2009年12月16日


ウニ(動物)

 動物好きにはわりと有名な問題。「口が下にあって肛門が上にある動物はなんですか」というものがあるがその答えはいわゆるウニで、全身にトゲを持つことで有名かつ高級海鮮食品としても知られるあのウニのことだ。海の生き物には奇態な外見をしたものが少なくないが、ご多聞に漏れずウニも相当奇妙な外見とそれにふさわしい奇妙な生態を持っている。寿司屋でも水族館でもその他の場所でも、トゲに覆われたウニを見たことがある人は多いだろうが存外ウニがどういう生き物かを知っている人は多くないようだ。

 ウニはヒトデやナマコと近縁の棘皮動物に属しているが、この動物の身体的な特徴として五放射相称というものがある。読んで字のごとく身体の中心から五方向に☆型に、それぞれ対称的な構造をしているのだが、五本足のヒトデの姿を例に挙げれば分かりやすいだろうか。丸っこいウニもよくよく調べてみると、中心から五方向に相似形の姿をしているのが分かる。
 ウニの全身はカラやトゲで覆われていて、それを動かすことで動き回ることができるようになっている。小さな骨片が集まってできている、石灰質のカラはなかなか頑丈でこのカラにトゲがついて見た目以上に自在に動かすことができる。歩いたり身を守ったり、狭いすきまにトゲを引っかけて突っかえ棒にすることで、引っ張り出されないようにするといった器用な目的にも使う。よく見るとトゲとは別に管足と呼ばれる吸盤のついた足があって、これらを動かしてゆっくりと海底を移動する。

 このウニだが、身体の真下に口があって内臓は体内をらせん状に回りながら真上に肛門があるというつくりになっている。逆立ちしているように見えなくもないが、ウニには頭に該当する部分がない。感覚器は身体のあちこちについているから、どこというなら全身が頭のようなつもりでいるのだろう。口には五本の歯が生えてこれで岩場についた海草をこそぎとって食べている。ウニが多く暮らしている海では海草の芽が育つ前に食べられてしまうから、特に昆布漁場にウニは大敵となるそうだ。ともに高級食材となる昆布とウニは共生できないのである。

 食材としてのウニはカラを割った中にある内臓を食べる訳だが、食べるのは精巣と卵巣でたいていは両方を混ぜたものが出されている。精巣の方が美味なのでそれだけを選り抜いたウニはより高級になるそうだ。受精すれば当然孵化することになるが、生まれたウニはプルテウス幼生と呼ばれるプランクトンの姿になる。一見してウニに見えない生き物だが、四腕期、六腕期、八腕期を経て小さなウニに変態する。名前のとおり数字の数だけ腕がはえているプランクトンの姿だ。
 ちなみにウニの卵は透明で中がよく見えるので、受精卵の分裂や原腸陥入という最初の消化器官ができる様子が観察しやすく、理科の教材にされることも多い。学生時代の記憶をたどってみれば、理科室や生物室になぜかウニがいることに首を傾げた人もいるのではないだろうか。

 ウニといえばたいていの人は知っているだろうし、食卓に上る前の生きている姿を見かける機会だって皆無とまでは言いがたい。にも関わらず、これだけ面白いウニの姿をまるで知らないというのであればそれはいかにも勿体ないことに思えるのだ。なにしろ観察して知ることは科学の基本だが、好奇心の基本でもあるのだから。
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