2009年03月04日


アルキメデス(偉人)

 古代の有名な数学者にして技術者アルキメデス。叫びながらお風呂を出て裸で走りまわった人として有名だが、お湯を入れずに食べられるカップ麺を発明した人ではない。
 シラクサのアルキメデスという通称で呼ばれている通り、かの名君ヒエロンが治めていた当時のシラクサで技術顧問のようなことをしている。かつてギリシア人によって建設されたシラクサは海運国として豊かな小麦も産する貿易国家となっていたが、巨大な輸送船を浮かべたり航海するための様々な技術を発明したのがアルキメデスだとされている。

 アルキメデスの発明発見はいくつもあるが、有名なアルキメデスの原理では重力と浮力さえつりあえば船は水に沈まなくなることを発見した。金塊と王冠を水に沈めて混ぜものがあることを証明したり、支点さえあれば地球を動かせると豪語して、てこの原理を伝えたことでも有名だ。
 基本的には技術屋だったアルキメデスは巨大輸送船を作るためにそれまで木製だった船を重い銅で補強したり、アルキメデススクリューという揚水用のネジも発明した。ちなみにこの機械は現在でも井戸の汲み上げやその他、洋の東西を問わず世界中で採用されており、ネジやスクリューはこの機械を参考にして後世の人類が発明したといわれている。

 このアルキメデス、ヒエロン死後のシラクサがハンニバル戦争に乗じて反乱を起こした際に「ローマの剣」マルケルスに攻められて命を落としているのだが、数々の発明品でローマ軍を苦しめたという伝説はさすがに疑わしいだろう。伝説によればクレーンで船をひっくりかえしたとか、投石器が雨のように石を降らせたとか、凹面鏡で船を焼いたり城壁にとりつく兵士の目をくらませたとか様々な武勇伝に彩られている。
 だがこんな伝説がある時点でこの戦いが惨敗であったろうことは想像できる。そもそも投石器のような大型機械は作るのも使うのもローマ軍の十八番だったし、城塞都市シラクサはあっけなく陥落しているのだ。本当にクレーンや鏡があったとして一隻二隻の船を困らせることはできたかもしれないが、数万人の軍勢や数十隻の軍船を撃退する新兵器なんてものは漫画であっても存在しない。「私に強力な武器を与えよ、さすればローマ軍を駆逐できるだろう」などと慨嘆くらいはしたかもしれないが、現実的な技術者であればそんな妄言を吐きそうにもないだろう。

 シラクサが陥落した際、文化人でもあったマルケルスは部下にアルキメデスの保護を命じたというがそれと気づかなかった兵士の手で殺されてしまったという。そのときアルキメデスは地面に円周率の計算式を書いていてそれを妨げた兵士を一喝したというが、クレーンや投石器を云々というよりもよほど技術屋のエピソードらしくは聞こえる。いずれにせよアルキメデスは殺されて、その死を惜しんだマルケルスの手で墓が作られた。
 今ではアルキメデスの墓は失われてどこにも残っていないが、この老人であればそんなものよりも自分の発明がネジやスクリューといった形で今でも応用されている、たぶんそのことに満足を覚えていることだろう。
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