第九回
☆Act1.魔法使いの丘
♪ぱんぱらんぱぱんぱんぱんぱん
ぱんぱんぱんぱんぱぱぱぱ
ぱんぱんぱんぱんぱぱんぱぱ
ぱんぱらんぱんぱぱぱーん
ぱーぱぱんぱんぱんぱんぱんぱぱー
ぱーぱぱーぱんぱぱぱぱんぱぱぱん♪
>START CONTINUE
▽ゆうしゃのなまえをきめてください
あきのしま
「…おお、よくぞ来た伝説の勇者の息子秋野志麻よ」
「…息子じゃなくて娘でしょっ!」
ばきっ
▽いきなり王様に手を上げた志麻は牢屋に入れられてしまいました
− GAME OVER −
♪ちゃ〜ら〜ら〜
「…って何よそれ」
「いやいや気にするな志麻。ちょっとした冗談ではないか」
ここは聖林檎楽園…もとい聖ルーメス城。王様東郷真澄、お姫様真琴・トレウァールの座っている玉座の前に、勇者秋野志麻が膝をついていました。いきなりの前振りにちょっと不安になった志麻ですが、お姫様の手前神妙にしています。あらためて王様が口を開きました。
「うむ。とにかく最近悪い大魔王がはびこっていて皆困っているらしいから退治してきてくれたまえ。はっはっはっ」
「お姉ちゃーんがんばってねー」
陽気に手をふる真琴。にこにことそれに応えつつ、志麻は王様に尋ねました。
「それで大魔王ってどこにいるの?」
「まあどこかその辺にいるのではないか?」
「何よそれ、あんた王様なのに何にも知らないの?」
「まあどうでもいいではないか。それよりてきとーに仲間を見つけて、さっさと旅立つがよい。路銀はこのとおりちゃんと部費から用意しておいたからな」
そう言って懐から金貨を取り出す真澄。後ろにひかえていた北翔風香がこめかみをひくひくさせています。
「…こないだの使い込みがなければ…」
ものすごく気まずそうな顔で志麻はお城を後にしました。
◇
という訳で、城下へ出た志麻は仲間を探す事にしました。
「フッ。よろしくな志麻」
「…カーマイン。よりによっていきなりあんたなんかと旅しないといけない訳?」
「カーマインではない。俺の事は偉大で華麗なる全能の大魔導師アルスチュワート様と…」
ばきっ
「…誰があんたなんか連れて行くもんですかっ!」
▽カーマイン・ロッド(偉大で華麗なる全能の大魔導師)は仲間になりませんでした。
まだ怒りのおさまらない志麻の前にあらわれたのはローブ姿の天野健一です。
「こんちわー志麻さん。お願いします」
「…あら。健一が魔法使い役なのね」
「え?俺魔法なんて使えませんけど」
「…まあいいわ。バカーマインよりはよっぽどましでしょ」
▽天野健一(小間使い)が仲間になった!
「ちょっと健一。何この小間使いって」
「え?いえ俺もよくわかんないんですけど」
ため息をつく志麻の前にフォートナム・メイソンがあらわれました。
「はあい、志麻ちゃんよろしくね」
「フォートナムって魔法使いよね?なんかようやく役に立ってくれそうな仲間があらわれたなー」
「えー?僕のクラス遊び人ですよ」
「…遊び人…(はあ)」
▽フォートナム・メイソン(遊び人)が仲間になった!
これで三人。パーティーメンバーは四人までだからあと一人ですね。
「なんで?別に五人でも六人でもいいじゃないの」
だめです。しすてむでそう決まってるんですから。
「しょうがないわねえ。あと一人か…あ、そうだ!いいメンバーがいるじゃない」
そう言うとお城に駆け込む志麻。王様とお姫様の前にあらわれます。
「真澄―っ。ちょっと真琴ちゃん借りるわね」
「おい待て志麻。いったい真琴をどうするつもりだというのだ?」
「決まってるでしょ。うちのパーティーに入れるのよ」
「…お前、本気か?」
「だめなら魔王退治なんか行かない」
志麻の言葉にさすがに絶句する真澄。まるで気にしないふうで志麻は真琴に話しかけます。
「真琴ちゃーん。おねーちゃんと一緒に遊びに行こうね」
「うんっ。真琴お姉ちゃんと遊び行くっ。真澄ちゃんもいいよね?」
どうやら真琴は玉座に座りっぱなしでいるのに飽きていたようです。半ば強引に志麻は真琴を連れて行きました。
▽真琴・トレウァール(お姫様)が仲間になった!
「…どうでもいいが見方によっては志麻が真琴をさらったように見えるのではないか?」
見方もなにもその通りです。
☆Act2.城塞都市カーレ
いよいよ冒険に出る勇者ご一行。その前に町で買い物です。
「あら。薫くんにカイルじゃない?」
「こんにちは、志麻さん」
「こんちはシマ。何にしますか?」
武器屋の主人は田中薫とカイル・グリングラスの二人。最近向かいにスーパーマーケットができたせいで売り上げが落ちているそうですが、魔王騒ぎで多少はなんとかなっているそうです。
「へえ、良かったじゃない。じゃあこれとこれ持っていくわね」
「ちょ、ちょっとシマ。それうちで一番いい装備だよ。お金あるの?」
「カイル。あんた世界を救う勇者に対して商売するつもり?」
「そんなあ」
勇者志麻は思いっきり値切って装備をそろえました。いよいよ冒険の始まりです。
「あの…志麻さん」
「なーに健一?」
「あれだけ装備を値切った割に路銀がほとんど残ってないんですけど」
「ああ。残りほとんど真琴ちゃんの着替えに使っちゃったから」
「…」
「だって仮にもお姫様を着たきりすずめにしとく訳に行かないでしょ?」
「…それで武器屋であれだけ値切ってたんですね」
「ぼくもかわいいお洋服買っちゃった♪ねえねえ健ちゃん似合う?」
嬉々としてはしゃぐフォートナム。遊び人とはいえその服ほとんど真琴ちゃんとお揃いじゃありませんか?
まあとにかく冒険の始まりなんです。
◇
城下町を出た勇者様ご一行。最初に立ち寄ったのは小さな村でした。小さな広場のあたりを指さしてフォートナムが言います。
「志麻ちゃん。何かあそこに人だかりがあるよ」
「あら、早速イベントみたいね。行ってみましょ」
志麻たちが広場へ向かうと、人だかりの中から一人の村娘、速波水生が近づいてきました。両手を組んで懇願するように話しかけてきます。
「ああ…勇者様。どうか私達をお助け下さいませ」
ちょっと演技過剰かもしれません。
「いったいどうしたの?水生」
「はい。実は最近村の近くに恐ろしい人喰い熊が出るようになりまして…私が生贄に出される事になったんです。ああ生贄だなんてまるで悲劇のヒロインみたいな…」
空想モードに入った水生。
「ああ私はいけにえに出されてしまうんですそう今度の満月の夜に恐ろしい怪物を前に叫び声をあげる私の前にきっと素敵な勇者様があらわれてお嬢さんお怪我はありませんかって颯爽と…」
もう止まりません。とりあえず志麻たちは人喰い熊を倒しに行く事にしました。
人喰い熊の出る洞窟は村の裏手にあります。こういう洞窟は村の裏手にあるって相場が決まってるんです。
「…この洞窟ね」
「あっ。志麻お姉ちゃん、あそこにパンダさんがいるよ」
真琴の指さした先にはヤオフェンが立っていました。おそるおそる近づく志麻。どうやら人喰い熊に間違いないようです。
「あの…ヤオフェン?」
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
人喰い熊です。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
人喰いパンダです。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
本人けっこう気にいってるみたいです。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ」
ぱんださんは倒されてしまいました。
☆Act3.七匹の大蛇
人喰いぱんださんを倒した一行。てくてくと魔王の城に向かいます。
「どうでもいいけどこのActのタイトル何か意味あるの?」
つぶやく志麻に健一が答えます。
「あれ?志麻さんソーサリーシリーズ知りませんか?」
「いや…そりゃ知ってるけど」
何か言いたげな志麻でしたが、結局黙り込んでしまいました。しばらく進むと目の前に大きな大きな塔が見えてきます。感激したように真琴が声をあげました。
「うわーっ。おっきい塔だねー」
「うん。これが大盗賊カンダタの塔だよ、真琴ちゃん」
答えるフォートナムに志麻が話しかけます。
「ちょっと。何でそんな事フォートナムが知ってる訳?」
「えー?だって攻略本に書いてあるよ」
フォートナムの右手にはシマシマクエスト攻略本が握られていました。ちなみにA5版フルカラー、定価¥950(税別)です。しましま大戦攻略本もよろしくね。
「…何でもいいわ。先に進みましょ」
疲れたような声で志麻。一行は塔をてくてくと登っていきました。
◇
「あはははははっ。よくここまで来たねっ」
最上階で待ちかまえていたのは盗賊のボス明石カンナ。志麻たちはカンナを倒すと先に進みました。
「…ちょっとお。何よそれ」
「だってカンナちゃん。攻略本には『ボスを倒せば塔はクリアーです』としか書いてないよ?」
「こんなトコで手抜きしたらあたしの出番がないじゃない。ちゃんとやってよ」
「はーい。じゃあ行くよ、カンナちゃん」
こうして勇者達とカンナの戦闘が始まりました。
▽明石カンナがあらわれた!
>たたかう にげる どうぐ さくせん
明石カンナの攻撃!必殺の召還術を使いました。きょとんとするフォートナム。
「え?でもカンナちゃん魔法なんて使えたっけ?」
カンナが懐から取り出したのは一枚の写真でした。もちろん先日の夏合宿で撮ったマリーさんの写真です。
「出でよっ偉大で華麗なる全能の大魔導師アルスチュワート!」
「おおーっ。そこにいるのは愛しのマリーさんではないですか!」
どこからともなく現れたカーマイン。ほとんどお姫様と同じ格好をしていたフォートナムの手を取ると、強引に誘い始めました。
「ああ、マリーさん。いったい今までどこへ行っていたのですか?」
「あ、いや、その…」
完全に戦闘離脱状態のフォートナム。健一の方はカンナの連れてきたキリカゼ・フィリーと既に対戦ゲームに入っていて、やっぱり戦闘離脱状態です。半分勝ち誇っているカンナ。
「さーて。志麻さんはどうしようかなー?こないだみいちゃんとワルツで踊ってた写真なんてどうかな♪」
どうやら意外な所に強敵が潜んでいたようです、このままでは間違いなく志麻たちは全滅させられてしまうでしょう。仕方ないといった顔で志麻が叫びました。
「ストロベリー・パフェ!」
「え?」
「だからストロベリー・パフェでどうかな?」
「買収かあ…悪くないかなあ」
「じゃあ、見逃してくれる?」
「もちろん大盛りね♪」
「…OK」
こうして志麻たちは辛くもカンナから勝利をおさめました。
「お姉ちゃーん。真琴もパフェ食べたーい」
「はーい。この冒険終わったら後で食べに行こーね」
とっても疲れる戦闘でした。
◇
大盗賊カンナの塔には宝箱が置いてありました。とりあえず健一が宝箱を開けることにしました。
▽健一は宝箱を開けました。
『かしみのたね』を見つけた!
しかし健一はこれ以上荷物を持てません。
『かしみのたね』を捨てますか?
はい >いいえ
▽『かしみのたね』は勝手に健一のリュックにもぐりこみました。
健一の荷物は全部捨てられてしまいました。
☆Act4.王達の冠
ようやく大魔王の城にたどり着いた勇者一行。
「やっと着いたわね。さっさと大魔王倒して帰りましょ」
疲れた声で志麻。勇者志麻にお姫様真琴…期待してたようならぶろまんすどころか、まぬけなだけの展開にすっかりうんざりしています。
「じゃあ帰りパフェ食べて帰ろーね、お姉ちゃん♪」
真琴の方はけっこう楽しんでいるみたいです。無邪気な顔になんとか救われたように志麻。
「それじゃあ行きましょ。フォートナム、ここの地図見せて」
「待って志麻ちゃん。ここ地下に『伝説の武器』があるんだって」
攻略本を見ながらフォートナムが言います。
「伝説の武器?やっぱりクリアーするなら取っといた方がいいのかな」
「んー。その方が楽そうだし、行ってみよーよ。そんなに遠回りでもないし」
こうして魔王城の地下へ向かう志麻たち。宝箱はわりとあっさり見つかりました。
「この箱ね…」
「そうだね。開けてみよ♪」
▽志麻は宝箱を開けました。『伝説の武器金属バット』を見つけた!
「…何よこれ」
「金属バットですね」
「そんな事わかってるわよ。これが伝説の武器だっていうの?」
「そーか、それで志麻さんが勇者なんですよ、きっと」
ばきっ
健一の感想に志麻は伝説の武器を最初に使ってあげる事にしました。
◇
そしていよいよ大魔王の玉座の間。健一が志麻に話しかけます。
「何か足が勝手に動いて進んできますよ、志麻さん」
「大魔王の所に着いたからでしょ。きっと」
「やっぱり勇者は正面から戦えって事ですかね?」
「そりゃ不意打ちしたら魔王の前口上が聞けないからでしょ」
「自由度を取るかストーリーを取るか、ですね」
二人ともすっかりすれてますね。少しは真琴ちゃんみたいに素直に…。
「わーい、エスカレーターみたい♪」
これはこれでちょっと違うかな。
◇
「全く緊張感のない連中だなあ」
「あら?カイルじゃない。こんな所で何してんの」
玉座の間で志麻たちを出迎えたのはカイルです。
「何って、僕が大魔王カイル様さ」
「ちょっと、冗談でしょ?あんたさっき武器屋やってたじゃないの」
「だから、武器屋の売り上げが思わしくなかったからね。大魔王でも出てくれば武器が売れるだろ?」
「…本気?」
「こうでもしなきゃ僕も薫も生活できなかったんだ。さあ、勇者の仕事は大魔王を倒す事だろ?かかってこいよっ!」
「ちょ、ちょっと待ってよカイル!」
▽大魔王カイルがあらわれた!
>たたかう にげる どうぐ さくせん
「出でよ『雷』!!」
「カイルっあんたそんな魔法使えなかったはずでしょ!?」
ぐるぐるぐるどーんっ
「僕じゃないよ、『大魔王』の力さ。大魔王は何でもありなんだ。『火炎弾』!」
どどーんっ
「ちょっと…冗談抜きでこれやばいわよ」
不敵に笑いながら魔法を連発する大魔王カイル。志麻たちも避けるので精一杯です。あわてて攻略本を開いているフォートナムに志麻が叫びました。
「フォートナム!何とかならないの!?」
「何とかって言っても…大魔王の倒し方なんて載ってないよー」
情けなさそうに悲鳴を上げるフォートナム。カイルの笑い声が響きます。
「ははははははっ。攻略本にばかり頼っているからそんな目に会うのさっ!くらえ『爆煙舞』『炸弾陣』『爆裂陣』!!!!」
きゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ
「…何やうるさいなあ」
魔法の爆煙で『かしみのたね』が目を覚ましました。寝起きでかなり機嫌が悪そうです。
「…ウチが気持ちよく寝とるん邪魔すんなっ!!」
きゅどぉぉぉぉぉぉぉぉぉんっ
大魔王カイルは倒れました。
「くそぉ…僕はただ…薫に…うっ」
「た、助かったあ…」
ほっとした顔で志麻。とにかくこれで世界に平和が戻ったんです。
☆エピローグ
戻ってきた勇者志麻たち。
お城では勇者たちを讃える歓呼の嵐。町の人たちの笑顔。お祭り騒ぎ。
舞踏会で真琴と踊る志麻。楽器を奏でる健一。陽気に踊るフォートナム。感動のエピローグ。カーテンコール。
城下町の一隅。小さな小さな武器屋のカウンターでたたずむ薫。
「カイル遅いなあ…もう晩ご飯できてるのに…」
いつまでも終わらない宴。やがて日が暮れて…。
◇
「…って言うお話なんだけどどう?シマ、今度の文化祭にいいと思わない?」
「…そんな後味の悪いお話誰が喜ぶのよっ!」
ばきっ
カイルのアイデアは没になりました。
おしまい
☆次回予告
♪ちゃーちゃーちゃーちゃちゃんちゃーん
「こんにちは、カイル・グリングラスです」
「こんにちは、田中薫です」
「…どうしたの?薫」
「カイル。いくらなんでも今回のお話はまずかったんじゃない?」
「まーたまにはいいだろ。どうせTOSHIKIの方からお詫びくらい入るだろうし」
「そうかな、そうだね。で、次回はどうするの?」
「んーと、まだ決めてはないんだけど、とりあえず夏合宿の続きの展開にはなるはずだよ」
「…」
「ん?何赤くなってるんだ、薫?」
「べ、べつに何でもないよ」
「それより横浜なら人体の不思議展がお薦めだよ。十月までやってるはずだし水生と行ってきたらどう?」
「カイルぅ」
「あははっそれじゃあ次回も大正桜に浪漫の嵐っ、だね」
「…カイルのいじわる」
ちゃーちゃーちゃーちゃちゃんちゃん♪
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