風と鳥と空 第六回


☆Reincarnation

 霧深い森の入口
 目覚めて黒い鳥を見る
 誰がその声を聞いた?

 遠くなる意識の奥で
 読み取る遥かなイメージ
 大気が伝える記憶

 Reincarnation


 平成11年12月24日金曜日。クリスマス・イブのたいくつな午後。まあ平日ですから、クリスマス・イブがたいくつな午後でもよしとしましょう。でも昨日は祝日でしたので、心配しなくてもぼくのクリスマスは昨日だったのでした。
 平成11年12月24日金曜日から26日日曜日までの二泊三日。和歌山県は浦崎温泉に温泉旅行。京都からJRの特急で3時間、車でも4時間くらいで行ける場所だよ。

「ちょっと、それボクの受け売りそのまんまじゃない」

 ああこれは紅葉さん。
 でもそのまんま説明した方がまちがいがなくていいじゃないですか。

「そうだね。でも本音は?」

 だってあたらしい説明考えるのもめんどくさいし…。

 ばきっ

「楽しようとしてんじゃないのっ」

 ごめんなさい。で、でも今回は紅葉さんにガイド役をやってもらう予定ですから勘弁してください。

「え、ホント?」

 企画立案者に敬意を表して、今のところはそのつもりです。でも書いてみるまでどうなるかわからないのも、ぼくのプラリアの特長なんですけどね。

「…せめて特徴にしといてよ。特別に長じててどうすんの」

 はぁい。


 識。暗鬼を倒す為に、代々受け継がれてきた戦士の一族。識といっても人間の組織であることにはかわりありませんから不満や文句もたまりますし、軍隊のように殴ってでも言うことを聞かせるという訳にもいきません。旧態依然とした組織の中でも、最近はそのへんがずいぶんリベラルに考えられるようになったみたいです。

「…で、慰労金とか受け取ってきたの?」
「うん。人数多かったし、何人か分だけでもいけるかと思って」
「すっごーい。トリさんあったまいーっ」

 赤坂あかねと風見とりと赤坂紅葉。楠門の本家に行って、旅費の一部を慰労金の名目で受け取ってきたというとりに対して、紅葉が感嘆の目を向けています。貧乏人はこういう制度を可能な限り活用するのが吉。

「いやあ、今回の旅費誰にたかろうかと思ってたから助かっちゃった」
「ちょっと紅葉、アンタたかるって…」
「何よぉ、姉貴もそのつもりだったんでしょ?だってボクたち金ないじゃん」
「だ、だからってそんな露骨に」

 無敵に見えるあかねも妹には弱いのか、やや劣勢に答えます。とにかく、楠門所属の人はこれで多少は旅費がまかなえることでしょう。楠門所属の人ってけっこう多いみたいなので、ちょうど良かったかもしれません。

>楠門所属のPCの所持金が¥20,000追加された!

 電車に揺られて3時間の旅。もちろん指定席に乗ってくるほど裕福な生活感覚は持っていませんが、早朝の座席は思ったほどには混雑していません。授業が終わっている学校もあるし、連休を取っている社会人もいるし、コミケとかいう所に行っている○○たちもいるでしょうから。
 行きの列車というと早起きのせいか眠そうな人もいますけど、だいたいはみんな元気でお話をしたり窓の外を見たり荷物を開けてお菓子をトリ出したりしているものです。ナイフとランプ…もとい期待と楽しみのいっぱい詰まったバッグを開けて。

「…くしゅんっ」
「ん?とりちゃんどうしたの、風邪?」
「うん…鼻風邪かな。大丈夫だと思うけど」
「念のため薬飲んどく?ちょっと夕、あたしのバッグから薬取って」

 あかねに言われて、荷物持ちをさせられていた少年、藤木夕がバッグに手を伸ばします。女性の旅荷物にしては小さく見えるバッグを開けると、厚手の白い布地が目に入りました。

「…あかねさん、どうして荷物の中に道着が入っているんですか?」

 赤坂あかね曰く「赤坂道場門下生一号」の藤木夕。あかねの荷物持ちをさせられていた夕が薬を渡すために取ったバッグの中には、何故か空手の道着が入っていました。

「どうしてって、向こうで稽古する為に決まってんじゃない」
「…本気ですか?」

 たぶん正気ですか、といいたかったに違いありません。

「日々の鍛錬と健全な精神は密接な関係があんのよ。男ならうだうだ言わないの」
「…」

 夕の唇が「…空手莫迦というより莫迦空手…」と動いたのを見た者はいませんでした。確かに今回の旅行で特に何をする予定があった訳ではありませんが、旅先の砂浜で体育会系よろしく裸足に道着でランニング、などという光景を想像した夕はげんなりして目を伏せます。

 楽しい旅が始まろうとしていました。


 浦崎アドベンチャーランド。千葉に対抗する為に建てられたというテーマパークで、瀬戸内海の海賊とジャングルクローズとホラハウスとスペースリバーと梅下館というアトラクションが…

「それはデゼニランドでしょ」

 あれれ。紅葉さんよくそんな事知ってますね。たしかまだ15歳でしょ?

「いいから早くお話進めてよ。脱線が多いとみんなに飽きられるよ」

 承知しました。それではサザンクロスでさんざん苦労を…

「だからもういいって」

 はい。


 浦崎アドベンチャーランドには4つのアトラクションがあるそうです。簡単にお昼もすませて、たいくつしてる暇なんてない午後の時間、子どもたちはアトラクションに散っていきました。

 水族館。隣接するマリンパークでは、オルカのステージが行われています。赤坂楓と紅葉の姉妹、樫森羅紗に小鳥由羽の四人がショーを見ている中、いつの間にか日雇いアルバイトを受けたらしいあかねが魚の入ったバケツを調教役の女性に手渡します。
 玉突き輪くぐり漫談…まではやりませんけど、女性陣はオルカの芸を存分に楽しんだのでした。

>赤坂紅葉の収穫
>オルカに餌を渡す羅紗の写真

 ショーも終わり、ふと気づくと顔を上げる羅紗。途中まで一緒に歩いていた筈のとりの姿が見えません。一緒にショーを見ていた様子もなく、自由行動なのであまり気にしていなかったのもありますが、最近羅紗はとりの行動がずいぶん読めるようになっていました。
 やや駆け足で軽い人混みを抜けると、羅紗は足早に水族館の館内に入ります。

「やっぱりいたか」
「あ、羅紗さん。ショーは終わったの?」

 羅紗の思った通り、暇そうにしていた夕を連れて、とりは水槽の前をゆっくりと廻っていました。隣りでショーが行われている時間帯なら、水族館が空いているのも当然でしょう。

「風見さんらしいな。確かにこういう所をゆっくり廻るのは大変だからな」
「らさりんも見てこ?たぶんあと10分くらいは空いてるよ」

 水槽の中に造られた自然。それは人間の傲慢なのかもしれませんが、その傲慢が人間と自然との共存の為の知識と経験をもたらしている事もまた、事実なのです。過去、如何に多くの水族館や動物園が生物の生態を明らかにし、如何に多くの生き物を救ってきたか。滅ぼすと同時に救う。人間の行為は矛盾と傲慢の集積の上にのみ存在するのかもしれませんけれど。

 藤木夕は、無言のままで水槽の中を見ていました。
 いつもより純粋な瞳で。


 サファリパークの一画。いつの間にか日雇いアルバイトを受けたらしいあかねのガードする門を通り、神戸プリンと天野太郎と小野瀬敬一と南護祐海が柵の中に入りました。無邪気に喜んでいる三人の少年ですが、プリンが別の理由で喜んでいる事はさすがにわからないと思います。
 タロや敬一はきっとライオンとかキリンとかゴリラとか大きくてわかりやすい動物がお気に入り、祐海のお気に入りはゴールデンターキンとかモウコノウマとかシフゾウとかユーラシア系のもっさりした動物だと思います。

 ちなみに動物園はとても好きです。ぼくはわりとユーラシア系の動物が好きですけど、昆虫館で蝶が頭にとまったりするのも好きなんです。

 それから遊園地、スリルとスピードが好きな人にはたまらない施設が揃っています。概して女性は性別的にスピードに強いという特性を持っているそうですが、噂の旋回式落下マシン「ヴィルヴェルヴィント」はたぶん竜の巣なみのスリルが味わえると思います。
 いつの間にか日雇いアルバイトを受けたらしいあかねが売り子をしている横で、紅葉あたりは当然のように絶叫マシンに乗りまくっています。他の人もいた筈なんですけど、紅葉はこおいうのに夢中になると絶対他の人が見えないタイプだと思います。今日の目的は絶叫マシン全制覇!

 アバンチュールは無理かも。


 最後にウエスタンラリアットです。

 じゃんじゃんじゃじゃんじゃんじゃん
 じゃんじゃんじゃじゃんじゃんじゃん
 じゃんじゃんじゃじゃんじゃんじゃん
 じゃんじゃんじゃじゃんじゃんじゃん

 じゃーんじゃじゃじゃーん
 じゃじゃじゃーん
 じゃじゃじゃーじゃじゃじゃじゃっじゃじゃーん

  ウィイイイイイイイイイイイイイイ!

(サンライズ/スタン・ハンセンのテーマ)

 わざとまちがえました。もちろんウエスタンカントリーです。いつの間にか日雇いアルバイトを受けたらしいあかねさんがアトラクションのエキストラ役を…ってあかねさん、いったいいくつアルバイト受けてるんですか?

「あたしは稼げる時に稼ぐ主義なのよ。いいから他の人の所でも廻ってたら?」

 は、はい。でもウエスタンカントリーはお話で書くにはコスプレ系の内容が多いので、絵描きさんにまかせてもう一度テキサスロングホーンなのです。

  ウィイイイイイイイイイイイイイイ!


 宿に入ります。もちろん旅に来て宿に入ってすぐに寝てしまう理由はありません。ぼくは公用でそんな旅もしたことがありますけど、朝の7時に宿に入ったらすぐに寝ないといけないと思います。でも今回の旅行はこれからがメインなのでした。
 だって温泉旅行なんですから。

 温泉です。広々とした露天風呂。まるでプールを思い出すような広い温泉に、ついつい泳いでしまう子どもたちは多いものです。

「がーはっはっはっはーっ!」
「…」

 広々とした露天風呂。豪快なクロールで泳いでいるのはもちろん我らが迂南獅良でした。水深の浅い温泉ならではの技、とびうおターンも忘れちゃいけません。

「あ、あの…迂南さん。あんまり騒がない方が…」
「無駄だよ。老人は耳が遠いから、僕たちの言葉なんて聞こえないさ」

 夕の言葉には敏感に反応する獅良。近寄って立ち上げると、ことさら背を伸ばしてあたりを見回す仕草をします。

「おやあ〜?どこかで餓鬼の声が聞こえた気がしたが、ちっちゃくて見えねえぜ」
「どうやら老眼も入っているようですね。気の毒な事です」

 あいかわらずのやりとりにやっぱり豪快に笑うと、獅良は二人の少年の横に座って首まで湯につかりました。意味有りげな視線を向けると、何の脈絡もなく話し出します。

「よっし分かった。それじゃあこれから女湯でも覗きに行くか!」
「な、なにがそれじゃあ分かったなんですかぁ迂南さんっ」
「…中年…」

 祐海と夕、それぞれの反応を楽しむような表情を見せると、獅良は二人に力説しました。

「まあそんな顔すんじゃねえよ。いいか、こういう所だと混浴風呂に行きたがる野郎が多いが、そいつは間違いだ。よっぽどめずらしい場合を除けば、女の方から混浴風呂に行くのは見られても構わないって気持ちがあるからだからな。だいたい覗くんならやっぱり相手に気づかれないようにこっそり、ってのがマナーってもんだ」
「…長い台詞の割に理性も知性も無い事をいいますね、中年は」
「何言ってんだ。お前もあの娘の裸、見てみたいんだろう」
「…ふっ、ふざけるな!」
「迂南さんっ」

 血相を変える二人を見て、獅良は勝利を確信した顔になります。

「おやあ?祐海の坊ちゃんはともかく、夕の坊主までそんな反応するとはな…お前ら、ちゃんと気になる相手くらいはいるんじゃねえか」
「…迂南さぁん…」
「…この不良中年、カマをかけたな」
「冗談だよ冗談、だいたい俺様のでかい身体で覗きなんかしてたら、すぐに見つかっちまうぜ」

 再び豪快に笑うと、獅良は頭に乗せていたタオルを手に、温泉を出ていきました。残された二人の少年は、その後ややのぼせ気味になるまで、湯船につかっていなくてはなりませんでした。

 ちょっとお下品でしたかしら。


 混浴風呂から出てきた紅葉。ちょっと挑発的とはいえ、もちろん水着を着て入ったんですが、あんまり「いい男」が入ってくる様子も無かったのであきらめて女湯に移ることにしました。やっぱりあったまるには水着は邪魔ですから。

「じゃーね。炎さん♪」

 背後で小野瀬文乃の髪を洗わされている炎英雄に声をかけると、紅葉は露天風呂を後にしました。どうして彼が混浴風呂に入ってきたのかはともかくとして、鋳節銀おばあさんの背中流しや文乃お嬢様の髪洗いなど、いいように使われいるようです。ですが、それ以上に紅葉の収穫になったのは、湯に入った英雄の髪型がどうなるかだったでしょう。

>赤坂紅葉の収穫
>温泉から出てきた炎英雄の写真


 夜の散歩。

 海岸線の見える、木々に囲まれた道。いくつかある温泉用に、道の端には電灯がついていますから、危ないというほど真っ暗になったりはしません。今ごろ宿内で行われているだろう宴会の喧噪を抜けて、藤木夕が歩いていました。冬の夜、温泉(と少量のお酒)で火照った身体を厚手のコートが覆い、顔に当たる冷たい風が気分を和らげてくれます。

「…風見さん?」
「あら、夕くん」

 不思議と、賑やかな喧噪を離れて出会う事の多い二人。人間を煩わしがっているのか、人間を照れくさがっているのか、たぶん、その両方なんでしょう。
 ふと、とりの肩の上に何か毛玉のようなものがいるのに、夕は気づきました。

「風見さん!それ、暗鬼…ですか?」
「うん…さっき見つけたんだ。でも、暗鬼じゃなくて妖怪かもね」
「…?」
「…紅葉さんもそんな所で立ってないでいいよ」

 とりの声に、頭をかきながら紅葉が現れます。二人を探しにきて、声をかける機会を待っていたというところでしょうか。ややばつの悪そうな顔で話しています。

「ごめん、なんか盗み聞きするみたいになっちゃった」
「ううん、宿にいなかったから探しにきてくれたんでしょ?気をつかわせちゃってごめんね」

 とりの肩にいる生き物。それは、生物では無いのかもしれないけれど、生きているもの。慈しむような目でそれを見つめながら、とりは紅葉に話しました。

「前に…らさりん、羅紗さんから聞いたんだけど。紅葉さん、識になった事に納得してないんだって?」
「うん、そうだよ」

 明解な返答に笑顔を浮かべるとり。肩の生き物に向けていた目を、紅葉の顔に移します。

「そうよね。たまたま今回の旅行の件で羅紗さんと話してて、それで紅葉さんの事聞いたんだけど、でもそれってもったいなくないかな?」
「えー、なんで?」
「うーん…何て言うのかな、わたしは識の家系に生まれた人がみんな識になる必要なんかないって思うんだけど、でも識の家系に生まれなければ知る事すらできない事ってあるよね」
「そう…だけどさ」
「わたしは自分が識に生まれて良かったと思ってるの。暗鬼を滅ぼすだとか正義の為に役立つとか、そんな事じゃなくて…」
「…」
「暗鬼、も生き物だよね?そういう生き物がいる事を知る事ができた。わたしは人間として、人間を襲う暗鬼を倒すのは仕方の無い事だと思うけど、そうでない生き物がいることも一緒に知る事ができたからね。今、わたしの肩に止まってるこの子だってそう。この地方の楠の木には、ずっと昔からこの子の仲間が住んでいるけど、わたしは識にならなかったらこの事をずっと知らなかっただろうからね」
「…でも、ボクは識になる気がないってのは変わらないよ」
「ええ。自分のやりたい事を放棄する必要なんてない。でも、だからといって今まで自分が歩んできた道を嫌う事もないんじゃないかな。識の家系に生まれたからこそ手に入れたものだってあるでしょ?」
「…めずらしいね。とりさんがそんなにいっぱい話すのって」

 ちょっとはぐらかすような紅葉の言葉。それに怒った風もなく、むしろ嬉しかったかのように微笑むと、とりは話を続けます。

「そうね。いつでも、どんな時でも、すばやく正しく考えることができるのなら、わたしもこんな所で足踏みをしなくてもいいのかもしれないけど」

 とりの言葉に表情の変わる夕と紅葉。この人は、楠門に属する識の中でも落ちこぼれに類するこの人は、いつもこうして何かを考え続けていたのでしょうか。
 肩に乗っている「妖怪」と楽しそうに目線を交わすとりを見て、しばらく黙って話を聞いていた夕が口を開きました。

「でも、風見さんずるいですよ」
「え?」
「だって、風見さんの考え方はそもそも識のものじゃないと思いますから」
「そうだね…だからわたしは、いつまでも落ちこぼれなのかもね」
「…僕は、風見さんはそれでいいと思いますけどね」

 何故だか、少しだけ頬を赤くした夕を見て、とりは微笑みました。その笑顔は、夕の心にしばらくの間残って、消えることがありませんでした。

>赤坂紅葉の収穫
>風見とりと藤木夕のツーショットの写真


 翌日。平成11年12月25日の土曜日。

「くしょんっ」

 風邪気味で湯冷めしたら、確かに体調が悪化すると思います。なさけなくも熱を出して、その日一日宿ですごす羽目になった風見とり。看病を買ってでてくれたメイド婆ぁこと銀おばあさんが、枕元でりんごの皮を剥いてくれています。

「ふぉっふぉっふぉっ、まあ早く元気になりなされ」
「うん。ありがとう、銀さん」

 素直に看病を受けているとりに、普段は外見が○○なのをわざと楽しんでいるらしい銀も素直に看病をしていました。相手が怖がらないのなら、怖がらせようとしてもあんまりおもしろくはありませんから。この日、たまたまようすを見にきたタロは、

「今日は妖怪ばーちゃんが恐くなかったのだ」

と貴重な証言を残しています。


 浦崎温泉。山と海にかこまれた温泉地を後にする一行。帰るころにはとりの体調もなんとか良くなって、いちおう主催役らしい紅葉に先導された一団は、各々車に乗ったり駅に向かったりして散会していきました。

「トリさん、もう大丈夫?」
「うん。迷惑かけてごめんね」
「いーよいーよ、お礼ならボクより銀ばーさんに言っといてね」

 出発前、最後に温泉宿を振り向いた紅葉の視界の端、一本の楠の木にちらりと見えた白い毛玉。キジムナーやコロポックル…地方によって、木々に住む妖怪にいろんな名前がついている事を知ったのはそれから後のことですが、あの楠の木の妖怪に名前がけっきょくついていないことを知ったのは、それからさらに先のことでした。

>赤坂紅葉の収穫
>名も知らない妖怪のこと

おしまい

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