2014年10月10日


ピョンちゃんへの道(社会)

 先に開催された仁川アジア大会の聖火が消えたり停電したり空調のONOFFが繰り返されたという話が聞こえているが、関係者が曰く大会は半分成功したらしい。個人的には残り半分が成功しなかったならそれは失敗ではないかと思うのだが、どうも経費節減しまくることができたことに成功をうたっているように聞こえなくもない。つまり金をケチることができたから半分成功、あとは知ったことではないといえば穿ちすぎだろうか。
 で、お隣韓国が2018年に平昌冬季五輪を控えているのは今更だが、今夏IOCのお偉方が現地を視察に来て何も進んでいない状況にオマエラは信用できないと叱責の言葉を賜ったという話がまことしやかに伝えられている。まもなく大会責任者が電撃辞任、後任こそ決まったが一部競技施設は設計から見直し中で発注すら行われていないというていたらくだ。とはいえこのグダグダな開催地の責任を追及するならそれを選んだIOCこそどうして選んだのよとは言いたくなる。近年でもアテネやソチで工事の遅れは指摘されたしリオでも不安視されているのだから、そもそも選考する側のチェックが甚だ甘いんじゃないかといえば正論ではないだろうか。

 というわけで、一年前からの不安は何も払拭されていない平昌だがではどうしてこんな有り様になっているのだろう。見通しが甘いとか責任能力に欠けるとかいろいろ意見はあるだろうが、個人的には最初にケチをつけられた高速鉄道KTX敷設計画の白紙撤回に端を発しているのではないかと思う。オリンピック開催地の登場人物は国と自治体と組織委で、名乗りを上げた自治体を国がバックアップして組織委が開催運営するのが基本だが、今回手を上げた江原道が大金を投じても誘致したのは何のためかといえばもちろんこの田舎町に「新幹線」を敷いてもらいたいがためである。仁川国際空港から68分、車で数時間の距離がこれだけ縮まれば企業も観光客も呼びやすくなるし地価だって上がるに違いない。前大統領がIOCでも表明した肝いりの公約だ。
 ところが招致が決まって早々、前政権の約束なんて知らないとばかり敷設計画が撤回されてしまう。建てれば維持費がかかるし不良債権化を嫌うのは誰だって一緒だが、当事者にすれば梯子を外された以外の何物でもなかった。なんともお粗末だが国頼りの自治体が悪いとか約束を反故にする政権が悪いとかなすり付けあっても意味がない。重要なのは大会のスケジュールはもう決まっていて平昌までの高速鉄道はやっぱり伸びないという厳然たる事実だけだ。

 ではこの状況で彼らはどうしようとするだろうか。維持費がかかるから不良債権化を嫌う、それは高速鉄道に限らずオリンピックに合わせて建てられるすべての施設に共通だ。特殊な競技用のコースだったら最初から大会限定で作って後で撤去するつもりだったろうが、たとえば選手村の宿泊施設や大きなスタジアムは他の用途に使うことができる。ところが新幹線が止まる駅に建てるつもりだったホテルやスタジアムの計画が、新幹線が止まらないとなれば話が違ってくる。もともと韓国の冬期種目はスケート以外は馴染みが薄く、現地のスキーリゾートは閑古鳥が鳴いて経営危機が囁かれている状況なのだ。となれば傷口を最小限に抑えるべく施設を小さくするか壊せるようにする、どうせ悪いのは約束を破った政府なんだと彼らは思っている。
 すべての施設がそうでなくても、最初の設計から変えることになった計画は白紙にしてゼロからやり直すしかない。そして時間をかければ勢いで何とかしてきたほころびが目についてくる。もともと高低差が足りないスキーコースは地面を掘って高さを確保するつもりでいたが、これを環境破壊だと地元が騒ぎ出してしまった。だが彼らを説得すべき江原道は「でもこれで地元が潤うんですよ」というカードが使えない。だって高速鉄道は延びないんだから説得する材料がない。彼らを懐柔するには時間と金が必要だが時間と金がないからこれだけ苦労をしているのだ。で、こんな有り様で形だけでも開催できれば彼らは胸を張って言うだろう、我々は大会を半分は成功させることができたのだと。

 重ねて言うが誰が悪いなどと犯人探しをしても意味がない。どう考えても選手以外の関係者全員が悪いじゃねーかとなるしクーベルタン男爵が提唱したスポーツ振興も文化の向上も38度線の彼方に吹き飛んでいる。では現実的にどうするか、もはや代替地が間に合う段階でもないだろうから中止するのでなければ中身がないまま強行開催するか、見栄を張って金を使いまくってでも強行開催するしかない。他人事だと思って無責任なことを言えばいっそ五輪市に残る借金を作っちゃえよと役に立たないアドバイスをしておこう。
 で、改めて共同開催を呼びかけてくれた北朝鮮の提案に乗るというウルトラCもなくはない。五輪は単独都市で開催というのがIOCの原則だが、両者はもともと同じ国の出自だし38度線の向こうにあるのは同じ江原道という地域なのだから。
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