2009年02月12日


化石(科学)

 化石といえば子供の頃から、それにあこがれなかった人は少ないのではないかと思う。日本では1968年、当時高校生の鈴木直さんが発見したフタバスズキリュウが火付け役となって恐竜ブームが起こっているし、2008年には小学生の熊谷菜津美さんが新種のエビの化石を発見、どちらも発見者の名前が学名に冠されている。ちなみに前者の学名はフタバサウルス・スズキで後者の学名はホプロパリア・ナツミアエ。鈴木さんは後に古生物の研究者になった。

 とはいえこの化石というのがどういうもので、どんな種類があるかを細かく知っている人はあまり多くはないだろう。まず一般的に知られている恐竜の骨のような化石、あれが骨ではないことは意外に知らない人が多い。化けた石と書かれるように、古い古い生き物の骨の成分が変質して石に置き換わったものがああした化石になっている。何億年もすれば肉や皮はもちろん、ふつうは骨だって分解してなくなってしまうのだ。
 もちろんそうではない例もあって、氷づけのマンモスや琥珀に閉じ込められた昆虫のように当時の姿のまま発見される化石もある。有名なバージェス動物群のように、酸素の少ない泥に埋められたせいで軟体動物がそのまま見つかったという例もある。他には動物の足跡や巣、排泄物など生き物がいた痕跡の化石もあって、フタバスズキリュウにあこがれる人に糞の化石ではものたりないかもしれないが、当時の生き物がどんな場所に暮らして何を食べていたか、貴重な情報を得るためにこうした化石の価値は計り知れない。

 古代の人も化石を発見していたし、それが何であるかという議論も絶えなかった。マンモスの化石の並べ方をまちがえて巨人の化石と思い込んでいた例や、恐竜の化石をドラゴンの骨だと言った話もある。大工の息子を崇める宗教にヨーロッパが毒されていた時代では、ノアの箱舟の頃に洪水で滅んだ生き物が化石になったとか言われていたものだ。これに進化論がぶつかって、議論という名の罵り合いの中で西洋の化石研究は存外遅れていた。では東洋ではどうかといえば、こちらは更にひどいものでたいていは化石が見つかっても魔よけのアクセサリーにされてしまうか、すりつぶして漢方薬にしてしまう。
 ようやくにしても化石研究が進むようになったのは西洋では近代以降、東洋にいたってはここ数十年の話で意外に化石調査、古生物学とは新しい学問なのである。中国では羽毛の生えた恐竜の化石といった新種も多数見つかっていて彼らが爬虫類よりもむしろ鳥に近かったことを示している。

 ちなみに化石なんてテレビや写真だけで実物は目にしたこともない、という人はまさかいないだろう。文明人で化石を目にしたことがない人はいない。何しろ化石燃料、と呼ばれるように石油や石炭、天然ガスもすべて化石なのだからプラスチックは化石製品なのである。

 そういえばこの化石燃料、輸出するとその成分は金に変質するらしい。
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