2011年09月18日
コンピュータ(科学)
昨今では当たり前の言葉として定着しているコンピュータだが、もちろん当初はそうでもなく日本であれば普及しだした当初はマイコンと呼ばれていた。マイクロコンピュータの略で、だいたいは家電製品の中にコンピュータが組み込まれている程度で、コマーシャルでもマイコン内臓炊飯器といった呼び方をしていたものだ。これ以外に使われていたのがパソコンやオフコンにファミコンといったあたりだろうか。
これだけ当たり前のようにコンピュータが普及してしまうとコンピュータとはいったい何だろうか、という疑問が今更のように沸いてくる。辞書を見れば「計算機。特に、電子計算機。トランジスター・IC・LSIなどの電子回路を用いて、高速度で計算やデータ処理、また、情報の記憶保存・検索などができる装置。1946年に米国で開発されたENIAC(エニアック)が最初」などと書かれている。
基本的にコンピュータというのは事前に定められたプログラムに従って計算や演算を行う機械のことを指す。ところでここが勘違いをされやすいのだが、プログラムというのは難しい言葉や記号を使って書かれている長ったらしいリストだけを指しているのではない。入力した条件に従って、一定の結果を出力する仕組み自体を指してプログラムというのだ。有名なアンティキティラの歯車はハンドルをくるくるまわすことで日時や方角から月の満ち欠けまで知ることができるというプログラムを内蔵した、2000年以上も昔のアナログコンピュータだった。もちろんENIACが生まれるより遥か以前のことである。
とはいえ一般的にコンピュータといえば電子計算機のことを指している。先ほどの辞書では世界最初と書かれているENIACだが、実際にはこれより早い1942年にも「アタナソフさんとベリーさんのコンピュータ」の略称であるABCが開発されていた。ちなみにABCは机一つ分、ENIACは体育館の床一面に収まるくらいのサイズだったという。当時は第二次世界大戦のさなかであり、各国でこうした機械が作られていたが大砲を飛ばす角度を計算したり、暗号を解読するためといった軍事目的に使われていたのは有名な話だろう。
ではこうした電子計算機でどうやって計算を行っていたかといえば、計算したい内容に従って配線をつなぎかえる必要があった。例えばAとBに数字を入れたら、それを足した結果がCに出るという配線をつないでからAとBに数字を入れてやる。この配線のつなぎかたこそが初期の電子計算機におけるプログラムという訳で、いささか迂遠に見えるが実はこれこそが画期的で重要なことなのである。
ここで話をアンティキティラの歯車へと引き戻す。古代人の叡智と技術力を想起させる見事な発明だが、これを地中海ではなく南アフリカ喜望峰周辺で使うことになったとすれば、見える星の位置や角度を修正するためにほとんど最初から作り直さなければならないだろう。こうしたアナログコンピュータは計算する内容や条件が変わると作り直すのが難しいという欠点があるが、配線をつなぎかえるだけで別の計算ができるABCやENIACならよほど便利になる。現代人の叡智と技術も決して古代に劣っている訳ではない。
コンピュータはプログラムに従って計算や演算を行う機械だから電気を使っているかどうかは関係ない。ダイヤルや歯車を使って計算を行うアンティキティラの歯車は古代世界で発明されたアナログコンピュータだった。では古代に発明されたデジタルコンピュータは何かといえば、区切られた玉によって数字を表すことができて一定の条件を入力すると計算結果をはじきだすことができる、今から4000年ほど昔の古代バビロニアを筆頭に、世界中の文明で同様の品が生み出された「そろばん」がそうであろう。コンピュータという汎用的で便利な道具は、存外に昔から人類が発明して利用していたという訳だ。
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