2009年05月29日
KAGUYA(科学)
正式名称はSELENE(セレーネ)、宇宙航空研究開発機構JAXAによって打ち上げられた月探査衛星の名称で、「かぐや」はその愛称だが西洋人には愛称のほうが響きがよいとそのまま受け入れられているらしい。主衛星「かぐや」と2機の子衛星「おきな」と「おうな」で構成されているが、かぐや姫を育てた翁と嫗にちなんで名づけられているのがなかなか洒落ている。ちなみにセレーネというのはギリシア神話の月の女神の名前である。
アポロ計画以来最大と呼ばれる探査機は2007年9月14日に打ち上げ、月の周回軌道をぐるぐる回りながらデータの採取や撮影、月軌道における姿勢制御そのものも含めたいくつもの実験が行われている。衛星というのはぐるぐる回りながら地表に近づいていくもので、「かぐや」も今年2009年の6月には月面に落ちることになっている。
これまでの解析によって詳細な月面地図を作成したり、少なくとも地表には露出した氷が存在しなかったことを確認したりといくつもの成果が発表された。ちなみに月で最も高い山は約10,000メートル、海溝(海がないから最深部)は約9,000メートルが測定されたということだ。
NHKが設計、搭載したハイビジョンカメラによって月面や月の裏側、月から見た地球の映像なども撮影されていて2009年2月19日に撮影されたダイヤモンドリングの映像を見た人も多いだろう。地球の影から太陽の輝きが現れる瞬間は、信仰がどうという以上に神秘の存在を感じさせる。
こうした調査研究、宇宙開発に対しては金を使って何をやっているのかという疑問や不満の声が上がるのも珍しいことではないが、フロンティアを放棄することは科学技術の発展を放棄することだ。なぜ新商品なんか出すのか、と文句をいうに等しいのでほとんど意味がない。何より人間というのはけっこうロマンチストが多いから、月に向かい使命を終えて帰ってこない「かぐや」に抱く感慨が思考と活動の源泉になったりするものだ。先日、火星と木製の間に新しく発見された小惑星に「Kaguya」の名を与えることも承認されている。
月軌道を周回する三機の衛星のうち「おきな」は2009年2月12日に落下、「かぐや」も6月頃に月面に下ろす予定で「おうな」はその後も数年は周回を続けるそうだ。JAXAでは後継機となるSELENE-2を計画していて、今度は月面に無人探査車を下ろして岩石のサンプルを持ち帰るつもりでいるという。
さて次の愛称はどうなるだろうかと竹取物語を思い浮かべながら考えなくもない。
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