2013年06月02日


風力発電にまつわる不謹慎な話

 人間というものは安全よりも安心を求めてしまうもので、震災で事故のあった原子力発電を恐がっているくせに震災で死人が出た火力発電に依存して平然としている。とはいえ太陽光などいわゆる再生可能なエネルギーによる発電が別に悪いというわけではなく、もちろん太陽光パネルも劣化すれば困ったゴミになるのだがガスを燃やしても核燃料を反応させてもゴミが出るという事情は変わらない。
 ことに自然エネルギーを利用する手法であれば設置場所の自然に依存するのは今更で、陽光が照りつける荒野であれば太陽光どころか太陽熱発電を用いている例もあるし、村々をダム湖に沈めた?水力発電も地域の事情にそった方法とはいえる。そんな中で、これは日本に向いていないとしか思えないのが悪名高い?風力発電機のプロペラたちだ。

 一般に発電のシステムはほぼ唯一の例外たる太陽光を除けばタービンをまわして磁石を回転させて電気を起こすというもので、技術的には自転車のライトが灯るしくみと変わらない。原子力発電であれば燃料のかたまりを水にほうりこんで、ぐつぐつ煮立った水蒸気でタービンをまわしているだけなのだ。だから水力であれば流れる水で、風力であれば風でプロペラをまわしてタービンを回転させればよい。一度設置すればタダで発電し続けてくれるから、発電量はおよばずともたくさん作れば多少は補うことができるだろう。

 と、ここまで書いただけで多くの無理や問題があることに気がつかない人がいるらしい。まず当時から問題視されていたのが騒音で、米軍基地の騒音で悩まされる人々の心配をするふりをしているくせに、巨大なプロペラをたくさん作って騒音がひどくなることには無頓着をよそおっている。ことに騒音とはデジベルで測れるものではないから、数キロメートル遠くに暮らしている家族が眠れないといっても「基準値以下です」と済ませることができるのだ。
 
 そして何より問題なのが、タダなのはあくまで風であってプロペラではないということ。風に吹かれてまわり続けるプロペラは放置すれば壊れるし修理にはカネがかかるのだ。雨後のタケノコよろしく建てたはいいものの、維持費がかかる上に思ったほどの発電もしてくれず、直すことも壊すこともできず放置すればプロペラや支柱が折れて事故につながるというていたらくが現状になっている。たとえば風力保安員が見張ってくれるはずもなく、たとえば風力発電機メーカーがフル稼働でメンテナンスをしてくれるわけもなく、直そうとしても「なんでタダの風力発電に税金が必要なんだ」と拒否されるのがオチだろう。
 これが日本に風力発電機が10台もない時節であればそんな事故もなかったが、2000台にも届こうかとなれば気の毒なほどに止まったり折れたり放置されたりもしてしまう。そもそも風車というものはいつも同じ方角から風が吹いてくれる地域に建てるもので、季節によって北から南から風が吹き、ハリケーンに勝る台風が毎年訪れるような土地では壊れるのも早いのだ。藤吉郎が殿様に進言すれば「猿よおまえは阿呆か」とあしらわれるような代物なのである。

 とはいえ原発は近隣の水温を上昇させて海産物が元気に育ってくれる一方で、風力は貴重な猛禽や渡り鳥がぶつかっていたましい事故を起こすことがあるから気に入らない、というのが自分の主張だからたぶん説得力はないよね。
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