2009年04月13日


デモンストレーション(社会)

 タイで行われる予定だったASEAN(東南アジア諸国連合)会合がデモが原因で中止になった。会場のホテルにデモ隊が乱入、ガラスを突き破って人々が押し寄せる様子が映像でも配信されている。ちなみにデモというのはデモンストレーションの略で、一般にはある特定の主張を持つ人々が集会を開いたり行進したりする示威行為のことを指している。そこで二つほどの単語を国語辞典で引いてみよう。

じい・しい【示威】
多数の者が意思・要求を通そうと、集団で威力を示すこと。また、その集会や行進。デモンストレーション。

ぼう‐どう【暴動】
群集が暴徒となって騒動を起こし、社会の安寧を乱すこと。

 日本語とタイ語とでは微妙に意味が違うのかもしれないが、どうも暴動のことをデモと呼んでいるように思えなくもない。

 ところでタイというのは政変がとても多い国だ。1932年に立憲君主制が始まってから1933年には軍事政権化、未遂も含めて軍人によるクーデターが10回くらい続くと1973年に民主化を求めた学生が警官隊&軍隊と衝突、ようやく総選挙が実現したが1976年にはまたまた軍事政権に戻ってしまう。それから5回くらいクーデターが続いて1992年に再び民政に移行、これが2006年のクーデターで崩壊して2008年1月にもう一回民政復帰した、その後の情勢は覚えている人も多いだろう。
 タクシン派の政権に反対したPADという市民団体が首相府や空港を占拠したのが2008年11月、これも暴動ではなくてデモという名目だったがソムチャイ首相が失脚すると反タクシン派のアピシット政権が誕生する。基本的にタイの歴史は軍人vs学生運動の対決で、軍部が支持するアピシット政権に反対したデモ隊がASEAN会場に突入しました、というのが今回の顛末だ。確かに許可なく首相府や空港を占拠してもいいんだったら、許可なくASEAN会場を行進したっていいということなんだろう。日程を何度も延期された挙げ句、当日になって会合を中止された各国の人々には気の毒だがこれも民主的なデモンストレーションの結実である。

 そういえば昨年の空港占拠事件が起きた際に、手段はともかくタイの人々の政治意識と行動力はたいしたもんだという意見をちらほら見かけたことがある。ところでもう一つだけ、国語辞典を引いてみることにしよう。

ぐんしゅう‐しんり【群集心理】
群集の中に生まれる特殊な心理状態。一般に判断力や理性的な思考が低下して興奮性が高まり、衝動的で無責任的な言動をとる傾向になる。

 わずか80年足らずの間に20回を越える政変が起きている「微笑みの国」タイ王国。自分たちのリーダーが何であるかを考えない人々は空港占拠の際にも楽しかったと笑っていたが、ASEAN会合中止についても手段はともかくタイの人々の政治意識と行動力はまったくたいしたものである。
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