2014年11月27日


妖怪ウォッチの真打ちは買いましたか?(社会)

 たいへんくだらない事案ではあるのだが、とある政党と懇ろな青年が何を思ったか自分が代表をつとめているNPO法人を私物化した挙げ句に政治活動を行ったことで槍玉にあげられている。NPOというのはざっくり言えば法人化されたボランティア団体のことで政治活動をしてはいけませんという決まりがある。会員から金を集めて自治体から助成金をもらってナントカ党の批判に明け暮れますとかしたら、NPOを隠れ蓑にして好き勝手できてしまうからまあ当然のことだろう。

 そして件の青年、若干二十歳の大学生なのだがもっと若い当時からとある政党の議員さんたちと仲がよくて激励の言葉を受けたり会合に参加したり同じ写真に納まった例も一再ではない。国内にとどまらない行動力もあって十八歳で朝鮮民主主義人民共和国(by忌野清志郎)に渡航すると、朝鮮戦争が起きたのもきっと日本が悪かったんだなあという想像力豊かな感想を残している。その後なぜか自分の銀行口座を開けなかったらしく、個人が口座開設を拒否されるというのもなかなか珍しい。
 で、彼が何をしたかといえばボランティア団体であるNPOを悪用して、法人名でアカウントを取得するとwebサイトを開設した。会員や支援者が財布をはたいて出してくれた金を使い込んだのだから要するに横領したのである。しかも何を思ったのか自分を小学四年生ですと偽り、僕は子供だけどアベノミクスっていうやつで僕のおこづかいは増えてないよ、大好きな焼き肉も食べにいけないといった内容を公開する。そんな小学生がいるか!と早々に突っ込まれるも小学生を名乗る二十歳は必死に抵抗、趣味は妖怪ウォッチだよと言うが最新作の発売日も知らないていたらくではごまかせる筈もなく、その日のうちに陥落すると代表も辞任して行方をくらませてしまった。

 と、まあここまではよくある話だ(よくある話なのか)。

 ところでこのくだらない話にはいくつか不思議なことがあって、サイトが開設されるや時も置かずに小学生がこんなすばらしいサイトを立ち上げて政治に関心を持ってくれていると、とある政党の議員やマスコットが紹介したり雑誌や新聞にいたってはすでに記事まで作成してこんなムーブメントが起きていますと一斉に紹介した。その頃サイトは炎上中、本人が自白してサイトが閉鎖されたのもその日のうちで、議員もマスコットも雑誌も「嘘とは知らずに間違った紹介をしました」というコメントを載せている。もちろん彼らは青年を激励したり写真を撮るような仲だったが、彼が小学生を名乗っていたのは知らなかったらしい。
 社会貢献をすべきNPO法人の代表が批判されにくい小学生を騙って好きに振る舞うなどけしからん、そう叱ってくれたのは総理だったが大学生を名指しで批判するなんてと擁護する意見もある。つまり学生とはいえ二十歳になった彼を大人として扱ってくれたのが総理大臣で、それを批判する者は彼は子供だから許してやってほしいということだ。子供に代表を押しつけるなんてずいぶん非人道的な団体もあったものだと思う。

 個人的には子供に対してこそ子供扱いしてはいかんという論者なので総理の意見に同意はしてしまう。だがそれ以上に問題なのは、彼が子供だったとしても未熟な大人だったとしても、彼を激励して彼を支援した大人たちがどうして彼をきちんと叱ってあげなかったのだろうということだ。
 あるいは叱られるべき人が他にいるのかもしれないが。
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