2009年10月23日
薬用石鹸(社会)
石鹸でも歯磨き粉でもいいのだが、薬用なんとかと書かれた商品を目にすることが多い。最近では薬は昔ながらの薬屋とか薬売りからではなく、ディスカウントストアやコンビニエンスストアでも手に入るようになったから昔よりも薬を目にする機会が多くなった。もちろんそれがいいとも悪いともいうつもりはないのだが、そうした商品の並んだ棚や、あるいは広告を見れば今度は医薬品とか医薬部外品といった単語が目に入る。
そこで薬事法を見てみると医薬品と医薬部外品についてはきちんと定義されている。要約すると医薬品というのは病気の診断や治療または予防に使うもので、医薬部外品を除くとある。では医薬部外品とは何だといえばこれがちと分かりにくく、いくつか用途が並べられた上でかつ効果が緩和なものとある。用途というのは不快感の防止や口臭や体臭の防止、あせもやただれ等の防止、虫よけといった類だが正直ピンと来ない。
過日2009年の6月に薬事法が改正されて、指定医薬部外品というものができた。これは医薬品ではなくて医薬部外品ですよというもので、わりと具体的に列挙されているから堅苦しい定義よりもこちらを見たほうが実用的だろう。以下に準ずるもので厚生労働大臣が指定するものが医薬部外品となるそうだ。
ビタミン剤、カルシウム剤、うがい薬、殺菌消毒薬
消化薬、整腸薬、鼻づまり改善薬
殺虫剤・殺鼠剤、虫除け剤、歯磨、口中清涼剤、制汗剤 などなど
ようするに病気や怪我の治療や予防に使う薬が医薬品で、栄養を取ったり殺菌消毒を行うものが医薬部外品といった感じで間違いなさそうだ。もちろん石鹸は殺菌消毒を行う、医薬部外品に類することになる。
そこで薬用はといえば実はこの言葉には定義がないのだが、医薬部外品のことを薬用と称することがある。だから薬用なんとかと書かれた商品は基本的にすべて医薬部外品と書かれている筈だが、部外品と書くとどうも効果がないように誤解されかねないからわざわざ薬用と銘打っている訳だ。例えば肌荒れを防ぐ化粧品を医薬部外化粧品と書くと流石に効き目がなさそうだから薬用化粧品と書く。薬用クリームなんかも同じ類だろう。
では薬用石鹸や薬用歯磨き粉はどうだろうか。石鹸や歯磨き粉はもともと医薬部外品だから本来は薬用石鹸などと名乗る必要はない、なにしろ石鹸はすべて薬用石鹸だし歯磨き粉はすべて薬用歯磨き粉なのだ。単にそう書いたほうがありがたみがあるから薬用石鹸を名乗っているだけで、商売としてはちと不誠実に思えなくもない。
とはいえ好意的に受け取るならウチの石鹸は効能に自信があります、という商品に薬用石鹸をうたうことで薬効をアピールしている側面もあるだろう。例えば学校の水道にぶら下がっているレモン石鹸よりは薬効があるイメージがある、もちろんレモン石鹸も立派な石鹸だが長持ちするように溶けにくくなっている。溶けにくいからしっかり洗わないと効果が薄い、だがどの石鹸でもしっかり洗わなければ効果は薄いに決まっている。
薬用と書いてあるから買うのでは名前に踊らされているだけだが、薬用と書いてあるから買わないとなればこれも本末転倒ではないかと思う。結局は効用を見て用途に合った商品を買えばそれでいいのだが、それこそどんな法律に書かれずとも誰でもやっていることだろう。
とはいえ法律に書かれていようといまいと、石鹸で手を洗わない人には関係のない話だ。
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