アナザーコード 2つの記憶(任天堂)

anothercode anothercode
(c)Nintendo

発売:任天堂(2005) 機種:ニンテンドーDS ジャンル:アドベンチャー
評価:★★★★☆
 十三歳の最後の日。アシュレイに届けられた差出人不明の小包には、彼女が三歳のころに死んだと聞かされていた父からの手紙と小さな一台の機械が入っていました。彼女は父親に会うためにブラッド・エドワード島、血塗られたエドワード家の島と呼ばれる無人島へと向かいます。科学者であった父が母といっしょに進めていた「アナザー」と呼ばれる機械の研究と、57年前にこの島で起きたというエドワード家にまつわる悲惨な事件。なぜか姿を現さない父を探して、アシュレイは島で出会ったディーと名乗るゴーストの少年といっしょに二つの事件を追っていきます。
 ニンテンドーDS初期の作品らしい、タッチペンや二画面パネルの機能を最大限に活かしてみようと試みたアドベンチャーゲームです。一見するといわゆる館ものに分類される作品に見えますが、ストーリー自体は一本道でそれほど複雑な謎ときもなく攻略と展開の双方をごくまっとうに楽しませてくれるなかなかの良作。

 主人公のアシュレイは十三歳の女の子ですが、別にファンの受けを狙うという訳ではなく適度な行動力と適度な非力さを備えた人物になっているのがポイントです。言動では子供らしい感情的な部分を備えていて、能力ではたとえば屋敷の門が閉まっていて入れないという場合に、塀に面した木をのぼるとような方法は彼女には無理でしょうから、ふつうの人がふつうに考えつく方法で攻略しなければいけません。つまりプレイヤーに「十三歳の女の子が取れる程度の行動」を要求している訳です。
 彼女と同行するゴーストの少年ディーはエドワード家の古い記憶を少しずつ語っていきながら、同時に屋敷の案内と適度なヒントも与えてくれます。おかげで基本的に建物の中にいるにも関わらず単調さを感じさせませんが、一方で館ものに特有の「知らない屋敷を歩きまわる怖さ」が和らげられているのは評価が分かれるかもしれません。少年や少女が誰もいない屋敷を歩きまわるといったらふつうは怖さが前面に立ちそうなものですが、先入観でこのゲームに怖さを期待してしまうと肩すかしをくってしまうでしょうか。

 アシュレイ宛てに送られてきた機械はDAS(ダス)と呼ばれていて、ニンテンドーDS本体をDASに見立てて操作をするようになっています。DASとしてカメラやメッセージ受け取りに使用されている他にも、DSとしてタッチペンその他操作による謎ときが随所に活かされていて、ハンドルをまわしたりボタンを押したりといった操作がほとんど説明なく感覚でできるようになっているのは楽しいところだと思います。特にゾーイトロープとエンディングのケーキは秀逸かと。

 一方で気になる点がない訳ではなく、展開と謎ときが重視されているせいで個々の整合性に疑問を持ってしまうことがあり、たとえば門を空ける歯車がどうしてあの場所にあったんだろうとか、あちこちに隠し扉がある屋敷でアシュレイの父がごくふつうに内外を出歩いていたとか、細かい点をあげてしまうときりがありません。基本的にアドベンチャーゲームはストーリーの整合性よりもトリックとゲーム性を優先すべきではありますが、「DS=DAS」という感覚のせいで逆に解きかたが浮かばない例があるのは難しいところです。特に版画の謎解きで、スタンプを押せばいいことが分かっているのにスタンプの押しかたが分からないのはちょっと不親切ではないかと。
 他にも絵のほこりを払う際に、方法としてはふつうですがなかなか奇抜な操作をしなければいけませんが、この場面ではタッチペンによる操作がふつうにできてしまうので、どうしてほこりがこすっても落ちないんだろうとか、すぐ近くにあったハンカチが使えないだろうかとか考えてしまいます。ここでこすったら絵がいたむと言って止めてくれれば、ではどうしようかと考えることができるかもしれません(どうしてこの方法じゃいけないの?と思うことは本来アドベンチャーゲームには向かない考え方ですが)。

 館ものとしては自由度が低く、ストーリー上の誘導が多いのはそういうゲームだからとしか言いようがなく、主人公のアシュレイやディーにとってはしぜんな行動ですから特に気になることはありません。それでいて前章以前に訪れていた部屋に戻り、そういえばあそこにあったあれが使えるなと思いだすこともできるのでゲームバランスとしてはむしろ絶妙ではないかと思います。
 美しい画像に音楽、とっつきやすい操作性に謎ときが揃っていて遊びやすく、展開やキャラクターの言動も親しみやすいので本格的な謎ときが好きな人には物足りないでしょうがこの手のゲームが好きな人や興味がある人には文句なくおすすめできる作品です。ふだんの移動や操作は十字キーとボタンで行うこともできますが、基本的にはほとんどすべてタッチペン操作で行うように作られているので、なるべくボタン操作よりもタッチペンで遊ぶことをおすすめします。

 キャンディーを食べたときのアシュレイがものすごくおいしそうな顔をするので、この絵はこのとき限定にして欲しかったと思います。
>他の記事を見る