2009年05月01日


世界地図(社会)

 地図というものは地形や地勢だけではなく、世界の概念を表していることはTO地図を見ても分かるだろう。そこで世界地図を頭に浮かべてみてほしい。たぶん学生時代に社会科の地図帳で見たものを浮かべる人が多いだろうが、それはどんな姿をしているだろうか。
 日本であればたいてい日本を中心においた地図が浮かぶ。もちろんそれで何も不思議はない、日本にとっての世界の概念とは日本と周辺地域や世界との関係だからだ。つまり国際的な視点があるからこそ日本を中心におくことができる。

 問題はその図法だが、一昔前であれば日本で描かれる世界地図はメルカトル図法を使っていた。東西南北が90度の直角で交わっていて、グリーンランドや南極大陸が異様に大きくなるアレだ。これは日本が海洋国家だったからで、極点周辺を除く海域を船で行き来するにはこの地図はなかなか具合がいい。
 最近の地図帳ではヴィンケル図法がよく使われている。メルカトル図法に比べて面積や形のひずみがぐっと小さくなるので、より正確っぽい世界の姿を表すことができるようになる。正確とはいえないが、全世界をより平等に見ることができる現実的な地図という訳だ。

 ところが地図帳を数枚めくってみれば分かるのだが、世界の軍事情勢を見るときにはこんな地図は使われず、たいてい北極海周辺を中心にした正距方位図法や平射方位図法が使われている。中心からの方位や位置関係が分かりやすくなる、円形の地図だ。地図上ではたいてい某大国のミサイル基地が描かれているが、これを見れば海を挟んで向かい合うホットドッグ国とピロシキ国の間にメープル国が横たわっていて、国境沿いにずらりとミサイルが並んでいる様子が分かるだろう。ついでに一部の国や地域が沈まない空母と呼ばれていたり、トルコがものすごく重視される理由もよく分かる。
 古代プトレマイオスの世界地図では世界の中心は地中海だった。中世TO地図の中心はもちろんエルサレムである。大航海時代を経て植民地帝国時代には大西洋が中心となるが、冷戦時代を経た現在では北極海が世界の中心になっている。現在でもいくつかの国がこの海を欲しがる理由はなにも海底資源のためだけではないのだが、そう言っておいたほうが資本主義社会とやらでは通りがいい。

 どうやら世界にはあたらしいTO地図が必要になっているようだ。
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