2009年04月20日
60進数(科学)
数学とか古代史が好きな人であれば、60進数というのは今更の存在だろう。ふだん日常で使っている数字は10進数で、0から9まで数えたら次は10になる。2進数なら0から1まで数えたら次は10、これが60進数になると00から59まで数えたら次は1:00になるという訳だ。この60進数、今でも時計の針に使われているから存外なじみがあると思うが、ではどうしてこんな数字が使われていたのかといえば時代を5000年くらい遡らないといけない。
古代シュメールやバビロニア文明。チグリス川とユーフラテス川の間に栄えた文明で、ちょうどイラクがあるあたりだからアメリカ人以外は知っていた方がいい場所だ。そこで発掘された古代の文献に楔形文字と呼ばれる象形文字が刻まれていて、使われている数字が60進数で記されていたのがもっとも古い発見だとされている。
話は変わるが一日を12で区切る文化文明はけっこう多く、バビロニア以外に古代中国でも十二支が時間や方角を区切るのに使われていた。ちなみに一日を12に分ける例と、昼を12に夜を12の計24に分ける例があるようだ。昼と夜の長さは季節によって違うから、区切られた長さが日によって違うこともある。古代では冬と夏で一時間の長さが違っていたのは有名な話だろう。
太陽がてっぺんにある時間を基準にして、これがぐるぐる回っている場所を見て一日が決まる。そして古代の暦は月の満ち欠けの周期をもとにした太陰暦が主流だったから新月から満月になって新月にもどるまでの約30日が一月、これを12回繰り返すことで約一年が経過する。この12という数字を方角や時間にも当てはめたのが、たぶん12で区切った発端ではなかろうか。
時間や方角を区切るために12という数字を使う。だがご存知の通り人間の手の指は10本あるから、指を折って数えるなら10進法が向いている。そこで12と10を扱うことのできる数字、最小公倍数の60進数であれば指を使って時間や方角を扱うことができるだろう。
これを証明するように先のバビロニアで使っていた楔形文字では、60進数を使いながらも表記は10進数を併用している。0から59までを10進数で書いて、60になると1:00と表記するというデジタル時計と同じ方法だ。例えば73という数字だったら60の桁の楔が1つ、10の桁の楔が1つ、1の桁の楔が3つで
73 = 60×1+10×1+1×3 = 1:13 と表記する訳だ。
余談だがこうした社会では思いのほか割り算が浸透していた。たとえば「1/4の2/3はいくつか」と聞かれたときに分数の掛け算をせずに時計の文字盤を思い浮かべて、「0:15の2/3は0:10だから1/6だな」というように計算できるといった具合だ。ちなみに古代では税金用に10分の1とか12分の1、20分の1という単位がけっこう使われている。
昔も今も分数の計算が苦手な小学生はいるものだが、教科書やノートに数字を並べて教えるよりも前に考えてみることがあるかもしれない。どのくらい前かというと、もちろん5000年くらい前に遡って。
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