絶滅哺乳類図鑑(丸善)

 冨田幸光著 伊藤丙雄・岡本泰子画
表紙  図鑑の紹介に大仰な説明は必要ではないかもしれませんが、絶滅した古代の動物たちの中でも哺乳類に厳選した229種類を記した図鑑です。絶滅した動物といえばどうしても恐竜が有名で、図鑑や多くの本でも恐竜のものはあっても絶滅哺乳類といえばこれまで恐竜の片隅に紹介の頁を割かれているのがせいぜいでした。
 恐竜は約350、絶滅哺乳類は約4000といわれる多様さではるかに勝る絶滅哺乳類を専門に紹介するこの図鑑では、有名なマンモスやスミロドン(サーベルタイガー)などはもちろんげっ歯類に単孔類、有袋類といった現代にも見られる初期の哺乳類、大型草食獣や肉食獣、クジラやアザラシの祖先となる海の哺乳類など多彩な生き物たちの姿を復元画と詳細な解説で紹介しています。体長数メートルに達するクマよりも巨大なナマケモノ、奇妙なツノを持つサイに似た生き物といった個性的な獣たちの魅力は恐竜に劣るものではありません。

 化石研究に伴って恐竜と同時期になる中生代に生息していた哺乳類の祖先たちや、オーストラリアや南アメリカ以外の地域でも発見されている有袋類、恐竜と見まごうような巨大で恐ろしげなクジラたちなど、新たに発見された内容までを含めた解説が進化や分類上の系統に沿って説明されています。精密な復元イラストだけではなく、骨格の復元図や分類上の系統図、実際の化石の写真や詳細な解説文まで掲載されているので図鑑としても専門書としても充分使用に耐えるものでしょう。第一章にある哺乳類の特徴や発見されるようになった年代など、構成も親切で子供から大人まで年代を問わず見ることが出来る図鑑ではないかと思います。

 かなり定価が高いので気軽におすすめはできませんが、表紙に描かれているメガテリウム、陸生の巨大なナマケモノの姿を見るだけで好きな人にはたまらない一冊。できることなら事典と図鑑は、年代を問わず読み続けたいものです。
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