2013年12月21日
特定秘密保護法(社会)
特定秘密保護法こと特定機密の保護に関する法律。これを制定したら第二次安倍内閣の支持率が下がったというシロモノだがどうしてこれを制定したら内閣の支持率が下がるのかさっぱりわからない、というか支持率が下がったのは増税インフレ傾向への反対が主でないのだろうかとは思う。
それはそれとして特定機密保護法については「国家機密を漏らしたら罰せられるんですか、ふーん」で終わりそうな話にしか思えないのだが、知らない分からないでは話にならないから中身を確認してみることにする。賛否上げている人は原文なぞとっくに読んでいるだろうから要約すると、まず特定秘密とは何よといえば対象が四つ挙げられていて、一つが「自衛隊の装備や施設などの情報」で二つが「国民や領土の安全について他国と話した情報」、ひとつとばして四つめが「テロリスト対策情報」となっている。三つめは特定有害活動の防止というのが抽象的なので「安全を脅かす他国の活動を防ぐための情報」に変えたようだ。つまり安全保障に関する国家機密に限定されている。
で、一般市民がお目にかかるはずもないこれらの情報をどうすれば罪になるかというと、
1.暴力や脅迫で手に入れる。
2.盗む。
3.不法侵入して手に入れる。
4.不正アクセスで入手する。
5.未遂や共犯も罪。
いやこれ罪だろといいたくなる方法で手に入れたらいけないわけだ。いったいこれの何に反対の声が上がっているか、某紙では「記者が酒の席で官僚に不適切な質問をしたら逮捕されるのか」と書いたというが酒の席でも脅したり殴ったり盗んだらふつう逮捕される。酒の席は北斗の拳の世界ではないのだ。
だが法律とはどうにかして悪用できないかを考えないといけないモノである。とはいえネロとアグリッピナのエピソードよろしく邪魔な政治家や記者に無理矢理国家機密を見せて、お前はスパイだから処罰するといったことができるかといえばマンガの読み過ぎだろう。
それなら暴力や盗みなんて罪に決まってるのになんで新しい法律をつくるのさ、といえばまさにそこがこの法律を定める理由である。盗みは盗んだものの価値で罪の重さ軽さが変わらないのが基本、つまりA4用紙五百枚にぎっしり書かれた自衛隊の装備配置人員の資料があったとして、これを盗む罪は備品棚から未使用のA4用紙五百枚を盗む罪と変わらない。ドン・キホーテで買えば金額にして300円もしないわけで、遠足のおやつよりも安いのだ。
そんな国に誰が防衛や外交のたいせつな話をするだろうか。ワタシと話すとぜんぶA国につつぬけアルがアナタの国の最新戦闘機の資料見せるヨロシと言われてはいそうですかと見せるバカはいない。ちなみにこの例文は特定の国を指してはいない。
というわけでこの法律で何が困るのかというのが個人的な感想だが、批判される余地がまるでないかといえば実はそんなこともない。一つは決まるまでの審議期間が短かったのではないかという点だが、これはじゃあ何日かければいいんですかと言われれば満足できる回答はないし法案が成立するだけの審議が行われているのも間違いない。もう一つは単なる思想活動がスパイ行為の「共犯」として罰せられる危険がないかという点で、例えば何も知らない一般市民がそそのかされて国家機密を暴力や脅迫や盗んで手に入れたら罪なのか!といえばそりゃあ罪だろう。この場合はそそのかした人も共犯として罪になるから安心してお縄について欲しいと思う。
だがあと一つ、実は気になる条文があったのだ。特定秘密を扱える人は適正評価を受けた人に限定されるというもので、国家機密を扱う人は以下の個人情報を調べられることになる。ワーオ、なんてことだ。これは確かにプライバシーの侵害ではないか!
1.テロ活動と関係があるか。
2.過去に犯罪歴や虚偽申告の事実がないか。
3.薬物を濫用してないか、アル中でないか。
4.精神疾患がないか。
5.経済的な問題がないか。
犯罪歴はふつうの会社でも調べるし、テロ活動の関係者は採用してもらえないだろう。ヤク中やアル中も診断書つきで証明されればやっぱりお引き取り願われてもおかしくないし、となれば問題は精神疾患と経済面の二つである。これで特定秘密保護法の問題点がはっきりした。
「精神病患者と金融ブラックリストに載った人は国防に関する機密情報を扱えない」
これは確実に差別だと思うので、マスコミや野党もこのピンポイントな少数派の権利を守るために反対の声を上げてくれているようだ。もしも私がグレアム・チャップマンであれば公務員から精神病患者を除外したら誰も国家機密を扱えなくなってしまうではないか、というスケッチを演じたのにと思うと残念でならない。
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