第十一回



☆Act0.ご挨拶ですわ

「おーほっほっほっほ」

 うわわっ。何ですかいったい?

「あら、これは失礼致しました。わたくし高塚栞と申します」

 …栞さん。ここは君を信じたい!のプラリアなんですけど、なんで蒸熱狂騒曲のキャラのあなたがここにいるんですか?

「いいじゃありませんこと?それよりたまにはわたくしのプラリアとか書いて下さいませんの?薫やカイルのお話ばかりずるいですわ」

 えーと。だって蒸熱の方は交流誌とか参加してないし、機会がないとどうも…だからイラストは良く描いてるでしょ?

「そんなの言い訳になりませんわ」

 …はい。もう最終回迎えましたし、今度何か書かせていただきます。

「わかりましたわ。でも忘れたらただじゃおきませんからね」
(註.この回は別ゲームのネタで書き出してしまいました)


☆Act1.天文部の一日

 平成9年10月16日木曜日。聖林檎楽園学園もとい聖ルーメス学園が舞台です。
 開令十一年じゃありません。時は平成の世ですから、某蒸熱狂騒曲とは時代が違うんです。

「…なんだかこだわってますけど、栞さんになんか言われたんですか?」
「どーせ怒られてたんだろ?栞さんいいかげんな奴にはうるさいから」

 田中薫くんにカイル・グリングラスくんです…栞さんもいつのまにか薫くんとカイルに会ってるんですね。

「こないだ珈琲ごちそうになったんです♪」
「あそこの珈琲と焼き林檎おいしかったな」

 …はあ。わかってます。ちゃんとプラリア書きますって栞さんに伝えといて下さいね。私はこれでも約束はちゃんと守りますから。

「はい。わかりました」
「約束って言えば今日は天文部に行くんだろ、薫?」
「うん。青流先輩と約束してるんだ」
「じゃあ早く行こうよ。暇人でも誘ってさ」


 おおわしの羽の下。星の河をはさんで。
 向こうの岸から白鳥の背に乗って、あなたは飛んでくるの。
 夜が明けるまでに、私のもとへ…。


 天文部の部室の前。すでによその世界に行っちゃってるのはもちろん速波水生です。いつの間にか妄想がモノローグになっちゃってますけど、薫にカイルに水生、部室に入ろうとする三人の前に駆け寄ってくる女の子が一人。明石カンナです。

「ごめーん、みんな待ったー?」
「やあカンナ。誰もカンナの事なんて待ってないから大丈夫だよ」

 ばきっ

 頭を押さえてうずくまるカイル。こぶしをさすりながらカンナが言います。

「カイル、あんたいきなりそんな挨拶はないでしょっ」
「…わかったよ。じゃあこないだ遊んだラブ・フォーチュン(相性占い)にちなんで」
「おっけー。じゃあ…はろーカイル、あいかわらずかっこいいねー」
「やあカンナ、今日は一段と美しいね」
「ほんと、ゾウリムシよりもミジンコよりもかっこいいよ」
「カンナもバクテリアよりもミトコンドリアよりも美しいよ」
 …こんな挨拶ならありなんでしょうか?


「よっ。よく来てくれたなみんな」
「こんにちは。他の人ももう来てるわよ」

 天文部の部室。四人を出迎えたのは星咲青流とルフィア・ハイラーンです。薫とカイルも挨拶を返しました。
「あ。先輩こんにちは」
「すみません、カンナが遅れたもんで」
「…カイル、なんであたしの名前だけ文字サイズが大きくなるのよ」
「え?そうかな。別にちょっとカンナが遅れたくらいで誰も気にしないさ」
「今度は太字に点滅までついてるよ」
「あ、ほんとだ。何でだろうね?不思議だなあ」

 くすくすくす。思わず笑っていたのはルフィアです。

「本当、二人とも仲がいいのね」
「「そんな事ありませんっ!」」

 声をそろえるカイルとカンナ。仲がいいのか悪いのかわかりませんね。


☆Act2.星めぐりの歌のつづき

 カストルとポルックス。双子の星のように。二人でぶらんこに乗って。あなたと私。
 いつまでも巡る星空のように、私たちの思いも…。


 部室の中。あいかわらず水生は行っちゃってるようです。ためしに声をかけてみる薫。

「あの、水生さん?」
「…薫さん?…薫さんの声が聞こえる…私のとなりで」
「みずきさーん」
「ああ…私と薫さんの思いが…いっしょに星空を巡ってるのね」
「…」

 思わず赤くなる薫。なんかたまたま薫くんがそばにいただけ、という気がしなくもないんですが、意外にそれって大切な事かもしれません。「おもり役」の薫くんがいつも水生さんのそばにいるのは事実ですし。

「なんかムード出してるわねー」

 そう言ったのはシャルロッテ・パストル。麻生いぶきと一緒に先に部室におじゃましてたんですが、薫と水生の様子に半分あきれてます。

「でもこの部屋雰囲気あるからね、水生さんの気もちも分からなくはないかな」

 いぶきが答えます。先日公認になって多少予算のおりた天文部。天球儀や望遠鏡、大きな星図に囲まれた部屋は何だかとても素敵に見えました。ちなみにこれが五月倶楽部だとこたつや跳び箱、大きなカー○ル・サン○ース人形に囲まれてるんで、とてもそういう雰囲気には見えません。

「でもあたしは五月倶楽部の雰囲気の方が好きだけどな」
「そーだよねー、シャルはそーだよねー」

 やけに含みのある声でシャルロッテに話しかけるカンナ。

「何よカンナ。なんか言いたい事あるの?」
「あらー?シャルってばあたしにそんなクチ聞いていいのかなー?」
「…な、なによ」
「こないだー、フォートナムとデ・エ・トしてたでしょ?」
「!?…あんた…まさか」

 顔色の変わるシャルロッテの前にカンナが差し出したのは一枚の写真。

「だあああああっ!カンナやめてー」
「はーい、いぶきどーぞ」

 いぶきの受け取った写真に映っていたのは、フォートナムにひらひらした洋服を着せられてるシャルロッテでした。横目でシャルロッテを見るいぶき。

「…ふーん☆」
「な、なにいぶきその目はあれはあたしじゃなくてフォートナムが無理に言うからだってあたしが断ったらあいつ目潤ませて頼んでくるしそれにその…」
「いいのよぉ別に☆だってシャルも女の子だし」
「ちーがーうっ!」
「大丈夫よ。わかってるわかってる☆」
「だからいぶき何で☆印つけて話すのよっ」

 どうやらシャルロッテはとんでもなくうかつな事をしたみたいです。次の日には写真は五月倶楽部中に行きわたっていました。


 そういえば。今回のお話で登場予定があったのに出番のない方がいます。
 今回登場予定のあったフォートナム・メイソンさんは部室でごろごろしていました。ヤオフェンさんによりかかって。ふかふかの毛皮の魅力に勝てなかったみたいで、今回天文部の部室には来ませんでした。
 やっぱり予定のあった井良かおるさんもお休みです。なんだかんだ言いながら、シーファリー・ミックスさんとデートに行ったそうです。井良さんの恋心(下心かな?)とシーファリーさんの下心(こちらは研究心ですね)の勝負がどうなったかは…いずれわかる事でしょう。

 次回あたり改造人間が登場するかもしれません。


☆Act3.天文部の人たち

「どう?気に入ってもらえたかしら」

 薫に話しかけるルフィア。お話が好きな薫やいぶきにルフィアはいろいろな星座の由来を聞かせていました。

「はい。アルゴ号座…でしたっけ?ぼくあのお話好きなんです」
「大船が四つの星座に分かれた話ね。南の星座だから、あんまり知られてないんだけど」

 大船も今は沈み 流れ行く竜骨の破

「薫さんが前に聞かせてくれた詩にありましたね。私もあの後星座のお話調べちゃいました」

 薫たちと一緒に話を聞いていた水生が言いました。趣味の通じる相手がいて、ルフィアは嬉しそうです。

「青流は星を見るのは好きなんだけど、あんまりこういうお話は知らないから。聞いてくれる人がいて嬉しいわ」
「え?じゃあ青流先輩って星のお話とかしないんですか?」
「そうじゃないの。神話とかより自分の夢を追う方が好きな人だから」

 ちょっと照れくさそうにルフィア。そんな様子に薫や水生は恥ずかしさと一緒にうらやましさも感じていました。


 その頃青流の方はカンナやシャルロッテたちと話していました。

「でもさあ先輩。こっちじゃ星なんて全然見えないでしょ」
「そーだなあ。前は郊外に住んでたからな、こっちじゃ望遠鏡使っても時々しか見えないな」
「ふーん。でもそれじゃあつまんないんじゃない?」
「まあ見たい時は郊外まで出かけるからな」
「ルフィア先輩と二人で?」
「ああ…あ、いやその何だ」

 見事に誘導尋問に引っかかった青流。カンナとシャルロッテの表情が変わります。

「あーあ。これだよ」
「まったく熱いねー、もう秋だってーのにこいつらはー」
「お、お前らそんな言い方はないだろっ」

 すっかり動揺している青流。カイルがフォローに入ります。

「そうだよ。青流先輩はこないだルフィア先輩と映画行っただけで別に見せつけたりしてる訳じゃないんだから」
「そうだぞって…カイル、お前何でそんな事知ってるんだっ」
「へー。先輩本当に二人で映画なんて行ってたんだ?」
「あ…」

 もうだめですね。この後青流とルフィアはカイルたちにつるし上げられていました。


☆Act4.ほしをみるひと

 日も暮れてきて。ルーメスを背に丘を下る道。夜空に小さな星がひとつ、ふたつ。ひときわ明るい星を指して、カンナが言います。

「この辺はまだ少しは星が見えるんだね」
「デネブにベガにアルタイルだな。ちょうど今の時期なら白鳥座と大鷲座が見える頃だ」

 星空を見上げて説明する青流。感心したようにシャルロッテが言います。

「へー。何だかんだ言っても青流先輩詳しいんだね」
「そりゃまあ、これでも天文部だからな」
「いつもルフィア先輩とそーゆうお話してるの?」
「ああ…っていいかげん許してくれよお」

 今日は青流はこういう役のようです。隣でルフィアが真っ赤になっていましたが、暗くなっているおかげでよくわかりませんでした。あたりをきょろきょろ見回して、いぶきが言います。

「あの…そういえば水生さんと薫さんがいないみたいなんですけど…」

 心配そうないぶきに、やけに軽く答えたのはカイルとカンナ。

「ああ。あの二人なら今頃熱いラブシーンでもしてる頃だろ」
「カイルー、そんな事言って妬いてんじゃないの?薫の事水生に取られちゃうよ」
「そうなんだカンナ。かわいそうな僕の事をなぐさめてくれないか?」
「おーよしよし。じゃあ特大パフェおごってくれたらあたしが朝までなぐさめてあげよー」

 二人の会話についていけないいぶきはやっぱり常識人のようです。


 玉座の女王、囚われの姫。最後の夜にせまる怪物。闇夜に広がる恐怖。
 足音。悲鳴。
 天馬の羽ばたきが闇夜を切り裂く。片手に剣、片手に光を持ちて。
 私の勇者様。私だけの勇者様。


「水生さーん。もう帰りましょう?」
「ああ…ペルセウス、私を助けに来て下さったのね。早くしないと恐ろしい怪物が…さあ、ペガサスの背に乗って二人で」
「みずきさーん」

 あいかわらず水生はいっちゃってました。これから熱いラブシーンがあるのかなあというと…。

「みずきさーん、もうすぐ閉門になっちゃいますよー」

 無理でしょうね。

おしまい


☆次回予告

♪ちゃーちゃーちゃーちゃちゃんちゃーん

「こんにちは。田中薫です」
「こんにちは。カイル・グリングラスです」

 はいはい。今回は多少恥ずかしめのお話にしてみましたがどうですか?

「まああんなもんじゃないのか?もっとも今後の前振りになりそうな話題がいくつかあったけどな」
「あれって伏線に使うんですか?」

 さあ。使うかもしれないし使わないかもしれないし。

「よーするに行き当たりばったりって事だな」
「そうなんですか?」

 そうなんです。最近行き当たりばったりでしか書いてませんから。

「まったく…じゃあ次回予告もあいかわらず決めてないんだろ?」

 はい。

「…」

 ああっ。そんなあきれた顔しないで下さいよお。いちおう考えてなくはないんですから。

「じゃあ何する予定なんだ?」

 えーとですね。三役選挙の結果か文化祭の話題か改造人間現るかどれかです。

「よーするに他の人次第で後は何にも考えてないと」

 はい。そうです。

「…はぁ」

 ああっ薫くんまでそんなため息ついて。これでも多分まじめにやってるんですよ。ねえ薫くんったら、ああカイルも。ねえ…

♪ちゃーちゃーちゃーちゃちゃんちゃん

 あっとそうでした。次回も太正桜に浪漫の嵐っ、です。


他のお話を聞く