誇れる珍品だったに違いない。
 とはいえイッカクの牙がたくさん手に入る筈もなく、だが商売はしたいからたくましい商人たちは別のユニコーンを探すことにした。それが粉にして売られている角であって、こちらの正体はサイの角である。インドや中国から仕入れてきたサイの角をユニコーンの角だといって売った訳だが、あこぎに見えて実はもともと中国ではサイの角は一部の毒に触れると色が変わるということで、王侯が解毒や毒見に使っていたということだ。あるいはサイこそが本当にユニコーンなのかもしれない、確かにサイの蹄は割れているし尻尾もライオンのように先っちょだけ毛がはえている。ところが更に昔の絶滅した動物の中には、この生き物こそユニコーンと呼ばれている生き物がいるのだ。それがケブカサイである。

 原始人が洞窟の壁画に描いていたサイの絵を知っている人もいるだろう。全身を長い毛に覆われた昔のサイで、マンモスなどと同様に絶滅してしまった生き物だ。サイの角は変質した毛でできているから化石には残らないが、氷に閉じ込められたミイラとして見つかった例もある。体長は4から5メートル、体重も3から4トンほどあったというから今のサイより大きい。小型のゾウに迫るくらい大きい。このケブカサイの仲間でエラスモテリウムという、角が一本しかない種類がいるがこれこそユニコーンの正体ということだ。

 さてユニコーンといえば乙女が抱きかかえている絵画なども知られているが、体長5メートルに体重4トンのユニコーンをかかえる乙女はきっとライオンを組み伏せるヘラクレスのように素晴らしい乙女であったに違いない。
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