2009年04月28日


パンデミック(社会)

 単にセキュリティというよりも、リスクマネジメントやBCPで扱われることが多いリスクの一つがパンデミック、日本語で説明するなら伝染病や感染症が世界的に流行することを指している。世界保健機関WHOでは日本時間で2009年の4月28日に、豚インフルエンザの影響によるパンデミックレベルをフェーズ3から4に引き上げることを決定した。ちなみにこのフェーズは6つに分かれていてざっくり説明すると、

1.ヒトに感染するリスクは低い
2.ヒトへの感染はないが新しいウイルスが見つかった
3.ヒトへの感染があったが、ヒトからヒトへの感染はほとんどない
4.ヒトからヒトへの感染が見つかった
5.ヒトからヒトへのかなりの感染が出ている
6.ヒトからヒトへの効率よい感染ルートが確立している

となっている。12がグリーンで34がイエロー、5がオレンジで6がレッドというのは字が読めない某国人にも向けたアラートの表示方法だ。日本ではこれを受けて感染ルートの封鎖ではなく病気の軽減措置を講じること、そのため国境封鎖や渡航禁止などは行わないこと、ワクチンの生産を進めることなどを上げている。ただし、感染ルートを封鎖しないというのはすでに各国に感染者が確認されているからなので注意は必要だ。

 パンデミックといえば中世ヨーロッパで流行したペスト、近現代ではコレラやインフルエンザなどが有名だろう。流行が拡大すれば医療機関の対応が間に合わなくなったり、社会機能に不全が出たりと深刻な影響も出かねないから予防や早期の対策が重要なのは当然だ。企業であればBCP、事業継続計画の中でこうしたパンデミックが発生した際のルールを決めているところもあって、社内への注意喚起を行う例もあれば渡航者の帰国を命じる例もある。このあたりはそれぞれの事情と影響によってルールが異なっている。
 今回の騒動であれば、日本においてはインフルエンザが流行する危険を考慮した上で気をつけて生活をしてくださいということだが特別変わったことをする必要はない。マスクをして手洗いとうがいを徹底する、具合の悪い人は外出せずに休む、特に子供がいる場合はこれを徹底させるといったものだ。ことに多くの人が忘れがちなのが具合が悪ければ外出するなというもので、別にあなたのことを心配しているのではなくて感染者が出歩いたら病気が拡大してしまうからである。

 ところで中世だろうが近現代だろうがパンデミックには主に二つの原因がある。一つは地域や国を超えた交流の拡大、もう一つは病気に対する基本的な無知によるものだ。例えば中世ヨーロッパでは十字軍ほかの遠征で人々がペストの病原体を故郷に持ち帰り、同時に彼らは生まれてから死ぬまで身体を洗わず洗濯もしない上に病気は祈りで治すものだと考えていた。
 現代では飛行機や船の発展によって交流が増えたのはもちろんだが、無知についてもさして改善されてはいない。豚インフルエンザに関する現地メキシコの報道では人々にマスクを配っている姿が映されていたが、使い方を知らないせいか苦しくないよう口だけおおって鼻を開けて平然としている人も見受けられたし、マスクどころか全身に防護服を着込んでいる人の姿も見ることができた。

 まったく無知とは病よりもおそるべきものではあるが、どこぞの国でも豚肉を食べても大丈夫でしょうかという問い合わせが殺到したりしているのだからあまりえらそうなことは言えないだろう。とりあえずインフルエンザの有無に関わらず、豚肉は生で食べないようにしなさい。
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