2009年09月25日


温室効果ガス(科学)

 国連気候変動サミットにて、某国の首相が温室効果ガスの排出量を2020年までに25%削減するとの目標を表明したとのことで結構なことだと思う。国民の総意とやらも得ているし、立派な決意だとは思うがどうも気になるのはたいていのニュースを見ても、削減するのは私たちがやるんですよという国民側の決意があまり見えてこないことだろうか。何しろ25%といえば3分の1も節制しなければならないのだが、ここで4分の1ではないのかという人はどこかで計算を間違えているのではないかと思う。25%削減なら減らす量はおよそ3分の1だ。

 周知のとおり、今回の削減目標は1990年比で25%となっている。そしてこちらも周知のとおり、これまで挙げられていた目標では2012年までに温室効果ガスを6%削減するとなっていたが、2009年現在ではむしろ9%上昇しているというのが実情だ。つまりこの状態で更に高いハードルを設けたのが今回の新しい削減目標であり、今までできてもいなかったことをより高いレベルで実現しますという高い志には多くの国々が称賛を惜しまない。実行すれば有言はいつでも尊いのだ。
 そこで科学というよりも数学、数学というよりも算数の問題だが1990年の温室効果ガス排出量を100として考えてみよう。目標ではこれを2012年までに94にすると息巻いていたが現状では109となっている、そこに2020年の目標を75にすると掲げたのだから、現在の109から75まで下げるためには約31%の温室効果ガス削減が必要になるという訳だ。現状比31%減ならおよそ3分の1の削減だろう。

 ヨーロッパ連合、EUがこの決意に諸手をあげて歓迎したのはご存知だろう。では温室効果ガスの二大排出国ではどうかといえば、米国では政権が替わってから2020年までに20%の削減目標が議会で可決されているが、内容を見ると2005年と比べて20%減となっている。中国では発展途上国への目標設定は考慮すべきといういつもの姿勢を崩していない。

 ところで温室効果ガスは全部で六種類が定められている。二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、それに代替フロン等三種を合わせて六種類だ。二酸化炭素は石炭や石油や木や紙を燃やしたり、ビールや炭酸飲料のフタを開ければ放出される。メタンは牛のゲップや家畜のフンから立ちのぼるが温室効果は二酸化炭素の21倍、一酸化二窒素は一部の産業で発生して温室効果は310倍だ。
 では代替フロンというのは何かといえば、オゾンホールの原因になるといって生産禁止になったあのフロンガスに代わって製造されるようになった物質だ。オゾン層は破壊しにくいが温室効果は二酸化炭素の数万倍に達するとも言われており環境に優しいどころではない。フロンガスに代わって使われているのだからもちろん用途も一緒で、冷蔵庫やエアコンの冷媒に使われていたりスプレー缶に使われたりしている点でも変わらない。

 原子力発電所を推奨してビールや炭酸飲料は飲まない、自動車には乗らず電車や電気自動車に乗り換えて牛や家畜は屠殺、スプレー缶は使わずに冷房は扇風機やウチワで代替する。さてどの程度実施すれば3分の1の数値目標が達成できるものか、検討すべきは総意を示した国民だがビールかけで祝勝会などやっている様子を見ればさほど期待はできそうにない。
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