2009年09月04日
マングース(動物)
鹿児島県、日本の本土で先ごろマングースが捕まったという報道があった。日本では沖縄と奄美大島にしかいないとされていたが、数年前から本土に持ち込まれているのではないかという話が実証されたというわけだ。マングースにも当然種類があって、日本のマングースはエジプトマングース系のジャワマングースという種にあたる。原産地はインドや東南アジアで体長30から40センチメートル、日本では渡瀬庄三郎という動物学者に勧められて1910年に沖縄本島に放されたが、1979年に奄美大島にも放されているということだ。いちおうネズミやハブを駆除するためという名目があったらしく、ハブとマングースの対決は当時の日本で創作された見世物ということになる。
ところでマングースというのは気が荒い。なんせハブに襲いかかるくらいだからとにかく気が荒いのだが、別に彼らはハブに強いわけでもなんでもなく相手が毒蛇だろうがなんだろうが構わず襲うというだけだ。雑食性でなんでも食べるし、イタチに似た姿をしていて狭い場所でも構わず侵入、しかも群れを成している。
件の動物学者は残念なことに動物の立場でものを考えることができなかったらしく、気が荒くてなんでも食べるマングースが南国沖縄や奄美に生息する多種多様な動植物や、家畜や農作物に襲いかかるようになるまでさしたる時間を必要とはしなかった。かつて沖縄の生態系の頂点には猛毒のハブが君臨していたのだが、ハブとマングースが君臨する二頭体制に変わったのだ。確かにお互いで戦うよりも野鳥やネズミ、農家のニワトリでも襲ったほうがよほど腹を満たすことができるだろう。奄美大島といえば天皇陛下も讃した鶏飯料理でも知られている。
こうしてマングースは見世物小屋くらいでしかハブと戦わなくなってしまった。だが群れで行動する生き物はふつう繁殖力が強いから、沖縄でも奄美でもマングースは増える一方になる。なにしろ彼らは生態系の頂点で天敵がいない。有名なヤンバルクイナやアマミノクロウサギといった特別天然記念物たちがマングースのおいしい餌になっていく。
けっきょく2000年代になって環境省ではマングースの駆除を行うことになり、奄美では4年間に12,000匹のマングースが駆除されたというが現在でも成功しているとはいえない。沖縄ではそろそろマングース移入100周年を迎えようとしているし、一部の動物愛護団体からはマングースの捕殺が残酷だとして反対するむきもあるようだが、特定外来生物のマングースはカミツキガメやセアカゴケグモと同ランクの規制対象に挙げられている動物なのだ。
まったくセアカゴケグモを捕殺するなんて残酷でかわいそうだと思う。
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