2009年06月02日


月面二足歩行ロボット(科学)

 2008年に施行された宇宙基本法、それに基づいて宇宙基本計画の策定が進められているのだが、先日その骨子がまとめられた。施策の概要を並べると、

1.人工衛星の開発と利用
2.安全保障のための情報収集衛星の強化
3.外交に貢献する宇宙開発
4.先端的な研究開発
5.宇宙産業の育成
6.人材育成と国民への理解

といった感じになっている。これに伴ってパブリックコメントの募集なども行っていたのだが、その中で妙にコメントが多かったのが月面二足歩行ロボットに対する批判ということだ。
 専門調査会で元宇宙飛行士の毛利氏が提案していた内容に、日本独自の研究として人型ロボットを月面で歩かせようというものがある。これに寄せられた意見として「金をかけて何をしたいか分からない」とか「地球環境と異なる世界では人間型でできることは限られる」といった、批判的なものが目立っていたというのが報道の内容である。もちろんコメントが多くよせられたという時点で、やはり二足歩行ロボットは人に強い印象を与えるものだと思わせてしまうのだが、期待であれ批判であれ数の多さは関係ない。多数決が民主的でないのは世の常識だ。

 ところで月面には人間型の二足歩行が向いていないというのであれば、どんな歩き方が向いているかを考えるには二足歩行の研究は大いに参考になるだろう。何しろ地球環境と異なる世界で車輪や多足歩行が向いているという証拠はどこにもないし、たいていの人間は二足歩行をするものだから、月面を二足歩行で歩いた場合の問題点は人間にとっても参考になるに違いない。そして何より、人間型ロボットの用途が人間の代わりであるなら、人間に活動できない場所で人間のような作業を行わせるにはどうしたらいいかという視点は欠かせないだろう。
 とはいえ日本における二足歩行ロボットの技術は、子供向けテレビアニメーション番組がその原動力になったろうとは言われているし、そんな子供っぽい理由で国の宇宙開発を進めていいのかという意見もあるだろう。だがプラモデルや超合金のロボットで遊んだ子供が、大人になってロボットを作るのであればそれでいいのではないだろうか。何が原因であろうとも、実際にロボットが二本の足で歩いているのだ。

 ライト兄弟が空を飛んだのが1903年でアポロ11号の月面着陸が1969年。現在年齢100歳の方がご幼少だったみぎり、もしも政府が宇宙ロケットを飛ばす計画を発表していたらいったいどんな意見が聞けたであろうか。まさか「金をかけて何をしたいか分からない」とは言わないだろうと思いたい。
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