2009年06月12日


世襲政治家(社会)

 近代民主政治において政治家の世襲はいけないことらしい。もっともな話だと思うがさて日本という国であれば、世襲は天皇陛下だけだし皇族の方々は政治家ではないから何の問題もない筈だ。奇態に思って耳を傾けてみると、どうやら親の選挙区から子が立候補をしてはイカンということで、つまり親が政治家なら子は政治家を世襲してはイカンというのではなく親が立候補した選挙区を子が世襲してはイカンということだ。
 とはいえ選挙区というのは別に世襲されるものではない。ナントカ県の第一区で当選した親の息子に当選枠が与えられるなんて聞いたこともないが、世の中には建前と本音というものがある。民主主義だから世襲政治家はいけませんというのは所詮は建前だが、では本音はいったい何だろうか。

 日本という国ではサンバンと呼ばれるものが選挙に必要だとされていて、支持団体を意味する地盤(ジバン)、知名度を意味する看板(カンバン)、選挙資金を意味する鞄(カバン)の三つを指すそうだ。つまり親が政治家の人が同じ選挙区で立候補をすると、カネやコネで有利になるからやめてくれということである。これなら分かりやすい。
 親と同じ選挙区で立候補する人はカネやコネで有利だから不公平だと、すなおに言ってくれたほうが個人的には分かりやすいのだがなかなかそうもいかないのだろう。選挙にはカネやコネが必要なんですと、誰でも知っていることを声高に叫ぶのは何故か気が引けるらしい。とはいえ選挙資金もなく後援者もいませんという人に、人柄が良さそうとか面白いとかインターネットで話題だから投票するなんてしていたらアジテーターやデマゴーグの思うままではないだろうかと思わなくもないような気もしないでもない。

 こんな事情もあって世襲政治家という言葉を考えついたのだろうが、本音を曖昧にしてしまったせいで本音で話すことができないのは気の毒というしかない。世襲政治家はいけないからやめましょう、という建前では市民が選挙で投票しなければいいだけではないか、と建前で返されてしまうとなかなか反論がしにくくなってしまうからだ。
 親や企業のカネやコネで票をもらっている政治家は卑怯だ!と言ってくれればじゃあどうしようかと考えることくらいはできる。例えば民主主義の象徴、古代アテネでやっていたように選挙はすべて廃止にして政治家は抽選で選ぶのだ。その人たちが議会をつくって国を運営する、政治家の息子でも魚屋のおじさんでも井戸端会議のおばさんでも、スポーツ選手でも宗教家でも芸人でもプロレスラーでもチャンスは平等に巡ってくるだろう。

 親が有名な力士や野球選手で、その息子が親と同じ部屋とか球団に所属するのは個人的には歓迎したい。世間からは世襲相撲取りとか世襲野球選手なんて呼ばれてしまうかもしれないが、才能ではなく親の体験や訓練を子が学んでいる可能性は増える訳だから過剰でなければ期待くらいはしてみたくなるものだ。
 もっとも彼らを指して世襲相撲取りとか世襲野球選手はいけないという話はとんと聞いたことがない。能がなければ選ばれなくなるだけである。
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