2009年01月29日


ローマ軍団(歴史)

 ところでローマ軍団は強かった。負けることも多かったが最後には必ず勝っていた。たいていの国はうっかり戦争に負けてしまうとなかなか立ち直ることができず、そのまま衰退するのだがローマはキウシに負けてもサムニウムに負けても、後に戦争の天才ピュロスやハンニバルに負けてもこれに耐えて最後には勝ってしまう。

 ローマ軍団の中核は重装歩兵である。鎧兜に大きな盾、短い剣と投げ槍を手にして整然と居並ぶ兵士の群れだ。その彼らが市民兵であること、これがローマ軍団の特色となっている。エトルリア系の諸都市や裕福なオリエントの王様にとって兵士とは金を出して雇うものだったが、ローマで軍団といえば市民の集まりなのだ。軍団はローマ古来の伝統である百人隊の集まりで、貴族や騎士といった階級の高い人々はより多くの兵士を長い期間参戦させなければならなかった。
 ローマ市民は税金を払わない。代わりに市民権を持つ者は軍団に徴兵されて、執政官が司令官となってこれを指揮することになっている。ようするに一国の首相が戦場で指揮をする、これを指して軍国主義と指摘する解釈ももちろんあるが、少なくとも政治家が指揮をして貴族や金持ちが武器を持つ軍隊は負けそうになっても兵士が逃げない。かのニッコロ・マキアベリは言ったものだ、傭兵に頼むくらいだったら市民に武器を持たせろと。

 では貧乏人や市民権を持たない平民はどうだったか。時代によっても異なるが、貧乏人はかんたんな武器を持って予備兵として参加すればよかった。ローマでは鎧や武器は自前で用意するのだが、貧乏人は棍棒だけでOKとか徴兵される期間も短くていいとか優遇されていたし、平民など実際には戦闘に出ないでいいよという例も多い。金持ちはたくさん軍務につくどころか騎兵の馬まで出す必要もあったから、これを指して彼らは後に騎士階級と呼ばれるようになった。
 もう一つ、例の分割して統治する中でローマの同盟国や属州が提供する兵がある。同盟国はローマと対等の立場で自前の軍を提供すると、総司令官だけはローマ人がつとめたがもちろんその方が強かったから誰も文句はない。属州はローマと対等ではなく、ローマに守っていただく存在だから税金をきちんと納めなければならず、軍団に参加しても補助部隊として扱われるが除隊すればローマ市民権が与えられた。

 その身を戦場に晒す者は一人前の市民である。近年、多国籍軍への出兵を嫌って多額の金銭に代えたことで、感謝されるどころか軽蔑と嘲笑を買っただけの国があった。同盟国は兵を出す、金を出すのは敗者である。
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