2009年02月24日


雷将登場(歴史)

 カルタゴ無敵艦隊を撃破したローマ軍は、続くたびたびの海戦でも勝利を飾ると執政官レグルス率いる軍勢がついに北アフリカ沿岸に上陸した。カルタゴ側もスパルタ人の傭兵隊長クサンティッポスを雇い迎撃を決心、騎兵と象を縦横に駆使するクサンティッポスを相手にローマ軍は壊滅し、わずか2000人が逃げ延びてレグルス自身は捕虜になった。

 気をよくしたカルタゴはクサンティッポスを解任すると逃げるローマ船団を追撃するが、返り討ちにあったどころかシチリアに上陸してのパレルモ攻略戦でも自慢の象兵を塹壕に落とされて完敗してしまう。だがローマ側も前代未聞と呼ばれる海難事故を二度も起こして、数万人の兵士が波間に消えてしまっていた。何しろローマの兵士は鎧を着て船に乗っていたし、巨大な「カラス」も嵐が相手では船のバランスを崩すシロモノでしかない。
 今度こそカルタゴは和睦の好機であろうと判断、レグルスを檻から出すと和平使節としてローマに送る。カルタゴの監視員が見る前でレグルスは元老院に戦争の継続を主張、かつてピュロスの和平を蹴ったローマがカルタゴの和平を受け入れる理由はないということだ。レグルスは捕虜として堂々とカルタゴに戻るが、小さなカゴに詰められると象の蹴鞠にされてしまう。戦争は続けられることになった。

 紀元前247年、カルタゴに新星登場。雷の意味を持つバルカを姓を持つハミルカルである。若いながら商人階級の代表者で、将軍としての才腕にも優れていた。軍勢を任されてシチリアを転戦、正規軍によるゲリラ戦を主体にしてローマに安眠する暇を与えない。気がつけばシチリア全土にハミルカルの軍が出没するほどになっていたが、残念なことにシチリア制圧に大きな意味を持つのは海軍である。制海権はローマが握ったままで、カルタゴ本国はハミルカルに充分な兵士を送れなかった。
 エガディの海戦で自軍の船団がまたも敗北したことを受けてカルタゴはついに戦争続行を断念、ハミルカルは一度も負けることのないままに講和の使者を務めることになる。条件はカルタゴ勢のシチリア完全撤退や賠償金の支払いなどであり、ローマは戦争を優位に進めてはいたが犠牲はひどいものだったし、国庫も空だから主戦論者も声を潜めていた。後に賠償金が上積みされるが金であればカルタゴはいくらでも払える。23年にも渡る第一次ポエニ戦争はこうして終結した。

 だがハミルカルは諦めなかったし彼の誓いを忘れることもなかった。紀元前247年とはそのハミルカルの長子、雷将ハンニバルがこの世に生を受けた年である。
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