2009年08月04日


日本語の乱れ(社会)

 有識者を自認する人が曰く、日本語の乱れが著しいと嘆く声を聞くことがある。一生懸命とか怒り心頭に達するとか、日本語にはそんな用法はなかったと言われればはいそうですねと答えておくのがいいだろう。残念ながら日本人は昔の日本人の伝統に忠実に、麻呂は何々でおじゃるといった話し方をさっぱりしなくなってしまった。

 こうした言葉の用法が変わっていく理由は多々あるだろうが、地域で異なっていた方言が統一されていく場合や地位や階級によって用いられていた言葉が不要になる例、日常で慣用的に用いられていた符号が言葉として昇格する例など現実に則して用いられる場合が多い。
 例えば国語辞典にも載っている単語に「セメダイン」というものがあるが、これはセメダイン社が販売している接着剤の商標名で、語源はイギリスの接着剤メンダインを攻めだせというものだった。商品名がふつうに使われているうちに慣用句になって一般名詞に変わっているのだから、実に嘆かわしい日本語の乱れというべきだろう。同様に宅急便という言葉も商標名なので正しく宅配便というべきだ。

 これが漢字となれば口語と文語の違い、言葉で伝える場合と文字で伝える場合とを考慮して本来の用法を使わない例もある。高校野球の中継などを聞いていると、私立も市立もどちらもシリツとは呼ばずにワタクシリツとかイチリツとか呼んでいる、日本語の乱れを国営放送局が自ら助長しているのである。もちろんシリツと呼ばれると視聴者がどちらか分からないなどということは、日本語の正しさに比べてささいな問題でしかない。人事と書くとジンジかヒトゴトか分からないので、他人事という新しい言葉を捏造したのも日本語の祖先に対してなんと申し開きをするつもりだろうか。
 ところで古代の人が残した言葉にこんなものがある。あなたは正しい言葉を使うべきだが、同時にあなたは彼が間違えた言葉を指摘してはならないというものだ。自分の言葉は正しく伝えたほうがいいが、言葉の間違いごときを指摘したせいで言いたいことが言えなくなれば、そんなものは会話ではなくなってしまう。

 文化審議会の漢字小委員会が常用漢字の見直しを進めているということだが、教育現場とかいうところにいる人たちから「淫」「呪」「艶」「賭」といった漢字は不適切だという指摘を受けたらしい。常用漢字から「賭」という漢字を抹消すれば世の中から賭け事がなくなるということかもしれないが、であればそれは学問よりも呪術の世界だから教育現場よりも占い師に意見を聞くべきだろう。所詮は他人事だ。
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